社会からの需要があり貢献性も高い職種のひとつが、人々の安全確保に携わる仕事です。今回紹介するのは、ビルのエレベーターやエスカレーター、レジャー施設などのジェットコースターなどの点検をする昇降機検査資格者の国家資格です。
資格取得にために必要な知識や実務経験、講習受講にかかる費用などを見ていきましょう。
昇降機検査資格者とは、どんな資格?
昇降機検査資格者とは、昇降機(エレベーター、エスカレーターなど)、遊戯施設(ジェットコースター、観覧車など)の定期検査を行って設備の安全を確保するために必要な国家資格です。昇降機を有する施設や遊戯施設では定期的に設備の点検、調整、改修工事を行い、検査結果を特定行政庁へ報告する責任があり、昇降機検査資格者がその職務を担います。
昇降機と遊戯施設とは下記の設備を指します。
- 乗用エレベーター(ホームエレベーター)
- 人荷共用エレベーター
- 寝台用エレベーター
- 荷物用エレベーター(荷扱い者又は運転者以外乗車禁止)
- 自動車運搬用エレベーター(自動車運転手又は運転者以外乗車禁止)
- 小荷物専用昇降機
- 段差解消機
- いす式階段昇降機
- エスカレーター
- 観光用エレベーター
- ウォーターシュート
- コースター
- メリーゴーラウンド
- 観覧車
- オクトパス
- 飛行塔
学ぶ知識・技術
昇降機検査資格者の資格を取得するためには昇降機等検査員講習を受講し、修了考査に合格する必要があります。スケジュールは例年、申込が6月中旬~7月中旬、10月に講習が開催され、12月下旬頃に結果が通知されます。
講習は4日間に分けて行われ、下記の科目を習得します。
- 昇降機・遊戯施設定期検査制度総論(1時間)
- 昇降機に関する建築基準法令(昇降機関係)(3.5時間)
- 建築学概論(2時間)
- 昇降機・遊戯施設に関する機械工学(2時間)
- 昇降機・遊戯施設に関する電気工学(2時間)
- 昇降機概論(3時間)
- 昇降機の検査標準(2.5時間)
- 遊戯施設概論(0.5時間)
- 遊戯施設に関する建築基準法令(1.5時間)
- 遊戯施設の検査標準(1.5時間)
- 昇降機・遊戯施設に関する維持保全(1時間)
- 修了考査(2時間)
修了考査を受けられるのは、全講習科目を受講した人のみです。ただし科目免除の対象となる受講者と昨年度の修了考査不合格者は全講習を受講しなくても修了考査を受けられます。
令和2年度の修了考査合格率は約8割でした。問題数は全30問で、20問以上正解した受講者が合格となりました。難易度は易しめの国家資格ですが、例年の合格率は7割程度であり、講習内容をしっかり習得しないと合格は難しくなるでしょう。
昇降機検査資格者で目指せる職業、就職先は?
昇降機検査資格者の資格を取得すると、メンテナンス会社やビル管理会社への就職が見込めます。就職してからはメンテナンス作業員として、保守点検業務を行います。
昇降機検査資格者になるとどんな悩みが解決できる?
昇降機検査資格者の資格を活かして、次のような悩みを解決できます。
- 昇降機検査資格者が解決できること
-
- 施設のエレベーター事故を防ぎ、従業員や顧客の安全を確保する
- 建築に関する法令や基準に対応し、昇降機設備をメンテナンスする
昇降機検査資格者の資格を取れる人はどんな人?(取得条件・受験資格)
昇降機検査資格者の国家資格を取得するには講習の受講が必要です。講習の受講資格は、下記の条件を満たす人となります。
- 大学または専門職大学、または職業能力開発総合大学校(長期課程、総合課程、応用課程)において、正規の機械工学もしくは電気工学またはこれらに相当する課程を修めて卒業した後、昇降機または遊戯施設に関して2年以上の実務の経験を有する者。
- 短期大学、専門職短期大学、専門職大学(3年の前期課程)において、正規の機械工学もしくは電気工学またはこれらに相当する修業年限3年の課程(夜間において授業を行うものを除く)を修めて卒業した後、昇降機または遊戯施設に関して3年以上の実務の経験を有する者。
- ②に該当する者を除き、短期大学、専門職短期大学、専門職大学(2年の前期課程)または学校教育法による高等専門学校、専修学校、または職業能力開発総合大学校(特定専門課程、専門課程)において、正規の機械工学もしくは電気工学またはこれらに相当する課程を修めて卒業した後、昇降機または遊戯施設に関して4年以上の実務の経験を有する者。
- 学校教育法による高等学校または専修学校、または職業能力開発総合大学校(普通課程)において、正規の機械工学もしくは電気工学またはこれらに相当する課程を修めて卒業した後、昇降機または遊戯施設に関して7年以上の実務の経験を有する者。
- 昇降機または遊戯施設に関して11年以上の実務の経験を有する者。
- 建築行政(昇降機又は遊戯施設に関するものに限る)に関して2年以上の実務の経験を有する者。
- 昇降機または遊戯施設に関する法令の施行(建築行政を除く)に関して5年以上の実務の経験を有する者。
- ①~⑦までに掲げる者と同等以上の知識および経験を有する者。
- 正規の機械工学、電気工学と同等と認める課程とは
- 機械(工学)科、電気(工学)科、電子(工学)科、電気電子(工学)科、電気通信(工学)科、精密機械(工学)科、応用機械(工学)科、生産機械(工学)、繊維機械(工学)科、航空(工学)科、造船(工学)科、船舶(工学)科、自動車(工学)科、鉄道(工学)科、制御(工学)科、計測(工学)科
次の課程を修了している場合は、受講資格①~④に定める実務年数に1年を加えることで、正規の機械工学、電機工学と同等とみなされます。
- 実務年数に1年を加えることで、正規の機械工学、電機工学と同等とみなされる過程
- 建築(工学)科、土木(工学)科、建設(工学)科、都市(工学)科、設備工業科、建築設備(工学)科
また、次の資格を有する人は、講習科目の建築学概論が免除されます。
- 建築設備士
- 建築設備検査員
- 特定建築物調査員
- 防火設備検査員
昨年度不合格の人(修了考査のみ受講した方を除く)は、学科免除で修了考査を受けられます。
取得にかかる費用
講習の全科目を受講する場合の受講料は、46,200円(税込、テキスト代含む)です。再受講の場合は11,000円(税込、テキスト代含まず)、19,800円(税込、テキスト代含む)です。テキスト代は8,800円(税込)となります。
昇降機検査資格者はどんな人におすすめの資格?
昇降機検査資格者の資格を持っていると、会社によっては資格手当が支給されます。大学などで機械工学や電機工学を修了した人や、昇降機保守の実務経験がある人で、収入アップを目指す人におすすめの資格です。
ビルはエレベーター設備があることがほとんどで、遊戯施設もたくさんの人が訪れるため、昇降機の老朽化や摩耗による事故は絶対に避けなくてはいけません。そのため、昇降機検査資格者は全国的に需要があり、またこれからの時代でも必要とされる資格でしょう。
- 昇降機検査資格者の資格取得がおすすめな人
-
- 機械工学、電気工学を修了した知識を活かしたい人
- 昇降機の保守の実務経験があり、キャリアアップを目指す人
- 昇降機を有するビルや遊園地などで、人々の安全を守りたい人
どこが管理している資格なの?(問い合わせ先・管理団体)
昇降機検査資格者の資格や講習を管理しているのは、 一般財団法人 日本建築設備・昇降機センターです。講習のスケジュールや申込は下記HPから確認してください。
まとめ:ビルメンテナンス会社などで設備の安全確保に貢献!
昇降機検査資格者は、エレベーターや観覧車などの安全を確保する重要な仕事を担います。国家試験の中では比較的難易度は易しく、講習を受講すれば合格に必要な知識を習得できます。大学などでの修了過程や社会人になってからの実務経験を活かし、スキルアップ・収入アップを目指す人は資格取得にチャレンジしてみてくださいね。
コメント