病院でのエックス線検査やガンマカメラ、工場の製品検査などさまざまな場面で放射線が使われており、国家資格「放射線取扱主任者」が安全管理を行っています。この記事では、放射線取扱主任者について、第2種、第2種、第3種の違い、放射線取扱主任者と放射線技師の違い、放射線取扱主任者の資格は就職に有利に働くのかなどを紹介していきます。
放射線取扱主任者とは、どんな資格?
放射線取扱主任者とは、放射線を発生する装置が適切かつ安全に利用できるよう管理し、現場を監督する専門職です。「放射性同位元素等の規制に関する法律」に基づく国家資格の一種で、放射線を発生する装置を使用する病院・工場・研究所では、放射線の漏れ等による人体への影響・事故を防ぐために、放射線取扱主任者を事業所ごとに1名以上選任する必要があります。
放射線取扱主任者の資格には第1種・第2種・第3種の3種類があり、それぞれ扱える放射線のレベルなどが以下のように異なります。
- 第1種放射線取扱主任者
- 業務範囲が最も幅広く、非密封放射性同位元素(液体や粉末など、飛散して放射能汚染するリスクのある放射性物質)や総量370GBqを超える密封線源、放射線発生装置を使用する事業所や廃棄事業所、非密封線源の販売・賃貸にあたる事業所など、いかなる施設でも勤務できます。
- 第2種放射線取扱主任者
- 総量370GBq以下の密封線源を扱う事業所のほか、密封線源を販売・賃貸する事業所で勤務できます。第1種とは異なり、非密封放射性同位元素を取り扱うことはできません。
- 第3種放射線取扱主任者
- 放射性同位元素の数量が下限数量の1000倍以下の密封された放射性同位元素、または同数量を装備した放射性同位元素装備機器を使用する事業所、販売および賃貸を業とする事業所で勤務できます。
学ぶ知識・技術
放射線取扱主任者の資格を取得するには、資格試験の合格に向けて、さらに合格後の資格講習で下記の知識を習得していく必要があります(第3種のみ試験はなく、講習の受講+修了試験の合格だけで資格が取得できます)。
- 第1種放射線取扱主任者試験
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- 放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律に関する課目
- 第一種放射線取扱主任者としての実務に関する課目
- 物理学のうち放射線に関する課目
- 化学のうち放射線に関する課目
- 生物学のうち放射線に関する課目
- 第1種放射線取扱主任者講習
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- 放射線の基本的な安全管理に関する課目
- 放射性同位元素及び放射線発生装置並びに放射性汚染物の取扱い並びに使用施設等及び廃棄物詰替施設等の安全管理の実務に関する課目
- 放射線の量及び放射性同位元素又は放射線発生装置から発生した放射線により生じた放射線を放出する同位元素による汚染の状況の測定の実務に関する課目
- 放射性同位元素等又は放射線発生装置の取扱いに係る事故が発生した場合の対応の実務に関する課目
- 第2種放射線取扱主任者試験
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- 放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律に関する課目
- 第二種放射線取扱主任者としての実務に関する課目
- 物理学、化学、生物学のうち放射線に関する課目
- 第2種放射線取扱主任者講習
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- 放射線の基本的な安全管理に関する課目
- 放射性同位元素(密封されたものに限る)の取扱い及び使用施設等(密封された放射性同位元素を取り扱うものに限る)の安全管理の実務に関する課目
- 放射線の量の測定の実務に関する課目
- 放射性同位元素(密封されたものに限る)又は放射性汚染物の取扱いに係る事故が発生した場合の対応の実務に関する課目
- 第3種放射線取扱主任者講習
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- 放射線障害防止法令に関する課目
- 放射線及び放射性同位元素の概論
- 放射線の人体に与える影響に関する課目
- 放射線の基本的な安全管理に関する課目
- 放射線の量の測定及びその実務に関する課目
放射線取扱主任者で目指せる職業、就職先は?
放射線取扱主任者としての主な就職先は、放射線発生装置を扱う事業所・販売所です。具体的には、下記のような企業や現場が該当します。
- 精密機器メーカー
- 医療機関
- 製薬会社
- プラント施設
なお、取得するならできる業務の幅が最も広い第1種がおすすめです。第2種、特に第3種は現場でのニーズがかなり下がってしまいます。
放射線取扱主任者と放射線技師の違い
放射線取扱主任者とは、放射線を発生する装置を使用する病院・工場・研究所で働き、放射線を発生する装置を管理し、現場を監督する仕事です。
放射線技師とは、病院などで働く医療専門職です。医師の指示のもと、放射線を用いてCTやMRI、マンモグラフィ、レントゲン検査などを行います。
放射線技師の資格については、下記の記事で詳しくまとめています。
どちらも国家資格であり、名称も似ているように感じられるかもしれませんが、放射線取扱主任者と放射線技師は異なる資格ですので混同しないように注意しましょう。
放射線取扱主任者になるとどんな悩みが解決できる?
放射線取扱主任者になると、次のような悩み・問題が解決できます。
- 放射線取扱主任者が解決できること
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- 放射線を安全に取り扱い、管理することで、放射能漏れや被爆、発がんなどの事故・障害を未然に防ぐ
放射線取扱主任者の資格を取れる人はどんな人?(取得条件・受験資格)
放射線取扱主任者の資格を取得するには、資格試験を受けて合格し、その後講習を受講する必要があります(第3種の場合は試験はなく、講習のみです)。
この試験には特に受験資格はなく、年齢や学歴、職歴を問わずどなたでも受けることができますが、講習は18歳以上でないと受講できません。
取得にかかる費用
放射線取扱主任者の資格取得にかかる費用は、下記の通りです。
- 第1種放射線取扱主任者
- 試験:14,565円/講習:167,546円
- 第2種放射線取扱主任者
- 試験:10,389円/講習:103,176円
- 第3種放射線取扱主任者
- 講習:93,398円
放射線取扱主任者はどんな人におすすめの資格?
放射線取扱主任者は、次のような人に取得がおすすめの資格です。
- 放射線取扱主任者の資格取得がおすすめな人
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- 放射線を取り扱う企業や現場で働いており、キャリアアップや資格手当取得を目指している人
- 診療放射線技師として働いている人(資格を取得すれば業務の幅が広がり、核医学や放射線治療の部署へ配属されやすくなる)
どこが管理している資格なの?(問い合わせ先・管理団体)
放射線取扱主任者の資格試験と資格講習を管理しているのは、「公益財団法人 原子力安全技術センター」です。種別ごとの試験(講習)日程や会場、申し込みなどについては、下記のHPからご確認ください。
まとめ:放射線取扱主任者は、放射線関連業界で働く人のキャリアアップにおすすめの資格
放射線取扱主任者はマイナーで保有者の少ない資格なので、関連業界で既に働いている人は、取得によってキャリアパスを有利に進められる可能性があります。第1種の取得に向けてぜひチャレンジを!
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