確定申告書の作成や申告、税務署対策など、一般の人にとって身近で厄介なイベントを代理で行ってくれる専門家「税理士」。その名の通り、税金回りの業務を担当するプロですが、具体的にはどのような業務を行うのでしょうか。以降では税理士とはどんな資格か、行う業務や国家試験合格に向けて身につけるべき知識、資格取得のメリットなどを解説していきます。
税理士とは、どんな資格?
税理士とは、企業や個人に対して、所得税などの税金に関するアドバイス、税務処理のサポートをする仕事です。税理士は国家資格であり、国家試験を通じて税金に関する専門知識があると認定された人のみがなれるスペシャリストです。
具体的には下記の業務を行います。
- 税務代理
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- 確定申告、青色申告の承認申請の代理業務
- 税務調査の立会い
- 税務署の更正・決定に不服がある場合の申立て
- 税務書類の作成
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- 確定申告書の代理作成
- 相続税申告書の代理作成
- 青色申告承認申請書の代理作成 など
- 税務相談
- e-Taxの代理送信
- 会計業務
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- 財務書類の作成
- 会計帳簿の記帳代行 など
- 税務訴訟の補佐
- 会計参与
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- 株式会社の役員として、取締役と共同し計算関係書類を作成
税理士試験に合格するには、下記の11科目のうち5科目を受験し、合格する必要があります。
学ぶ知識
- 簿記論
- 財務諸表論
- 所得税法
- 法人税法
- 相続税法
- 消費税法
- 酒税法
- 国税徴収法
- 住民税
- 事業税
- 固定資産税
いずれの科目も近年の合格平均率は10%台であり、一桁台や20%台の科目はありません。ただ、令和元年度試験では「簿記論」「財務諸表論」「住民税」の合格率が大きく上昇して10%台後半となり、これら3科目は合格率が2年連続で全体平均を上回っていることから、近年比較的難易度が低めに設定されている傾向があります。
11科目のうちどの科目を選んでも有利・不利の差はありませんが、就職や転職の際に評価されやすい(役立ちやすい)のは、下記の5科目です。
- 法人税法
- 国税収入額の中でも2番目に多い税金で、どの会計事務所でも法人税関連の知識は必要とされます。実務で使う機会が多く、重視されやすい科目です。
- 所得税法
- 国税収入額トップであり、実務で使われることの多い重要科目です。
- 消費税法
- 法人を主要顧客とする会計事務所や、相続を専門とする特化型の事務所などで、実務に活かせる点で評価される科目です。
- 相続税
- 最近は相続税関連業務が増加しているため、実務で使う機会が増えている科目です。
- 固定資産税
- 相続関連業務のニーズの高まりに伴い、評価が高まってきた科目です。地主の相続・不動産オーナーの財産承継等、固定資産税についての知識があると、今後事務所で重宝されやすくなると予想されます。
税理士で目指せる職業、就職先は?
税理士の代表的な就職先は、「会計事務所、税理士法人」「コンサルティング専門企業」「一般企業の経理部、財務・会計部門」「国税庁、税務署」の4つに分けられます。それぞれの就職先で担当業務は異なるため、目指すキャリアに合わせて勉強する科目を選ぶことをおすすめします。
- 会計事務所、税理士法人
- 公認会計士と税理士が集まって働く組織です。税金の申告や税務書類の作成が主業務になりますが、公認会計士の資格もダブルライセンスで取得した場合、上場企業などの決算書の監査まで業務の幅を広げて活躍することもできます。
- コンサルティング専門企業
- 税理士ならではの専門知識を活かし、企業への経営アドバイスや節税対策などを行います。納税サポートよりも経営アドバイスに特化した働き方をしたい人に適した職場です。
- 一般企業
- どの企業にも納税の義務はあり、会計業務は必ず発生します。税理士の専門知識がある人が社内にいれば外注の必要がなくなるため、経理部や財務・会計部門で税理士資格が重宝されることは多いです。
- 国税庁、税務署
- 21歳以上30歳未満であれば、国税庁や税務署に勤務し、税金に関する調査や指導を行う「国税専門官」という職業を目指せます。税理士資格は必須ではないものの、税の専門知識が必要なので、資格保有者にアドバンテージがある仕事です。ただ、国税専門官になるには「国税専門官採用試験」という別の国家試験に合格する必要があります。
なお、税理士試験に合格した後、税理士として業務をするには日本税理士会連合会の税理士名簿に登録し、税理士会に入会しないといけません。税理士として認められるには、税理士試験に合格した上で、租税に関する事務、または会計に関する事務で2年以上の実務経験が必要になります。
税理士になるとどんな悩みが解決できる?
税理士になると、税務に関わる下記のような悩みを解決できるようになります。
- 税務代行
- クライアントから「税務代理権限証書」という公的書類を授受し、納税者に代わって法人税や所得税などの申告を行います。税務署の処分などが不服な場合は、異議申し立てや審査請求の手続きを行い、クライアントの権利を守ります。
- 税務書類の作成
- クライアントに代わって、確定申告書や相続税申告書などの税務署に提出する書類を作成できます。
- 税務相談
- 各種税金の計算方法や税務上必要になる手続きなどをアドバイスできます。
税理士の資格を取れる人はどんな人?(取得条件・受験資格)
税理士試験の受験資格には、「学識」「資格」「職歴」「認定」の条件があり、いずれか1つでも満たせば受験資格が認められます(それを証明する書類の提出が必要です)。
- 学識(いずれかの要件を満たす者)
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- 大学、短大、または高等専門学校を卒業した者で、法律学または経済学に属する科目を1科目以上履修している者
- 大学3年次以上の学生であり、なおかつ法律学または経済学に属する科目を含む62単位以上を取得している者
- 修業年月が2年以上で、なおかつ総授業数が1700時間以上の専修学校の専門課程(いわゆる専門学校)を修了した者で、その専修学校で法律学または経済学に属する科目を1科目以上履修している者
- 司法試験に合格している者
- 旧司法試験法の規定による司法試験の第二次試験または旧司法試験の第二次試験に合格している者
- 平成18年度以降に公認会計士試験短答式試験に合格している者
- 公認会計士試験短答式試験において全科目を免除されている者
- 資格(いずれかの要件を満たす者)
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- 日本商工会議所主催簿記検定試験1級合格者
- 社団法人全国経理教育協会主催簿記能力検定試験上級合格者(昭和58年度以降の合格者に限る)
- 会計士補
- 会計士補となる資格を有する者
- 職歴(いずれかの要件を満たす者)
- 認定
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- 国税審議会より受験資格に関して個別認定を受けた者
取得にかかる費用
受験手数料は、受験申込科目数に応じ、次のとおりとなっています。
- 1科目
- 4000円
- 2科目
- 5500円
- 3科目
- 7000円
- 4科目
- 8500円
- 5科目
- 10000円
税理士はどんな人におすすめの資格?
税理士になるには、数年間に渡ってコツコツと膨大な範囲の試験勉強を続ける必要があります。また、試験に合格して働き出してからも根気が必要になる作業の連続で、クライアントの意向を汲み取りながら法律を遵守するバランスの良さも不可欠です。
こうした点を踏まえると、下記のような人は税理士向きの性格といえるでしょう。
- 根気強い人
- 計算作業が得意な人
- 正義感の強い人
- 経営者やクライアントの意見を尊重できる人
また、下記の資格を持っている人は、業務の幅を広げられるという点で税理士の資格をダブルライセンスで取得するのもおすすめです。
- 税理士資格の取得がおすすめな人
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- 社会保険労務士
- 中小企業診断士
- ファイナンシャルプランナー
- 行政書士
- 公認会計士
どこが管理している資格なの?(問い合わせ先・管理団体)
税理士の国家試験を実施・管理しているのは「国税庁」と各自治体の国税事務所です。
試験は年に1回、8月上旬の平日に開催されます。受験の申し込み用紙の交付は例年4月下旬~5月上旬、申し込み期間は、例年5月中旬~下旬になります。詳しい手続きや試験会場等については、国税庁のホームページをご参照ください。
まとめ:税理士は税務や会計のプロフェッショナル!独立企業を狙う人におすすめの資格です
確定申告のサポートや、税務面から見た経営アドバイスなど、実は多岐にわたる業務をこなすのが税理士です。国家資格でありながら近年の合格率は12〜17%前後と、比較的難易度の低い業種であり、実務経験を積んだ後は独立企業も狙えます。会計作業が好きな方はもちろん、ファイナンシャルプランナーなど相性の良い資格を持っている方は、ぜひ合格に向けてチャレンジを。
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