外国人の方が日本への進学や就職を希望するとき、日本語能力を測定する方法のひとつに「日本語能力試験」が挙げられます。N1やN2といったように難易度ごとにレベルが分けられており、日本語を読む力や聴く力などを示します。
外国人の方はもちろん、日本人が日本語能力試験について理解することで、今後ますます増える外国人の貴重な人材獲得に役立ちます。
外国人の方も日本人も知っておきたい日本語能力試験について、レベル分けや試験内容を解説します。
日本語能力試験とは、どんな資格?
日本語能力試験は、日本語を母国語としない人を対象にして行われ、日本語能力を測定し認定します。
試験は難易度によってN1~N5までの5段階に分かれています。N1が最も難しく、N5が最も易しいレベルです。自分の習熟度や目的に合ったレベルを受験できます。
N1~N5に合格した人は、下記の読む能力と聞く能力があると認定されます。
- N1
- 幅広い場面で使われる日本語を理解することができる。
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- 幅広い話題について書かれた新聞の論説や評論、論理的にやや複雑な文章や抽象度の高い文章を読み、理解できるレベル
- さまざまな話題に関する、内容に深みのある読み物を読み、ストーリーや表現意図を理解できるレベル
- 自然なスピードの会話やニュース、講義を聞いて、話の流れや内容、登場人物の関係や内容の論理構成などを詳細に理解でき、要旨を把握できるレベル
- N2
- 日常的な場面で使われる日本語の理解に加え、より幅広い場面で使われる日本語をある程度理解することができる
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- 新聞や雑誌の記事。解説、平易な評論など、論旨が明快な文章の内容を理解できるレベル
- 一般的な話題に関する読み物を読み、ストーリーや表現意図を理解できるレベル
- 日常的な場面と幅広い場面で自然に近いスピードの会話やニュースを聞き、話の流れや内容、登場人物の関係を理解し、要旨を把握できるレベル
- N3
- 日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる
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- 日常的な話題について具体的な内容を表す文章を読み、理解できるレベル
- 新聞の見出しなどから情報の概要をつかむことができるレベル
- 日常的な場面で目にする難易度がやや高い文章を読むとき、言い換え表現が与えられれば、要旨を理解できるレベル
- 日常的な場面で、やや自然に近いスピードの会話を聞き、具体的な内容、登場人物の関係などをほぼ理解できる
- N4
- 基本的な日本語を理解することができる
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- 基本的な語彙や漢字を使って書かれた、日常生活の身近な話題の文章を読み、理解できるレベル
- 日常的な場面において、ややゆっくりと話される会話の内容をほぼ理解できるレベル
- N5
- 基本的な日本語をある程度理解することができる
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- ひらがなやカタカナ、日常生活で使われる基本的な漢字で書かれた定型的な語句や文章を読み、理解できるレベル
- 教室や身の回りなど、日常生活の中でよく出会う場面において、ゆっくり話される短い会話について、必要な情報を聞き取ることができるレベル
日本語能力試験の認定を受けると、次のようなメリットが受けられることがあります。
- 学校での単位
- 学校の卒業資格認定
- 企業での優遇
- 資格認定 など
学ぶ知識・技術
日本語能力試験では、課題遂行のための言語コミュニケーション能力を有しているかが問われます。
課題遂行のための言語コミュニケーション能力とは、
- 日本語の文字や語彙、文法についてどのくらい知っているか
- ①の知識を実際のコミュニケーションでどのくらい使えるか
を指します。
上記の能力を測るため、試験は下記の3つの要素で問題が構成されています。
- 言語知識(文字・語彙・文法)
- 読解
- 聴解
レベルごとの試験科目と試験時間は下記の通りです。
- N1の試験科目と試験時間
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- 言語知識(文字・語彙・文法)、読解(110分)
- 聴解(60分)
- N2の試験科目と試験時間
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- 言語知識(文字・語彙・文法)、読解(105分)
- 聴解(50分)
- N3の試験科目と試験時間
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- 言語知識(文字・語彙)(30分)
- 言語知識(文法)、読解(70分)
- 聴解(40分)
- N4の試験科目と試験時間
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- 言語知識(文字・語彙)(25分)
- 言語知識(文法)、読解(55分)
- 聴解(35分)
- N5の試験科目と試験時間
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- 言語知識(文字・語彙)(20分)
- 言語知識(文法)、読解(40分)
- 聴解(30分)
試験は全てマークシート方式で行われます。記述試験やスピーキングの試験はありません。また、試験の難易度や平均点などは毎回同じではありません。試験ごとの差を埋めるために「尺度得点」が採用されており、公平な評価を受けられるようになっています。
日本語能力試験で目指せる職業、就職先は?
日本語能力試験で認定されると、日本語能力があると認められます。日本語能力はさまざまな日系企業で活かすことができ、就職が見込める業種や職種はかなり幅広いのが特徴です。
ただし業種や職種によって求められるレベルは異なります。医師などの国家試験合格が必要な職種はN1認定が必要です。また、N2以上の能力を求める企業も少なくありません。
専門職以外でも、インバウンドの需要がある観光業界や小売り業界で活躍している人もいます。
日本語能力試験N1合格が受験資格となる国家試験
職業によっては日本で働くために国家資格に合格する必要がある職業があります。たとえば医師は外国の医師免許を有していても、日本で医師として働く場合は日本の医師国家試験を合格しなくてはなりません。さらに医師の国家試験の受験資格の条件に、N1の認定が必要とされています。
N1の認定が受験資格となっている国家試験は下記の通りです。
- 歯科医師
- 看護師
- 薬剤師
- 保健師
- 診療放射線技師
- 歯科衛生士
- 歯科技工士
- 臨床検査技師
- 理学療法士
- 作業療法士
- 視能訓練士
- 臨床工学技士
- 義肢装具士
- 救命救急士
- 言語聴覚士
- 獣医師
また、日本の准看護師試験の受験資格としても、N1の認定が必要です。また、外国籍の人が中学校卒業程度認定試験を受験する場合、N1またはN2を取得していると、国語の試験が免除されます。
EPAに基づく看護師・介護福祉士も日本語能力試験認定が必要
EPA(経済連携協定)では、下記の場合に日本語能力検定試験の受験と認定が求められています。
- インドネシア、フィリピン、ベトナムから来日する看護師・介護福祉士
- インドネシア、フィリピンからの来日の場合は、日本語能力試験N5程度以上が必要。ベトナムからの来日の場合はN3以上の認定が必要。
日本語能力試験で認定されるとどんな悩みが解決できる?
日本語能力試験で認定されると、次のような悩みや課題の解決に貢献できます。
- 日本語能力試験に認定されると解決できる悩み
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- 日本での生活や仕事に必要な日本語能力を有すると自己アピールできる
- 日本の学校での単位取得や卒業要件を満たすことができる(当てはまる人のみ)
- 日系企業などへの就職を有利にする
日本語能力試験の認定を取れる人はどんな人?(取得条件・受験資格)
日本語能力試験は、社会人だけではなく小学生も受験しています。日本語を母語としない人を対象とした試験ですので、学歴、年齢、性別、国籍、職歴による制限はありません。どなたでも受験できます。
日本語能力試験は年に2回実施されています。2021年は第一回が7月、第二回が12月というスケジュールでした。試験が開催地は日本の47都道府県に加えて外国でも開催されており、日本以外では85の国・249都市で受験できます。
- 日本語能力試験の開催地域
- 東アジア、東南アジア、南アジア、大洋州、北米、中南米、西欧、東欧、中東、北アフリカ、アフリカ
ただし国によっては、試験の実施回数が年二回ではなく年一回となる開催地もあることに注意してください。
日本語能力試験と日本語検定は対象者が違う
日本語能力試験は「日本語を母語としない人」を対象にした試験です。そのため、受験者は主に外国人の方々となります。日本国籍を持った人も受験できます。
対して「日本語検定」とは、主に日本人が受検し、日本語を正しく理解し扱うことができるかの習熟度を測定する検定です。
取得にかかる費用
日本語能力試験の受験料は、6,500円(国内の場合、税込)です。日本以外の地域の受験料は、各国・各地域の実施期間で確認しましょう。
日本語能力試験はどんな人におすすめの資格?
日本語能力試験は、日本語能力を客観的に測定・評価する試験です。学生の進学や卒業のために認定が必要となることもあります。
社会人では、日本企業への就職を目指す場合の日本語能力証明として用いることができるでしょう。入社後は昇格や昇進のひとつの条件として、日本語能力試験を活用している企業もあります。
- 日本語能力試験の認定取得がおすすめな人
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- 大学や大学院の入学に日本語能力試験の認定が必要な人
- 日本での就職を目指している人
- 高い日本語能力がスキルアップや収入アップにつながる職種の人
- 今よりもっと日本語を使いこなすため、日本語能力を客観的に測定してみたい人
また、入国管理局の在留資格(ビザ)の審査でも、日本語能力試験が活用されています。出入国に関しても、N1またはN2の認定を受けていると優遇措置が与えられます。
日本への出入国管理で受けられる優遇措置
「高度人材に対するポイント制による出入国管理上の優遇制度」では、N1の合格者は15ポイント、N2の合格者は10ポイントが付与されます。ポイントの合計が70点以上の人に対して、出入国管理上の優遇措置が与えられます。
どこが管理している資格なの?(問い合わせ先・管理団体)
日本語能力試験は、国内では公益財団法人 日本国際教育支援協会が実施しています。国外では独立行政法人 国際交流基金が、現地の関係機関の協力を得て実施しています。台湾では、公益財団法人 日本台湾交流協会との共催で実施されています。
まとめ:日本で学びたい・働きたい人の語学力を測るならおすすめの資格
日本語能力試験は、さまざまな学校や企業で採用されている日本語能力の客観的な指標のひとつです。日本語能力のスキルアップとして挑戦するのはもちろん、進学や就職、転職にも役立ちます。日本企業にとっても優秀な外国人材を獲得するための判断材料となるでしょう。
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