社会保険労務士とは、生活に密着した健康保険や年金、介護保険、雇用保険、労災保険などの社会保険制度や雇用関連法といった労務&社会保険の専門家です。国家資格の一つですが、この資格をとると、どんな業務ができるようになるのでしょうか?必要な知識や取得のメリットなどをご紹介していきます。
社会保険労務士とは、どんな資格?
社会保険労務士(社労士)は、労働や社会保険に関する法律と人事・労務管理を専門とする職種で、国家資格です。主に以下のような業務を執り行います。
- 労働・社会保険の手続き業務
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- 労働社会保険の適用、年度更新、算定基礎届の手続き代行
- 雇用や人材の能力開発等に関する助成金の申請
- 法改正に対応した就業規則、労働環境に配慮した労使協定(36協定)の作成・見直し
- 労務管理のコンサルティング
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- 雇用管理(適切な労働時間の管理)、人材育成などに関する相談
- 人事・賃金・労働時間の相談
- 経営労務監査(就業規則や法定帳簿等の書類関係の他、実際の運用状況についての監査により、企業をコンプライアンス違反から守る)
- 年金相談業務
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- 年金の加入期間、受給資格などの確認と回答
- 裁定請求書の作成・提出
- 紛争解決手続代理業務(ADR:裁判外紛争解決手続き代理業務)
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- あっせん申立てに関する相談・手続き
- 代理人として意見を陳述・和解の交渉・和解契約締結
- 補佐人の業務
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- 労働社会保険に関する行政訴訟、個別労働関係紛争に関する民事訴訟の場面で、弁護士とともに出頭し、意見を陳述
こうした幅広い業務を行うのが社会保険労務士になるには、国家試験に合格する必要があります。合格に向けて習得すべき知識は下記のとおりです。
学ぶ知識
- 労働基準法及び労働安全衛生法
- 労働者災害補償保険法(労働保険の保険料の徴収等に関する法律を含む)
- 雇用保険法(同上)
- 労務管理その他の労働に関する一般常識
- 社会保険に関する一般常識
- 健康保険法
- 厚生年金保険法
- 国民年金法
試験穴埋め式の選択式試験(労働保険の保険料の徴収等に関する法律は除く)と、5つの選択肢肢の中から正しいもの(誤っているもの)を1つ選択する択一式試験の2種類で構成されています。選択式試験は各1問で80分、択一式試験は計70問で210分で、回答にはかなりのスピードが要求されます。
社労士試験は相対評価の試験であるため、「何点以上取ったら合格」といった明確な合格基準はありません。ただ、各科目の基準点をクリアし、全科目合計で7割近く得点しなければならないため、全科目バランス良く学習することが合格のカギです。
社会保険労務士で目指せる職業、就職先は?
社会保険労務士の資格を取得すれば、以下のような幅広い業種・職種での就職が期待できます。
- 社会保険労務士事務所
- 求人募集は少ないが、代表的な就職先の一つ。人事や労務のスペシャリストとして、企業の労働管理や社会保険についての相談・指導を行う。
- 他士業の事務所
- 弁護士事務所などが該当します。弁護士事務所であれば、弁護士とともに労務管理や人事に関する業務をこなすのが一般的です。また他士業の事務所であれば、事務所内の任免手続きや給与計算といった業務を担当することにもなるでしょう。
- 企業の人事・総務部
- 企業の人事や総務関係の部署に配属される「勤務社労士」として、コンサルティング費用を節減するなどの業務に従事するケースです。ただ、実務経験を必須としている企業が多いため、未経験者の就職は比較的難しいでしょう。
- コンサルティング会社
- コンサルティング会社の社員として、相談先企業の人事関係や労務関係についての相談やアドバイス、雇用コストの見直しや雇用プランの設計などを行います。
- アウトソーシング会社
- ある程度規模が大きい会社の場合、社会保険や労働保険、給与計算といった事務業務をアウトソーシングすることがあります。こうした業務を請け負うアウトソーシング会社に就職するのも一つの選択肢です。
- 独立開業
- 事務所や企業で社労士としての実務経験を重ねた後、独立開業する方法もあります。顧問先となる企業をどれだけ多く確保できるかが重要なので、実務経験だけでなく営業力やマーケティング能力も必要になるでしょう。
- 予備校の講師
- 予備校の講師として就職し、社労士の試験対策を通じて受験生を合格へ導くのも就職先の一つです。わかりやすく教えるスキルが必要になるでしょう。
社会保険労務士になるとどんな悩みが解決できる?
社会保険労務士は、労働・社会保険の手続き代行や労務コンサル、就業規則の作成など幅広い業務をこなす社会保険&労務の専門家です。生活に密着した健康保険や公的年金、介護保険、雇用保険、労災保険などの社会保険制度や雇用関連法の知識を習得するので、顧客の相談に乗れるのはもちろん、自身の実生活にも活きる資格でしょう。
- 社会保険労務士が解決できること
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- 社会保険関連の諸手続きへの対応
- 労務管理体制の整備
- 助成金申請の成功
- 遺族年金の裁定請求など
社会保険労務士の資格を取れる人はどんな人?(取得条件・受講資格)
社会保険労務士試験を受験するには、「学歴」「実務経験」「国家試験合格」のいずれかの条件を満たす必要があります。
社会保険労務士の受験資格
- 学歴
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- 大学、短期大学、専門職大学、専門職短期大学もしくは高等専門学校(5年制)を卒業した者。または専門職大学の前期課程を修了した者
- 上記の大学(短期大学を除く)において62単位以上の卒業要件単位を修得した者。または上記の大学(短期大学を除く)において一般教養科目と専門教育科目等との区分けをしているものにおいて一般教養科目36単位以上を修得し、かつ専門教育科目等の単位を加えて合計48単位以上の卒業要件単位を修得した者
- 旧高等学校令による高等学校高等科、旧大学令による大学予科または旧専門学校令による専門学校を卒業し、または修了した者
- 厚生労働大臣が認めた学校等を卒業し又は所定の課程を修了した者
- 修業年限が2年以上で、かつ課程の修了に必要な総授業時間数が、1,700 時間(62単位)以上の専修学校の専門課程を修了した者
- 全国社会保険労務士会連合会において、個別の受験資格審査により、学校教育法に定める短期大学を卒業した者と同等以上の学力があると認められる者(各種学校、外国の大学等の卒業者等)
- 実務経験
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- 労働社会保険諸法令の規定に基づいて設立された法人の役員(非常勤の者を除く)、または従業者として同法令の実施事務に従事した期間が通算して3年以上になる者
- 国または地方公共団体の公務員として行政事務に従事した期間及び行政執行法人(旧特定独立行政法人)、特定地方独立行政法人または日本郵政公社の役員、または職員として行政事務に相当する事務に従事した期間が通算して3年以上になる者
- 全国健康保険協会、日本年金機構の役員(非常勤の者を除く)、または従業者として社会保険諸法令の実施事務に従事した期間が通算して3年以上になる者(社会保険庁の職員として行政事務に従事した期間を含む)
- 社会保険労務士もしくは社会保険労務士法人、または弁護士もしくは弁護士法人の業務の補助の事務に従事した期間が通算して3年以上になる者
- 労働組合の役員として労働組合の業務に専ら従事(専従)した期間が通算して3年以上になる者
- 会社その他の法人(法人でない社団又は財団を含み、労働組合を除く。以下「法人等」という)の役員として労務を担当した期間が通算して3年以上になる者
- 労働組合の職員または法人等、もしくは事業を営む個人の従業者として労働社会保険諸法令に関する事務に従事した期間が通算して3年以上になる者
- 国家試験合格
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- 社会保険労務士試験以外の国家試験のうち、厚生労働大臣が認めた国家試験に合格した者
- 司法試験予備試験、旧法の規程による司法試験の第一次試験、旧司法試験の第一次試験又は高等試験予備試験に合格した者
- 行政書士試験に合格した者
「社労士試験は大卒でないと受験できない」「実務経験がないと受験できないのでは?」と思っている方もいるかもしれませんが、イメージよりも受験資格は幅広いです。平均合格率は6〜7%の難関国家資格ではありますが、多様な業務に従事できるのでぜひチャレンジを。
取得にかかる費用
社会保険労務士試験の受験手数料は9,000円です。
社会保険労務士はどんな人におすすめの資格?
社会保険労務士は、専門知識を持って企業をサポートするだけでなく、労働者が不当な不利益をこうむることがないよう労働環境を整備する仕事です。また、書類作成や計算作業がつきものであり、いずれも企業経営や人生設計に重要な書類を扱うことになる点から、下記のような人は社会保険労務士に向いているといえるでしょう。
- 「より働きやすい社会が作りたい」という正義感が強い人
- 数字を扱うコツコツとした作業が苦にならず、几帳面な人
- 企業の経営に興味がある人(企業のコンサルティング業務も行う点から)
また、社労士の働き方は大まかに「開業型」と「勤務型」に分かれますが、いずれも下記の資格を取得している人は、取り扱える業務の幅がかなり広がり、キャリアアップが目指せるので資格取得がおすすめです。
- 社会保険労務士の取得がおすすめな人
どこが管理している資格なの?(問い合わせ先・管理団体)
社会保険労務士試験の実施・管理を行っているのは、「全国社会保険労務士会連合会試験センター」です。試験は毎年8月の第4または第5日曜日に行われますが、試験日の変更や受験申請の手続きや期日などについては、下記の公式ホームページからチェックしておきましょう。
▼ 全国社会保険労務士会連合会試験センター 社会保険労務士試験オフィシャルサイト
まとめ:社会保険労務士は業務内容が幅広く、就職でも実生活でも役立つ資格!
社会保険労務士は、年金や健康保険など自分にとって身近な知識を習得できるのはもちろん、企業への就職・転職の際にも幅広いジャンルで活躍できる有意義な資格です。合格率は低い難関の国家資格ですが、キャリアアップしたい方はぜひ前向きにチャレンジを!
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