スポーツが好きな人や運動への関心が高い人におすすめの資格に「公認スポーツ指導者」があります。子どもから大人、高齢者まで、スポーツを日常的に楽しむ人は増えていますが、公認スポーツ指導者の資格を取得すると、どんな仕事ができるのでしょう。
公認スポーツ指導者とは、どんな資格?
公認スポーツ指導者とは、生涯を通じた「快適なスポーツライフ」構築を目指し、日本スポーツ協会が養成する指導者の資格です。を、公認スポーツ指導者になると、スポーツ医科学の知識を活かし、「安全に、正しく、楽しく」を基本とした指導を行い、スポーツの本質的な楽しさや素晴らしさを伝える仕事をしていきます。
公認スポーツ指導者育成の基本コンセプトに基づき、以下の資質能力を身に付けた人がスポーツ指導者として認定されます。
- スポーツの価値や未来への責任を理解することができる
- プレーヤーズセンタードの考え方のもとに、暴力やハラスメントなどあらゆる反倫理的行為を排除できる
- 常に学び続けることができる
- プレーヤーの成長を支援することを通じて、豊かなスポーツ文化の創造やスポーツの社会的価値を高めることに貢献できる
- 求められる役割に応じて、スポーツ医・科学の知識を活かし、「スポーツを安全に、正しく、楽しく」指導することができる
- 求められる役割に応じて、「スポーツの本質的な楽しさ、素晴らしさ」を伝えることができる
公認スポーツ指導者は、年齢(発育発達段階)や技能レベル、興味、志向などに応じて、実にさまざまなスポーツ活動の指導を行います。
そのため、指導対象や活動拠点などを考慮し、スポーツ指導者の資格は5領域17種類で構成されています。
スポーツ指導者基礎資格
- コーチングアシスタント
- 地域におけるスポーツグループやサークル等を活動拠点とし、上位資格者を補佐する指導者として、基礎的なスポーツ指導や運営にあたる。
- スポーツリーダー
- 地域におけるスポーツグループやサークル等のリーダーとして、基礎的なスポーツ指導や運営にあたる。
競技別指導者資格
- スタートコーチ
- 地域のスポーツクラブ・スポーツ少年団・学校運動部活動等で、上位資格者と協力し指導を行う。安全で効果的な活動を提供する。
- コーチ1(旧 指導員)
- 地域のスポーツクラブ・スポーツ少年団・学校運動部活動等で指導を行うコーチングスタッフ。基礎的な知識・技能に基づき、安全で効果的なスポーツ活動を提供する。
- コーチ2(旧 上級指導員)
- 地域スポーツクラブ・スポーツ少年団・学校運動部活動等で指導を行う。監督やヘッドコーチ等の責任者となる。安全で効果的な活動の提供、指導計画構築、指導計画実行、活動評価、監督を行う。コーチ間の関わり及び成長をサポートする。
- コーチ3(旧 コーチ)
- トップリーグや実業団等のコーチングスタッフ。ブロック及び全国大会レベルのプレーヤー、チームに対して、競技力向上を目的とした指導を行う。
- コーチ4(旧 上級コーチ)
- トップリーグ・実業団・ナショナルチーム等のコーチングスタッフ。国際大会レベルのプレーヤーやチームに対して、競技力向上を目的とした指導を行う。
- 教師
- クラブや商業・民間スポーツ施設等で指導や日常運営業務を行う。施設の利用者の年齢層やスポーツライフスタイルは幅広いため、会員や利用者に応じた指導が必要。
- 上級教師
- クラブや商業・民間スポーツ施設等の、実技指導の責任者・チーフ。施設の企画・経営業務にも関わる。
メディカル・コンディショニング資格
- スポーツドクター
- スポーツ活動を医学的な立場からサポートし、健康管理、スポーツ障害、スポーツ外傷の診断、治療、予防研究等を行う。
競技会等では、医事運営とチームドクターとしてのサポートを行う。 - スポーツデンティスト
- スポーツ歯科医学の研究、教育、普及活動、スポーツにかかわる国民の健康管理、スポーツ障害、スポーツ外傷の診断、予防、研究等を行う。
- アスレティックトレーナー
- JSPO公認スポーツドクター及び公認コーチとの緊密な協力のもと、競技者の健康管理、外傷・障害予防、スポーツ外傷・障害の救急処置、アスレティックリハビリテーション、体力トレーニング及びコンディショニング等を行う。
- スポーツ栄養士
- スポーツ栄養の知識を持つ専門家で、栄養や食事に関する専門的視点からの支援、栄養サポートを行う。
マネジメント指導者資格
- アシスタントマネジャー
- 総合型地域スポーツクラブなどで、クラブマネジャーの補佐、クラブ運営のための諸活動を行う。
- クラブマネジャー
- 総合型地域スポーツクラブなどで、クラブの経営資源の有効活用、健全なマネジメント、環境整備を行う。
フィットネス資格
- フィットネストレーナー
- 商業・民間スポーツ施設等で、会員や利用者に対する相談や指導助言、各種トレーニングの基本的指導を行う。
- スポーツプログラマー
- 地域スポーツクラブ等で、会員や利用者のフィットネスの維持や向上を目的として、指導や助言を行う。
- ジュニアスポーツ指導員
- 地域スポーツクラブ等で、幼少年期の子どもたちに遊びを通した身体づくり、動きづくりの指導を行う。
学ぶ知識・技術
スポーツ指導員の資格を取得する方法は、競技別指導者養成講習会の受講、専門学校での科目履修の方法があります。
この章では、競技別指導者養成講習会について説明します。
講習科目は共通科目と専門科目があります。
- 共通科目
- 通信講座で実施される科目。内容は5段階に分かれており、資格によって必要な内容が異なる(スポーツドクター、スポーツデンティスト資格を除く)。
- スタートコーチ
- Ⅰ
- Ⅱ
- Ⅲ
- Ⅳ
- 専門科目
- 都道府県体育協会または中央競技団体によって実施される科目。
公認スポーツ指導者で目指せる職業、就職先は?
公認スポーツ指導者になると、下記の職種や業種への就職・転職が見込めます。
- スポーツ関係団体の職員
- フィットネスクラブのトレーナー
- 学校など教育施設のスポーツ指導者
- 体育協会主催大会のスタッフ
- 公共体育施設の職員
- スポーツ教室のスタッフ
公認スポーツ指導者になるとどんな悩みが解決できる?
公認スポーツ指導者の資格を取得すると、下記のような悩みや課題の解決に貢献できます。
- 公認スポーツ指導者が解決できること
-
- トレーニングの正しい方法を指導し、ケガを未然に防ぐ
- 各競技種目の楽しみや魅力を伝え、スポーツ業界を支える
- 幅広い世代の運動をサポートし、健康的な体作りを増進する
- スポーツを通し、地域のコミュニケーションを活性化する
- スポーツ施設などの健全な運営を行う
公認スポーツ指導者の資格を取れる人はどんな人?(取得条件・受験資格)
公認スポーツ指導者の資格を取得するためには、希望する資格の要件を満たし、養成講習会を受講する必要があります。
各資格の受講要件はさまざまですが、共通しているのは「受講する年の4月1日現在 満18歳以上の者(競技によっては満20歳以上)」の年齢制限があることです。
要件の詳細は下記の通りです。
スポーツ指導者基礎資格
- コーチングアシスタント
-
- スポーツリーダー、元スポーツ少年団認定員等、共通科目Ⅰに相当する免除要件を満たしている
- NHK学園の「コーチングアシスタント養成講座」を受講し修了する
- スポーツリーダー
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- 受講する年の4月1日現在、満18歳以上である
- スポーツリーダー養成集合講習会コースとして認定された団体の講習会を受講・修了する
- NHK学園の「コーチングアシスタント養成講座」を受講し修了する
競技別指導者資格
- スタートコーチ
-
- 受講する年の4月1日現在、 満18歳以上である(競技によっては満20歳以上)
- その他、各中央競技団体が定める条件を満たす
- コーチ1(旧 指導員)
-
- 受講する年の4月1日現在、 満18歳以上である(競技によっては満20歳以上)
- その他、各中央競技団体が定める条件を満たす
- コーチ2(旧 上級指導員)
-
- 受講する年の4月1日現在、満20歳以上である
- その他、各中央競技団体が定める条件を満たす
- コーチ3(旧 コーチ)
-
- 受講する年の4月1日現在、満20歳以上である
- 当該競技団体の定める事項に該当すること(競技ごとに年齢およびその他の条件の定めは、各中央競技団体へ要問い合わせ)
- 受講有効期間内で、講習会の全日程に参加が可能
- 講習会の受講に支障がない健康状態である
- インターネットサービス「指導者マイページ」から申込ができる
- コーチ4(旧 上級コーチ)
- 受講する年の4月1日現在満22歳以上であり、当該競技団体の定める事項に該当する。また、以下のいずれかの条件を満たす。
- ナショナルチームのコーチまたは監督として国際的な競技会に帯同した経験がある者、または帯同する予定がある者
- 各競技団体にて競技力向上方策の開発・研究に携わる者、またはこれから携わる者
- 各競技団体にて国際的な最新情報の収集・分析の役割を担う者、またはこれから担う者
- 日本スポーツ協会が特別に受講を認めた者
- 当該競技のコーチ3資格を保有している者
その他下記の条件を満たす。
- 受講有効期間内で、講習会の全日程に参加が可能
- 講習会の受講に支障がない健康状態である
- インターネットサービス「指導者マイページ」から申込ができる
- 教師
-
- 受講する年の4月1日現在満20歳以上であり、当該競技団体の定める事項に該当する
- 受講有効期間内で、講習会の全日程に参加が可能
- 講習会の受講に支障がない健康状態である
- インターネットサービス「指導者マイページ」から申込ができる
- 上級教師
- 受講する年の4月1日現在満22歳以上であり、当該競技団体の定める事項に該当する教師資格保有者である。また、以下のいずれかの条件を満たす。
- 施設の管理運営、組織内指導者やスタッフの育成・指導など、商業スポーツ施設等のマネジメントに携わる者、競技別の専門的指導者として各年代トップレベルの実技指導を行う者
- 商業施設等において、各種事業に関する計画の立案と運営、指導方針の決定など、組織内指導者の中心的役割を担う者、またはこれから携わる者
その他下記の条件を満たす。
- 当該競技の教師資格を保有している
- 受講有効期間内で講習会の全日程に参加が可能
- 講習会の受講に支障がない健康状態である
- インターネットサービス「指導者マイページ」から申込ができる
メディカル・コンディショニング資格
- スポーツドクター
-
- 受講開始年度の4月1日時点で、日本国の医師免許取得後4年を経過(受講開始年度の4年前の4月1日以前に取得)している
- 日本スポーツ協会または協会加盟(準加盟)団体から推薦され、協会から認められている
- スポーツデンティスト
- 2021年4月1日時点で、日本国の歯科医師免許取得後4年を経過(2017年4月1日以前に取得)している。また、以下のいずれかを満たす者のうち、日本歯科医師会および日本スポーツ協会から認められている。
- 都道府県歯科医師会より推薦されている
- 日本スポーツ歯科医学会より推薦されている
- 別に定める選考基準を満たし、日本スポーツ協会加盟競技団体より推薦されている
- アスレティックトレーナー
- 公認スポーツ指導者育成の受講者受入方針(アドミッション・ポリシー)に定める内容に合致していること。また、以下の受講条件に合致し、講習会を受講し修了すること。
- 受講する年の4月1日現在、満20歳以上である
- JSPO、JSPO加盟団体(都道府県体育・スポーツ協会、中央競技団体等)及びJSPOが特に認める国内統轄競技団体(以下「加盟団体等」という。)から推薦され、受講者選考基準を満たす
- 受講有効期間内に講習の全日程に参加が可能
- 本講習の受講に支障がない健康状態である
- 受講内定後、インターネットサービス「指導者マイページ」から申込ができる
- スポーツ栄養士
-
- 受講を開始する年の4月1日現在、満22歳以上の管理栄養士である
- スポーツ栄養指導の経験がある者、または予定がある者のうち、日本スポーツ協会および日本栄養士会が認めた者
- 受講有効期間内で講習会の全日程に参加が可能
- 専門科目「スポーツ栄養士に必要な基礎知識」の単位取得をしていること
- 講習会の受講に支障がない健康状態である
- 受講内定後、インターネットサービス「指導者マイページ」から申込ができる
マネジメント指導者資格
- アシスタントマネジャー
-
- 受講する年度の4月1日現在 満18歳以上である
- クラブマネジャー
-
- 受講する年度の4月1日現在、満20歳以上である
- 公認アシスタントマネジャー資格を有し、所属クラブ(クラブ設立準備委員会等含む)からの推薦を受けることができる
また、下記の①~③のいずれかを満たすこと。
- 既存の総合型地域スポーツクラブなどでクラブマネジャーとして活動している
- 総合型地域スポーツクラブなどを設立準備中(準備委員会等が設立済みなど)で、そのクラブのマネジメント担当者として活動する予定がある
- その他日本スポーツ協会が特別に認める者
フィットネス資格
- フィットネストレーナー
- フィットネストレーナーの資格は令和3年現在、新規養成がありません
- スポーツプログラマー
-
- 受講する年の4月1日現、 満20歳以上である
- 受講有効期間内で講習の全日程に参加が可能
- 講習の受講に支障がない健康状態である
- 指導者マイページから申込ができる
- ジュニアスポーツ指導員
-
- 受講する年の4月1日現在 満20歳以上である
- 指導者マイページから申込できる
取得にかかる費用
養成講習会の受講料や取得にかかる費用は、資格ごとに異なります。
スポーツ指導者基礎資格
- コーチングアシスタント
- 35,000円(税込)。内訳は以下の通り。
- 通信講座受講料:22,000円(税込)(リファレンスブック代:3,300円(税込)を含む)
- 登録料:13,000円(基本登録料:10,000円(4年間)、初期登録手数料:3,000円)
- スポーツリーダー
- 集合講習会の受講料は、実施団体に要問い合わせ。
競技別指導者資格
- スタートコーチ
- 受講費用は、中央競技団体において決定される。
- 日本スポーツ協会受講管理料:1人につき1,100円(税込)。2020年度開始のスタートコーチ(スポーツ少年団)養成講習会は不要
- 日本スポーツ協会作成リファレンスブック(スタートコーチ用):1,650円(税込)
- コーチ1(旧 指導員)
-
- 共通科目:22,000円(税込・教材費含む)
- 専門科目:15,400円(税込・別途必要経費がかかる場合あり)
- コーチ2(旧 上級指導員)
-
- 共通科目Ⅱ:17,600円(税込・別途リファレンスブック代:3,300円(税込)が必要)
- 専門科目 :11,000円(税込・別途必要経費がかかる場合あり)
- コーチ3(旧 コーチ)
-
- 共通科目:22,000円(別途リファレンスブック代:3,300円が必要)
- 専門科目:11,000円(競技によって異なる場合あり)
- コーチ4(旧 上級コーチ)
-
- 共通科目: 30,800円
- 専門科目: 17,600円(競技によって異なる場合あり)
- 教師
-
- 共通科目:61,600円(別途リファレンスブック代:3,300円が必要)
- 専門科目:競技団体によって異なるため要問合せ
- 上級教師
-
- 共通科目:61,600円
- 専門科目:競技団体によって異なるため要問合せ
メディカル・コンディショニング資格
- スポーツドクター
-
- 基礎科目からの受講:57,200円(税込、教材費含む)
- 応用科目からの受講:33,000円(税込、教材費含む)
- スポーツデンティスト
-
- 受講料:55,400円(税込)(スポーツ歯科医学Ⅱ免除者は36,000円)
- アスレティックトレーナー
-
- 共通科目:22,000円(税込)、リファレンスブック代別途:3,300円(税込)
- 専門科目:73,700円(税込)、 実技試験検定料:33,000円(税込)
- スポーツ栄養士
-
- 共通科目:22,000円(別途リファレンスブック代:3,300円が必要)
- 専門科目:19,800円(別途必要経費が必要な場合あり)
マネジメント指導者資格
- アシスタントマネジャー
- 実施団体により異なるため要問合せ
- クラブマネジャー
-
- 専門科目:81,400円(税込)
フィットネス資格
- フィットネストレーナー
- 令和3年時点においては、新規養成を行っていません。
- スポーツプログラマー
- 62,900円。内訳は以下の通り。
- 共通科目:17,600円(別途リファレンスブック代:3,300円が必要)
- 専門科目:42,000円
- 健康運動指導者を保有者は22,000円
- ジュニアスポーツ指導員
-
- 共通科目:22,000円(税込)。(共通科目免除者は0円)
- 専門科目:22,000円(税込)
大学・専門学校で資格取得する方法
養成講習会を受講するほか、大学・専門学校等の承認校で授業を履修することで公認スポーツ指導者の資格を取得できます。この方法は、「免除適応コース」と呼ばれています。
承認校では、日本スポーツ協会で実施しているスポーツ指導者養成講習会と同じカリキュラムを履修することになります。学校ごとに取得可能な資格や履修手続きの方法は異なります。
公認スポーツ指導者はどんな人におすすめの資格?
公認スポーツ指導者は、スポーツが好きな人やスポーツを仕事にしたい人、運動の観点から社会貢献をしたい人に適しています。
スポーツのほか、健康増進や地域振興に興味がある人にもおすすめです。
- 公認スポーツ指導者の資格取得がおすすめな人
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- スポーツが好きで、仕事にしたい人
- スポーツを通して社会貢献したい人
- 人々の健康増進をサポートしたい人
- スポーツの力を活用して地域振興を目指す人
どこが管理している資格なの?(問い合わせ先・管理団体)
公認スポーツ指導者の資格を管理しているのは、公益財団法人 日本スポーツ協会です。講習会のスケジュールや専門科目の詳細などは下記HPから確認してください。
まとめ:スポーツを仕事にして、人々の健康や楽しみをサポートする仕事
公認スポーツ指導者は、スポーツを通して社会貢献やスポーツ振興に携わることができる仕事です。スポーツが好きな人はもちろん、健康増進や地域振興に興味がある人も活躍できるでしょう。競技や知識によって資格の種類は異なりますので、ご自身の適性や希望に応じて資格取得を検討してくださいね。
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