語学というと英語の学習者が多いものですが、就職に役立つ中国語の人気も上昇しています。中国語の資格では中国語検定(中検)とHSKの受検者が多いですが、どんな違いがあるのでしょう。
この記事では中国語検定(中検)を就職に役立てるなら何級からが有利か、中検の各級の能力目安、中検取得で就職や転職に役立つ業界、中検のメリットを紹介します。
中国語検定試験(中検)とは、どんな資格?
中国語検定試験(以下、中検)は、日本語を母語とする中国語学習者を主な対象とし、中国語の語学力を証明する試験です。一般的に外国語習得の際には「読む」「聞く」「話す」「書く」の4種類の能力が重視されますが、中検では「運用能力」と「読解能力」も重視します。
- 運用能力とは
- 母語が外国語とどう対応しているかを処理する、訳す能力。「話す」「書く」など、自分の考えや気持ちを表現する能力とも言え、その場に合った語彙の選択に発揮される。
- 読解能力とは
- 幅広い語彙や正しい文法を知り、文章や人の話を理解する能力。「読む」「聞く」能力とも言える。
中検は、中国語の習得度によって6つの級に分かれています。最も易しい検定は準4級で、最も難易度の高い検定は1級です。
- 準4級
- これから中国語を学びたい人の最初の目標におすすめです。準4級に合格することができたら、中国語学習の準備が完了したといえるレベルになり、その後の中国語学習がスムーズになるでしょう。以下の学習者の中国語能力は準4級レベルと考えられています。
- 大学の第二外国語において第一年度前期を修了した人
- 高等学校における第一年度通年を履修した人
- 中国語専門学校・講習会などで、半年以上学習した人
- 4級
- 平易な中国語を聞いて理解したり話したりできる人がチャレンジすることが多い級です。以下の学習者の中国語能力は4級レベルと考えられています。
- 大学の第二外国語において第一年度を履修した人
- 3級
- 中国語の基礎を理解し、さらに応用力も有している人におすすめです。基本的な文章を読んで理解し、書くことができる能力、簡単な日常会話ができます。
- 一般大学の第二外国語において第二年度を履修した人
- 2級
- 日常的な会話が行え、3級程度の文章を自分で書くことができるレベルです。複文を含むやや高度な中国語の文章を読み、理解できます。
- 準1級
- 「読む」「聞く」「話す」「書く」の高度な能力を全般的に有し、実践的な能力があるとみなされます。社会生活に必要な基本的な中国語を習得しているレベルです。
- 1級
- 中国語を駆使する能力を持っています。中国語での挨拶や講演、会議、会談などをスムーズに行えるレベルです。
「中国語検定(中検)」と「HSK」の違い
中国語の語学力を問う検定はさまざまありますが、「中検」と「HSK」は受検者が多い検定として有名です。「HSK」は中国政府認定の検定であり、検定試験では中国語で設問が出題され、回答も中国語を使用する点が中検とは異なります。中国の大学への留学や中国現地での中国企業採用を目指す人は、HSK合格を目指すケースが多く見られます。
中国語に関する資格は下記にまとめましたので参考にしてくださいね。
学ぶ知識・技術
中検合格には、各級ごとに次の能力の習得が求められます。
- 準4級
- 基礎単語約500語による発音(ピンイン表記)及び単語の意味、日常挨拶語約50~80による語句・単文の中国語訳の習得
- 4級
- 発音(ピンイン表記)及び単語の意味、常用語500~1,000による単文の日本語訳・中国語訳の習得
- 3級
- 発音(ピンイン表記)及び単語の意味、常用語1,000~2,000による複文の日本語訳・中国語訳の習得
- 2級
- 熟語・慣用句の意味、語句の解釈、500字程度の中国語の文章の部分訳、30字程度の単文の中国語訳ができる
- 準1級
- 通常の文章の中国語訳、日本語訳、簡単な通訳ができる
- 1級
- 高度な読解力・表現力を有し、複雑な中国語及び日本語 の翻訳・通訳ができる
試験はどの級もリスニング・筆記の順に行われます。試験は100点満点です。準1級と1級のみ一次試験を合格後に二次試験が設けられています。
出題内容
- リスニング(選択式)
- 筆記(選択式・記述式)
- 準4級の合格基準点(100点満点)
-
- リスニング・筆記:60点
- 4級の合格基準点
-
- リスニング:60点
- 筆記:60点
- 3級の合格基準点
-
- リスニング:65点
- 筆記:65点
- 2級の合格基準点
-
- リスニング:70点
- 筆記:70点
- 準1級の合格基準点
-
- リスニング:75点
- 筆記:75点
- 1級の合格基準点
-
- リスニング:85点
- 筆記:85点
準1級と1級の二次試験の出題項目は下記の通りです。
準1級の二次試験の出題内容
- 所要時間
- 10~15分
- 合格基準点
- 100点満点のうち75点以上
- 出題項目
-
- コミュニケーション能力(面接委員との簡単な日常会話)
- 訳す力(口頭での中文日訳と日文中訳)
- 表現する力(指定されたテーマについて1~2分のスピーチ)
- 総合(発音・イントネーション及び語彙・文法の運用能力の総合的な判定)
1級の二次試験の出題内容
- 所要時間
- 20~30分
- 合格基準点
- 100点満点のうち各85点以上
- 出題項目
-
- 翻訳・通訳能力(面接委員が読む高度な内容の中国語長文及び日本語長文をそれぞれ日本語・中国語に訳す)
合格率はおよそ下記の通りです。
- 準4級 70~80%
- 4級 50~60%
- 3級 50%前後
- 2級 30~40%
- 準1級 20~30%
- 1級 5%前後
中検は簡体字と繁体字どちらで対策するといい?
中国語の表記には、簡体字と繁体字の2種類があります。中国語は、中国、台湾、香港、などで使用されており、国や地域によって使用する字体が違うという特徴を持っています。現代の中国では簡体字が使用されていることがほとんどです。
中検の記述式試験の解答は、簡体字の使用が原則とされています。2級以上の級は特に指定された場合を除き、簡体字未習者の繁体字使用を禁止とはされていません。ただし、字体の混用は減点の対象とされますので、簡体字を学習するのが安心です。
中国語検定試験(中検)で目指せる職業、就職先は?
中国語検定試験(中検)を取得すると、就職や転職に役立ちます。一般企業であれば3級以上に合格していると、履歴書面接での自己アピールにつながります。
また、1級合格者は通訳案内士試験の外国語筆記試験が免除されますので、中国語の通訳案内士を目指す人は中検1級を目指すのもおすすめです。
中検の資格を活かすことのできる業界の例は、以下の通りです。
- 旅行業
- 観光業
- 航空業
- 小売業、百貨店・デパート
- 商社・貿易業
- 中国語教師
- 中国系企業
- 通訳案内士
中国語検定試験(中検)に合格するとどんな悩みが解決できる?
中検の資格を取得すると、下記の悩みや課題の解決に役立ちます。
- 中国語検定試験(中検)で解決できること
-
- 中検が大学など教育機関の単位として認められる場合がある
- 就職や転職の際に、自己アピールにつながる
- 取引先が中国企業の場合に、商談がスムーズに進む
- 中国語を話す人とコミュニケーションが取りやすい
中国語検定試験(中検)の資格を取れる人はどんな人?(取得条件・受検資格)
中検の受検資格に、年齢や国籍などの制限はありません。また、試験会場としては国内のほか、香港中文大学(深圳校)、台北日本人学校(台湾)、JSU星日外国語学院(シンガポール)が設けられています。
中検の検定試験は、毎年3月、6月、11月の第4日曜日に試験が開催されます。
また、中検は一度合格したからといって永久に有効というわけではありません。級ごとに能力保証期間が定められています。
- 能力保証期間
-
- 準4級 ・ 4級 ・ 3級は2年
- 2級 ・ 準1級 ・ 1級は5年
取得にかかる費用
中検の受験料は、級ごとに異なります。
- 準4級
- 3,500円
- 4級
- 4,800円
- 3級
- 5,800円
- 2級
- 7,800円
- 準1級
- 9,800円
- 1級
- 11,800円
準1級と1級のみ二次試験が設けられており、条件を満たせば一次試験が免除されます。一次試験合格者で二次試験を欠席または不合格した場合は、次の2回の試験のうちいずれか1回に限り(1級は翌年11月試験のみ)、一次試験の免除受けられます。免除を受けた場合の受験料
- 一次試験免除者の準1級二次試験受験料
- 4,500円
- 一次試験免除者の1級二次試験受験料
- 5,000円
また、合格者のうち希望者は、証明書類を発行してもらえます。発行料は、330円から2,200円(税・送料込)です。
中国語検定試験(中検)はどんな人におすすめの資格?
中検は、どなたでも受験できる検定試験です。学生は、大学が中国語の単位認定の要件としている場合に受験することもあるでしょう。また、大学の外部の団体による客観的な能力判定を受けることで、自身の語学力のレベルを確認できます。
また、就職を希望する業界で中国語習得者が重宝されているなら、就職活動が始まる前に中検を取得しておくと自己アピールになります。
企業で働く社会人にとっては、実際のビジネスシーンでの活用のために中検取得が必要となることがあります。中国を取引先とする日系企業や中国語での顧客対応が求められる職場では、就職や転職、人事評価で中検が役立つでしょう。外国語手当として中検取得者に手当を支給する企業もあります。
中国人の人口は世界で最も多く、国際的なビジネスシーンで中国語が必要とされることが増えています。中国語を使いこなせるとさまざまな業界での活躍が期待できます。また、通訳や翻訳、教師になると、独立というキャリアも描けるでしょう。
- 中国語検定試験(中検)の資格取得がおすすめな人
-
- 大学で中検が単位として認定される人
- 取引先として中国企業と付き合いがある人
- 接客などで中国語対応が求められる人
- 中国語を話せる人材を求める業界への就職・転職を目指す人
- 中国語スキルを活かして、将来は独立して働きたい人
どこが管理している資格なの?(問い合わせ先・管理団体)
中国語検定試験(中検)の資格を管理しているのは、一般財団法人 日本中国語検定協会です。検定試験のスケジュールや申込については下記のHPから確認してください。
まとめ:今後もさまざまな業界で重宝される能力を伸ばそう
中国語を習得していると、観光業や小売業、貿易業などさまざまな業界で活躍できます。中検は、中国企業や中国語を母語とする人を顧客に持つ日本企業への就職を目指す人におすすめです。シニア・プレシニアの人にもメリットがありますので、ますます国際化が進む中、中国語スキルを磨いてみてはいかがでしょうか。
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