高校で授業を教えたり、ホームルームやクラブ活動の指導をしたりと、高校生にとって身近な存在が「高校教諭」ですが、高校教諭になるために必要な国家資格が「高等学校教諭普通免許状」です。今回は高等学校教諭普通免許状を取得するための条件、必要な知識、取得後のメリットなどをお伝えしていきます。
高等学校教諭普通免許状とは、どんな資格?
高等学校教諭普通免許状とは、高校教諭になるために必要な国家資格です。高等学校教諭の「普通免許状」は、最終学歴によって下記の2種類に分けられます。
- 高等学校教諭一種免許状
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- 大学で所定の単位を修得し、教育実習を修了した者
- 高等学校教諭専修免許状
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- 大学院で所定の単位を修得した者
- 1種免許状を取得した後に3年以上学校教員として勤務し、かつ大学で所定の単位を修得し、教育職員検定に合格した者
高校教諭の初任給は最終学歴によって変わることから、「専修免許のほうが有利」との噂もありますが、専修免許は大学院卒が条件なので、大学卒の教諭よりは教壇に立つのが数年遅れます。そのため、実質給与の差はほぼないといっていいでしょう。また、今の教育現場は実力主義なので、免許状の種類による有利不利もありません。
これら高等学校教諭普通免許状の取得後に、教員採用試験に合格した者が高校教諭になることができます。高校教諭になった後は、自身の履修した専門教科(国語、数学、地歴、公民、理科、外国語など)に基づいて生徒に教育を行うほか、クラブ活動やホームルーム、学校行事、生徒の生活・進路指導など幅広い業務に携わることになります。
小学校教諭、中学校教諭となるにはそれぞれの資格を取得する必要があります。
学ぶ知識・技術
高校教諭になるには、まず大学で下記の知識・技術を習得していく必要があります。
- 必須単位
- 教師になるに向けての心構えや生徒への関わり方、心理学など。大学4年生になったら「教育実習」をし、実際の高校の教壇で生徒指導を行う
- 自由単位
- 自分が目指す専門科目を中心に履修し、単位を取得していく
また、高等学校教諭普通免許状(見込み証明書)を取得した後は、教員採用試験で下記の試験・検査をクリアした者のみが、高校教諭になることができます。
- 筆記試験
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- 教職教養試験:「教育原理」「教育法規」「教育心理」「教育史」「教育時事」の5つの分野から出題される
- 一般教養試験:「教科問題」と「時事問題・一般常識」を問う
- 専門教養試験:志望する校種、教科に対する専門的な知識を中心とした指導要領や指導法を問う
- 論作文:「教師に求められる資質」「学習・生活指導の在り方」といったテーマに沿った自身の考え方を記述し、人物考査をする
- 面接試験
- 教育委員会事務局職員や現職の校長、教頭などと面接し、自己PRや志望動機、教職教養や教育時事などに答えていく。集団討論や模擬授業、場面指導のロールプレイを行う場合もある
- 実技試験
- 音楽・美術・保健体育・家庭科・英語の教科の受験者には、実技試験が実施されます。
- 適性検査
- クレペリン検査・YG性格検査・MMPI(ミネソタ多面人格目録)などを使って、教員としての資質があるか適性検査を行う
高等学校教諭普通免許状で目指せる職業、就職先は?
高等学校教諭普通免許状の資格が活かせる主な就職先は、公立あるいは私立の高等学校です。
公立高校の教諭を目指す場合は、資格取得(見込み)後に教員採用候補者選考試験に合格し、名簿搭載される必要があります。一方、私立高校の場合は、資格取得(見込み)後に志望先の私立高校の教員採用試験に合格することで、高校教諭になれます。
また、高等学校教諭普通免許状があると、教員になる以外に、下記のような企業での就職が有利になる場合があります。
- 塾や予備校の講師
- 家庭教師
- 教科書や参考書などを作成している出版社 など
ただし、こういった一般企業に就職する場合は、面接にて「なぜ高校教諭にならず、企業就職を志望したのか」を明確に回答することが肝心です。
高等学校教諭普通免許状があるとどんな悩みが解決できる?
高等学校教諭普通免許状があると、自身の知識やスキルを活かして、下記のような悩みや問題を解決できます。
- 高等学校教諭普通免許状があると解決できること
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- 専門科目について、わかりやすく楽しく授業を展開することで、生徒の学力向上につながる
- 生徒の学力を向上させることで、志望先の大学受験の合格率を上げる
- 生徒一人一人の希望する進路や将来の悩み・相談に乗ることで、目標達成への背中を押す
高校教諭の資格を取れる人はどんな人?(取得条件・受験資格)
高校教諭になるには、高等学校教諭普通免許状の取得に向けて、下記の条件を満たす必要があります。
- 高等学校教諭一種免許状を取得希望の場合
- 高校卒業後、教職課程のある大学で、教職課程を修了する
- 高等学校教諭専修免許状を取得希望の場合
- 高校卒業後、大学の教職課程を終了後、大学院に進学する
また、教員採用試験を受けるには、下記の要件を満たす必要があります。
高校教諭の教員採用試験の受験資格
- 受験する校種や教科の教員免許状を取得済み、もしくは取得見込み(大学4年制や大学院の2年制など)である者
自治体によっては年齢制限を設けている場合があるので、事前に調べておきましょう(ただ近年は、年齢制限を設けないところが増えてきています)。
取得にかかる費用
高校教諭の教員採用試験は、一般企業の採用試験のようなものなので、受験料はかかりません。ただ、大学や大学院に進学し卒業することが資格取得の必須条件なので、授業料を最低4年間(大学院であれば最低2年間)払う必要があります。
高等学校教諭普通免許状はどんな人におすすめの資格?
高校教諭は、自身の専門分野の授業を担うだけでなく、多感な成長期の生徒と向き合い、指導していくことも業務のうちです。「ただ授業だけやればいい」「生徒のトラブルは家庭で解決してほしい」という考え方の人は向いておらず、生徒一人一人の悩みや不安に寄り添い、一緒に成長していける思いやりのある人に向いている仕事といえるでしょう。
また、授業がうまく行かなかったり、学級内でイジメやトラブルが発生したりしたとき、うまく対応し逆境を乗り越える精神力も必要です。
どこが管理している資格なの?(問い合わせ先・管理団体)
高等学校教諭普通免許状の資格を管理しているのは「文部科学省」で、免許を付与するのは各都道府県知事です。公立高校の教員になりたい場合は、各都道府県ごとに実施される教員採用試験を、私立高校の場合はそこでの教員採用試験をクリアする必要があります。
資格についての詳しい情報は、文部科学省のHPからご確認ください。
まとめ:高校教諭になるまでの道のりはハードだが、やりがいの多い専門職!
高校教諭になるには、大学に進学して専門科目の単位・教職に必要な単位を取得し、教育実習を乗り越えた上で、さらに採用試験に合格する必要があるという、なかなかハードな道のりです。しかし初任給は約25万円と比較的高く、生徒の成長を肌で実感できるやりがいの多い仕事なので、人に何かを教えるのが好きな人はもちろん、悩みに寄り添って役立ちたい気持ちが強い人は、ぜひ取得へチャレンジしてみてください。
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