法律知識の汎用性の高さ、業務領域の広さから、「頼れる街の法律家」と呼ばれる行政書士。とても有名な国家資格の一つですが、具体的にはどんな業務を行う資格なのでしょうか。今回はこの行政書士について、資格の内容や取得のメリット、難易度、就職先など気になるポイントを解説していきます。
行政書士とは、どんな資格?
行政書士は、1951年(昭和26年)に成立した「行政書士法」により誕生した国家資格です。下記のような行政手続きを専門とし、国民に最も身近な「街の法律家」ともいわれます。
- 書類作成業務
- 官公署へ提出する書類、権利義務や事実証明に関する書類を作る
- 許認可申請の代理
- お店の開業や住宅建設など、官公署に申請する書類を代理で行う
- 相談業務
- クライアントからの相談を受け、ビジネスコンサルタントや予防法務などのアドバイスを行う
毎年約4万人が受験する人気の国家資格で、近年の合格率は10〜15%程度です。筆記試験に向けて習得すべき知識は以下の通りです。
学ぶ知識
- 行政書士の業務に関し必要な法令等(46問)
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- 基礎法学
- 憲法
- 行政法(行政法の一般的な法理論、行政手続法、行政不服審査法、行政事件訴訟法、国家賠償法や地方自治法など)
- 民法
- 商法・会社法
- 行政書士の業務に関連する一般知識等(14問)
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- 政治・経済・社会
- 情報通信・個人情報保護
- 文章理解
筆記試験はマークシートと記述式の2種類があり(「行政書士の業務に関連する一般知識等」はマークシートのみ)、試験時間は3時間です。行政書士試験の合格基準に達するには、次の要件を全て満たす必要があります(試験問題の難易度によって補正される場合があります)。
- 「行政書士の業務に関し必要な法令等科目」の正答率が50%以上
- 「行政書士の業務に関連する一般知識等」の正答率が50%以上
- 試験全体の正答率が60%以上
行政書士で目指せる就職先は?
行政書士の求人を出すところは、大まかに「一般企業」と「行政書士事務所などの士業事務所」の2つに分けられます。ただ、後者は全体的に求人数がかなり少なめなので、一般企業のスタッフとして働く人が多い傾向です。
- 一般企業
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- 法務部門のスタッフ
- 法律関連の手続き全般を扱う専門社員
- 士業事務所
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- 行政書士事務所のスタッフ
- 弁護士事務所のスタッフ
- 社会保険労務士事務所のスタッフ
行政書士になるとどんな悩みが解決できる?
行政書士の資格取得に向けて学習を続けると、必然的に「憲法・基礎法学」「民法」「行政法」「商法」「会社法」、教養としての「一般知識が身につきます。法律に関してのオールラウンドな知識をつけた上で資格に合格することで、下記のような悩みを解決できるようになります。
- 行政書士が解決できること
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- 開業時の許認可申請や書類手続き
- 会計記帳、決算、財務諸表の作成、
- ビジネスコンサルタント(中小企業に対する法務的観点からのアドバイス)
- トラブルを未然に防ぐ予防法務(遺産分割協議書など権利義務・事実証明に関する書類の作成、提出)
- 遺言書の起案・作成の支援
- 成年後見
- 自動車登録関連
- 土地活用(畑や家を売りたいなど土地関連の申請手続き)
- 日本国籍取得に向けての帰化申請手続き、在留資格取得など
- 市民法務(クーリングオフ、示談書、協議書など悪徳商法への相談)
行政書士の資格を取れる人はどんな人?(取得条件・受験資格)
行政書士の資格を取るオーソドックスな方法は、「行政書士試験に合格し、資格登録をする」ことです。
試験自体に受験資格はなく、年齢、学歴、国籍等に関係なく、どなたでも受験できます(ただし試験に合格しても、未成年者や成年被後見人・被補佐人、懲戒処分を受けた公務員、禁固刑以上の刑を受けた者など、行政書士法第2条の2(欠格事由)に該当する対象は資格登録が認められません)。
行政書士試験は毎年1回、11月の第2日曜日に行われます。受験願書や試験案内については、「行政書士試験研究センター」のホームページにて毎年7月の第2週に発表されます。
ただ、行政書士の資格を取る方法は国家試験の合格だけに限りません。特例として、下記に該当する人は、試験を受けずとも行政書士資格の登録が認められています。
- 弁護士資格を有する者
- 弁理士資格を有する者
- 公認会計士資格を有する者
- 税理士資格を有する者
- 公務員でかつ規定の事務を20年以上(場合によっては17年以上)経験した者
受験にかかる費用
受験手数料は7,000円です。
行政書士はどんな人におすすめの資格?
行政書士が取り扱う書類は1万種類を超えるといわれており、業務範囲は多岐にわたります。また、法律系知識を必要とする専門職ですが、顧客の意向を正確に汲み取ってサポートする必要もあるため、対人スキルも欠かせないでしょう。
このことを踏まえると、下記のような人が行政書士に向いていると考えられます。
- 勉強が苦でなく、新しい分野を楽しめる人
- 柔軟性のある対応ができる人
- コミュニケーション能力が高い人
- 新しいサービスを企画・提供するなどアイデア力が高い人
また、行政書士の資格を取ると仕事の幅を大きく広げられるという点で、下記の資格を持っている人にもおすすめです。
- 行政書士の資格取得がおすすめな人
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- 社会保険労務士の資格を持ち、仕事に就いている人
- 宅地建物取引士の資格を持ち、仕事に就いている人
- 司法書士の資格を持ち、仕事に就いている人
- ファイナンシャルプランナーの資格を持ち、仕事に就いている人
- 中小企業診断士の資格を持ち、仕事に就いている人
どこが管理している資格なの?(問い合わせ先・管理団体)
現在、行政書士試験の実施や管理を行っているのは「一般財団法人 行政書士試験研究センター」です。資格取得条件や受験手続き、受験日程や会場など、不明点は下記のホームページからご覧ください。
まとめ:行政書士は法律資格のベースになり、汎用性も高い!キャリアアップを狙う人は入門試験としてトライを
行政書士は、官公署へ提出する書類作成や許認可申請の代理、コンサルティング業など、法律知識を活かした幅広い業務に関われる資格です。社会保険労務士やファイナンシャルプランナーなど、ダブルライセンスでさらにキャリアアップも目指せる専門職でありながら、合格率も10〜15%と比較的難易度も法律系の国家資格のなかではそこまで高くないとされているので、法務関係の仕事に興味がある方はぜひ検討してみましょう。
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