バリアフリーやノーマライゼーションという言葉が浸透し、障害者や高齢者が生活を送る上での不自由を取り除くことを社会全体が目指していますよね。
この記事では、聴覚に障害がある人の生活をサポートすることを仕事とする「手話通訳士」について、資格試験や活躍できる場所などを紹介します。
手話通訳士とは、どんな資格?
手話通訳士とは、手話を使って聴覚に障害を持つ人のコミュニケーションをサポートするための知識やスキルを証明する資格です。ニュースなどで発信される言葉を手話に通訳したり、手話を言葉に訳したりする仕事を通して、聴覚に障害を持つ人のコミュニケーションの架け橋になります。
手話通訳士は民間資格ですが、試験の実施団体である社会福祉法人聴力障害者情報文化センターは、厚生労働大臣の認定を受けています。
手話通訳士は、令和2年のデータで全国に3,832人います。第31回(令和2年度)の試験の合格率は11.0%
でした。
学ぶ知識・技術
手話通訳士になるには、社会福祉法人聴力障害者情報文化センターが実施する手話通訳技能認定試験(手話通訳士試験)に合格する必要があります。
試験は学科試験と実技試験に分かれています。
学科試験(四肢択一方式)
- 試験内容
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- 障害者福祉の基礎知識(障害者福祉の理念と発展、障害の概念と実態、障害者福祉の制度)
- 聴覚障害者に関する基礎知識(聴覚障害の基礎知識、聴覚障害者の福祉と運動、聴覚障害者の自立と社会参加)
- 手話通訳のあり方(手話通訳者の役割、言語・文化・コミュニケーション、通訳理論、手話通訳の実際、手話通訳者としての一般教養)
- 国語(言語音、単語、文法、文字、表現法、文章読解)
- 合格基準
- 全ての科目において得点を獲得しており、かつ、4科目の総得点の60%程度を獲得していること。
実技試験
- 試験内容
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- 聞取り通訳 音声による出題を手話で解答。正確さや技能
- 読取り通訳 手話による出題を音声で解答
- 合格基準
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- 聞取り通訳は、表現力、円滑性・速さ、態度を採点
- 読取り通訳は、表現力、表現能力(表現力、速さ、態度、明瞭性)を採点
手話通訳士で目指せる職業、就職先は?
手話通訳士になると、次の業界などで活躍することができるでしょう。
- 医療
- 福祉
- 接客業
- 老人ホームなど介護業
- 政見放送の手話通訳
- 行政機関の窓口での手話通訳
- 手話講習会の講師
手話通訳の仕事は、資格を持っていなくても行うことができます。
ただし手話通訳士の資格を有していると、
- 正式に「手話通訳士」の名称を使用できる
- 裁判や警察、選挙などの公的な手話通訳を行える
という仕事上の違いが出てきます。
一般的には、手話通訳士の仕事は手話通訳者派遣センターに登録し、派遣で勤務することが多いです。正社員のように安定した勤務形態で働く手話通訳士は少数派です。
手話通訳士になるとどんな悩みが解決できる?
手話通訳士の資格を取得すると、下記の悩みや課題の解決に貢献できます。
- 手話通訳士が解決できること
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- 耳の不自由な人の行政手続きや免許更新をサポートする
- 裁判や選挙など公的な情報を手話で伝えられる
- 障害の有無に左右されない、人と人とのコミュニケーションを促進する
手話通訳士の資格を取れる人はどんな人?(取得条件・受験資格)
手話通訳士の試験は、20歳以上の人が対象です。受験日の属する年度末までに20歳に達する者を含みます。
手話通訳士試験の受験資格
受験する年の前年度の手話通訳士試験の学科試験において合格基準を満たしていた受験者は、申請すると学科試験が免除されます。
取得にかかる費用
手話通訳士試験の受験費用は、22,000(税込)円です。
手話通訳士試験の日程
手話通訳士の試験は年1回実施されます。試験地は学科試験及び実技試験ともに、東京、大阪、熊本、宮城、埼玉です。
手話通訳士はどんな人におすすめの資格?
手話通訳士の有資格者は多くありません。介護や医療、サービス業などで聴覚に障害を持つ人に関わる仕事をしている人がこの資格を取得すると、信頼度が高まります。介護職の資格と合わせて手話通訳士の資格取得を目指す人もいます。
手話の通訳は無資格でも行えますが、裁判など公的な通訳をしたい人は手話通訳士の資格が必要です。
発言者の意図を的確に通訳するスキル手話の技術や福祉に関する知識はもちろん、コミュニケーションの架け橋となることにやりがいを感じる人に向いている仕事でしょう。
- 手話通訳士の資格取得がおすすめな人
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- 手話通訳の仕事をしていて、さらに仕事の幅を広げたい人
- 介護や医療、サービス業の仕事で、手話によるサービスの充実を図りたい人
- 手話を通して、聴覚に障害を持つ人の生活をサポートしたい人
- 手話によってコミュニケーションをサポートしたい人
どこが管理している資格なの?(問い合わせ先・管理団体)
手話通訳士の試験は、社会福祉法人 聴力障害者情報文化センターが実施しています。試験の詳細や申込は下記HPから確認してください。
まとめ:手話通訳士は社会貢献にもつながるやりがいのある仕事
手話は、聴覚に障害がある人とそうでない人のコミュニケーションを支えることができる技術です。手話通訳士は、手話の技能と関連知識を有することを証明できる資格です。資格を取得すると、公的な手話通訳をすることができ、信頼性も高まります。やりがいのある仕事ですので、是非チャレンジを検討してみてはいかがでしょう。
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