グローバル社会の現代において、輸出入などの貿易は日々の生活を支える大切な基盤になっています。そんな貿易業界の唯一の国家資格が「通関士」です。今回は通関士とはどんな仕事か、具体的な業務内容や資格取得に必要な知識、適性、取得のメリットなどをお伝えしていきます。
通関士とは、どんな資格?
そもそも「通関」とは、輸出入の許可を出す「税関」に貨物を「通す」ことを意味します。「通関士」は、貨物の輸出入を行う商社・メーカーなどからの委託を受け、税関に輸出入の申告手続きを行う通関のスペシャリストです。
税関は、武器や薬物・コピー商品などの違法な物品の密輸を防ぐため、品物の書類の確認・検査を行い、輸入貨物については関税等を徴収します。この税関に申告する輸出入貨物の書類の作成や審査・申告を行うのが通関士ですが、税関への提出書類は多く煩雑で、法令をはじめとした専門知識が必要です。
そのため、財務省が管轄する国家試験に合格し、国家資格を手に入れた人だけが通関士になることができます。通関士の主な業務は以下の通りです。
- 税関に提出する書類の作成代行(通関書類への記名・捺印)
- 税関への申告代行(通関書類の審査)
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- 企業の取引書の内容チェック
- 規制・法令的に問題がないかの確認
- 物品の分類(輸出の場合は輸出統計品目表、輸入の場合には実行関税率表を使う)
- 輸入品への納税額の算出
- 輸出入の許可が出なかった場合、企業を代理しての不服申し立てや陳述代行
学ぶ知識
通関士の国家試験に合格するには、下記の知識を習得する必要があります。
- 通関業法(45点/50分)
- 関税法等(60点/90分)
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- 関税法
- 関税定率法
- 関税暫定措置法
- NACCS法
- ATA条約特例法
- TIR条約特例法
- 外国為替
- 外国貿易法
- 通関実務(45点/90分)
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- 関税・消費税等の計算実務
- 課税価格の計算
- 輸出入申告書
- 貨物の分類
- 輸出入通関
「通関業法」「関税法」「通関実務」の3科目はいずれもマークシート方式で、「択一式(正しいものもしくは誤っているものを1つ選ぶ形式)」と「選択式(15個の選択肢の中から適切な5つの語句を選ぶ「語群選択式」、正しいものもしくは誤っているものをすべて選ぶ「複数選択式」)」が主な出題形式です。「通関実務」の科目のみ、電卓を使った「計算式」の出題もあります。
通関士で目指せる職業、就職先は?
グローバル化に伴い、ヒト・モノ・カネが国境を越えて移動する機会が多くなった現代において、通関士は非常にニーズの高い職種で、求人もたくさんあります。通関士の国家資格を取得できた場合、以下のような就職先が想定できるでしょう。
- 通関業者
- 通関士にとって、最も一般的な就職先。クライアントから依頼され、貨物の通関業務(税関に輸入申告→検査→関税を正しく計算して支払→輸入)を請け負う専門企業です。
- 海運・航空・倉庫・物流関連企業
- これらの企業は通関業務を行うことが多いため、通関部署で求人募集をしている場合があります。
- 商社・メーカー
- 商社やメーカーの多くは通関業者に通関手続きを委託しますが、商社によっては社内で担当の通関士を雇い、国内の依頼主への適切な説明、通関業者への正確な依頼を担当するケースもあります。
通関士になるとどんな悩みが解決できる?
通関士は、モノの輸入・輸出に必要な「通関書類の作成」や「通関手続きの代行」など、通関に必要な業務を行う貿易のエキスパートです。通関士の知識や技術があれば、下記のような悩みを解決できます。
- 通関士が解決できること
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- 税関に提出する書類を正確に作成・審査することで、スムーズな通関や取り引きをサポートし、依頼主の不利益を防ぐ
- 通関の許可が下りなかった場合、輸出入業者の代わりに対処し、税関に不服申し立てや陳述ができる
通関士の資格を取れる人はどんな人?(取得条件・受験資格)
通関士の国家試験は、学歴、年齢、経歴、国籍などを問わずどなたでも受験できます。
取得にかかる費用
通関士の国家試験の受験料は、3,000円です。
通関士はどんな人におすすめの資格?
通関士は申告書類のチェック、作成、税率計算などミスが許されない仕事を請け負うため、下記のような人が向いているといえます。
- 忍耐力がある
- 書類や計算ミスが多いと貨物の流通が遅れ、依頼主に迷惑がかかったり税関からペナルティを課されたりすることがあるため、一つ一つの作業をコツコツ確実にこなす忍耐強さが必要です。
- 計算が得意
- 多角的に物事を捉えられる
- 複数の用途がある輸入品は、どの該当品目で申告するかによって税率を抑えることができます。削減コストを発見するために、やわらかく多角的な視点での計算能力も必要になるでしょう。
また、通関士試験は合格率10%程度の難易度の高い資格ですが、下記の職種についている人は既に貿易の知識があり、キャリア&給与アップも目指せるので資格取得がおすすめです。
行政書士、国際航空貨物取扱士、海事代理士、旅行業務取扱管理者などとのダブルライセンスを狙うと、さらに活躍の場が広がるでしょう。
- 通関士の取得がおすすめな人
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- 貿易事務の仕事をしている人
どこが管理している資格なの?(問い合わせ先・管理団体)
通関士の国家試験を実施・資格を管理しているのは「財務省関税局(税関)」です。試験は例年10月に年1回、公告は7月に税関のHPに掲載されます。その年の受験日程や申請手続きなどは、下記のページからご確認ください。
まとめ:「通関士」は、将来性の安定した国家資格。貿易業に興味のある人は資格取得に向けてチャレンジを
物の輸出入など貿易に携わる仕事が好きな人には、通関士はおすすめの国家資格です。正確で迅速な手続き、コミュニケーション力などが問われますが、求人数も多く、グローバル社会の現代においては将来性も安定した職種といえるでしょう。資格講座などに通って、ぜひ取得に向けてチャレンジを。
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