廃棄物処理施設技術管理者の資格を取るとどんなメリットがある?
エコロジーや持続可能な社会作りへの関心が年々高まっています。日々排出される廃棄物の処理は世界的な問題で、適切かつ安全な処理が必要です。人にも地球にもやさしい廃棄物処理ができるのは、専門的な知識を持った廃棄物処理施設技術管理者がいるからです。
この記事では、廃棄物処理施設技術管理者について資格取得に必要な要件や受験費用などを説明します。
廃棄物処理施設技術管理者とは、どんな資格?
廃棄物処理施設技術管理者とは、産業廃棄物について適切かつ安全な処理やリサイクルを行う作業において、指導や監督をする管理者が所有する国家資格です。
- 産業廃棄物とは
- 工業、建設業、製造業、サービス業などの事業活動に伴って生じる廃棄物。燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類、紙くず、木くず、繊維くず、ゴムくず、金属くず、ガラス及び陶磁器くず、鉱さい、動植物性残さ、動物のふん尿、ばいじん(ダスト)類、がれき類等で、固形状のものと液状のもの(放射性物質及びこれによって汚染された物を除く)など
こうした産業廃棄物の性質を理解しない人が処理をすると、爆発や危険な化学反応を引き起こし、人体や環境に有害な事故を招きます。また、産業廃棄物にはリサイクル可能な物がありますが、十分な知識を用いてリサイクルを進めなければ、資源の安全な再利用はできません。
廃棄物処理施設の設置者(市町村は管理者)は、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(以下「廃棄物処理法」という)第21条により、技術管理者の設置が義務付けられています。技術管理者とは、「廃棄物処理法」第21条第2項で、施設の維持管理上の基準に係る違反が行われないように、施設を維持管理する事務に従事する他の職員を監督しなければなりません。
そのため、技術的知識と関係法令を十分に理解した責任者の存在が必要です。廃棄物処理施設技術管理者は以下のような仕事を行います。
- 廃棄物処理施設において「技術上の基準」に関する違反が行われないように監督する
- 施設の維持管理要領の立案(搬入計画、搬入管理、運転体制、保守点検方法、非常時の対処方法等)
- 施設の運転や運転時の監視、監督
- 施設の定期保守点検や必要な措置の実施
- 改善事項等についての意見具申を行う など
学ぶ知識・技術
廃棄物処理施設技術管理者になるには、規則で定められている学歴や経験、資格等の要件を備えていること、講習を受講し修了することが求められます。
この要件については、「廃棄物処理施設技術管理者試験の受講資格」で受講資格要件について詳しく解説していますので、そちらを確認してください。
講習は「基礎・管理課程講習」と「管理課程講習」に分かれます。受験資格に該当する人は「基礎・管理課程講習」または「管理課程講習」を受講し、それ以外の人は「基礎・管理課程講習」を受講します。
基礎・管理課程講習
- 基本履修科目
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- 廃棄物概論(廃棄物の性状、収集運搬、中間処理技術、最終処分技術、資源化再生処理技術)
- 構造と維持管理 施設の構造、施設の維持管理)
- 安全対策と安全衛生管理(廃棄物処理と労働災害、安全化技術、安全とリスク)
- 測定・分析の実際(測定・分析の概要、サンプリング方法、測定・分析結果の見方)
- ごみ処理施設コース、産業廃棄物焼却施設コース(全10日間 55時間)
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- 廃棄物概論(3時間)
- 構造と維持管理(24時間)
- 安全対策と安全衛生管理(4時間)
- 測定・分析の実際(2時間)
- 「管理課程」基本履修表(22時間)
- し尿・汚泥再生処理施設コース、最終処分場コース(全10日間 55時間)
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- 廃棄物概論(3時間)
- 構造と維持管理(24時間)
- 安全対策と安全衛生管理(3時間)
- 測定・分析の実際(3時間)
- 「管理課程」基本履修表(22時間)
- 破砕・リサイクル施設コース(全8日間 43時間)
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- 廃棄物概論(3時間)
- 構造と維持管理(14時間)
- 安全対策と安全衛生管理(4時間)
- 「管理課程」基本履修表(22時間)
- 産業廃棄物中間処理施設コース(全10日間 55時間)
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- 廃棄物概論(3時間)
- 構造と維持管理(21時間)
- 安全対策と安全衛生管理(6時間)
- 測定・分析の実際(3時間)
- 「管理課程」基本履修表(22時間)
- 有機性廃棄物資源化施設コース(全8日間 43時間)
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- 廃棄物概論(3時間)
- 構造と維持管理(12時間)
- 安全対策と安全衛生管理(3時間)
- 測定・分析の実際(3時間)
- 「管理課程」基本履修表(22時間)
基本履修科目の全講習科目を受講した方のみ、管理課程の受講に進めます。管理課程では下記の講習科目を受講します。
- 管理課程基本履修票(全コース共通、合計22時間)
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- 廃棄物処理法と関係法規(廃棄物処理法、関係法規)
- 管理監督の理論と実際(技術管理者の責務、組織と従事者、従事者の管理、管理体制)
- 廃棄物処理技術特論(廃棄物処理と循環型社会、施設に関する技術的動向)
- 施設の運営管理(搬入管理、運営管理計画、運転管理、保全管理)
- 施設整備の計画と実際(施設の整備計画、住民と施設整備)
- 処理機能の維持と評価(維持管理における処理機能の評価、対策事例)
管理課程の基本履修表の全講習科目を受講した方のみ、講義終了後に能力認定試験を受験することができます。能力認定試験はマークシート方式で、出題数は40問です。80%以上の得点率を獲得すると、合格となります。
廃棄物処理施設技術管理者で目指せる職業、就職先は?
廃棄物処理施設技術管理者の資格を取得すると、主に一般廃棄物処理施設や産業廃棄物処理施設への就職が見込めます。
廃棄物処理施設技術管理者になるとどんな悩みが解決できる?
廃棄物処理施設技術管理者は、専門的な知識や技術を活かして次のような悩みや課題の解決に貢献できます。
- 廃棄物処理施設技術管理者が解決できること
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- 廃棄物処理場での事故を防ぎ、従業員の安全や環境を守る
- 適切なリサイクルを支え、エコロジーな社会作りにつながる
- 基礎・管理課程講習
- 受講コースが以下の場合の受講料(テキスト代込)は、121,000円(税込)
- ごみ処理施設コース
- し尿・汚泥再生処理施設コース
- 産業廃棄物中間処理施設コース
- 産業廃棄物焼却施設コース
- 最終処分場コース
- 受講コースが以下の場合の受講料(テキスト代込)は、103,400円(税込)
- 破砕・リサイクル施設コース
- 有機性廃棄物資源化施設コース
- 管理課程講習
- 受講料(テキスト代込)は、66,000円(税込)
- 能力認定試験に不合格となった場合、不合格通知とともにご案内する会場(日本環境衛生センター 東日本支局および西日本支局内に設定)で、2回に限り再試験を受けることができる
- 再試験の受講可能期間は、最初に受験した日から6カ月間
- 6カ月を超えた場合は、再試験を受ける資格が失効する。資格取得を希望する場合は再び新規の申込をし、受講料と申込書類を改めて準備する
- 再試験の受験料は、1回につき¥5,500(税込)
- 廃棄物処理施設技術管理者の資格取得がおすすめな人
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- 環境環境保護に関心が高い人
- 改正や変更がされていく法律や制度の学習意欲がある人
- 社会に必要とされる仕事で安定した収入を得たい人
- 大学や大学院で化学系の課程を修了した人
- 講習開催地(講習開催地:北海道・宮城・神奈川・愛知・大阪)の場合
- 一般財団法人日本環境衛生センター 東日本支局 研修事業部
- 講習開催地(広島・福岡)の場合
- 一般財団法人日本環境衛生センター 西日本支局 環境事業部 企画・研修課
廃棄物処理施設技術管理者の資格を取れる人はどんな人?(取得条件・受験資格)
廃棄物処理施設技術管理者の資格を取得するには、規則で定められている学歴や経験、資格等の要件を備え、講習を修了する必要があります。
廃棄物処理施設技術管理者試験の受講資格
講習は2種類に分けられており、「基礎・管理課程講習」は20歳以上であれば、誰でも受講できます。「管理課程講習」を受講できるのは、下記の要件を満たす人です。
区分 | 学歴等 | 年数 |
---|---|---|
1 | 技術士法(昭和58年法律第25号)第2条第1項に規定する技術士(化学部門、水道部門又は衛生工学部門に係る第2次試験に合格したものに限る。) | 廃棄物処理実務経験年数不問 |
2 | 技術士法第2条第1項に規定する技術士(上欄「1」に該当する者を除く) | 合格後の廃棄物処理実務経験年数1年以上 |
3 | 廃棄物処理法第20条に規定する環境衛生指導員の職にあった者 | 環境衛生指導員として2年 |
4 | 学校教育法に基づく4年制大学の理学、薬学、工学、農学の課程(相当する課程を含む)で「衛生工学または化学工学等の科目」を履修し、卒業した者 | 卒業後の廃棄物処理実務経験年数2年以上 |
5 | 学校教育法に基づく4年制大学の理学、薬学、工学、農学の課程(相当する課程を含む)を卒業した者で、上欄「4」に示す科目を履修しなかった者 | 卒業後の廃棄物処理実務経験年数3年以上 |
6 | 学校教育法に基づく短期大学若しくは高等専門学校の理学、薬学、工学、農学の課程(相当する課程を含む)で「衛生工学または化学工学等の科目」を履修し、卒業した者 | 卒業後の廃棄物処理実務経験年数4年以上 |
7 | 学校教育法に基づく短期大学若しくは高等専門学校の理学、薬学、工学、農学の課程(相当する課程を含む)を卒業した者で、上欄「6」に示す科目を履修しなかった者 | 卒業後の廃棄物処理実務経験年数5年以上 |
8 | 学校教育法に基づく高等学校において土木科、化学科またはこれらに相当する学科を修めて卒業した者 | 卒業後の廃棄物処理実務経験年数6年以上 |
9 | 学校教育法に基づく高等学校を卒業した者(大学の文系卒業者はこの区分に入ります) | 卒業後の廃棄物処理実務経験年数7年以上 |
10 | 学歴不問 | 廃棄物処理実務経験年数10年以上 |
11 | 平成4年度から平成12年度の厚生大臣指定廃棄物処理施設技術管理者講習の修了者 | |
12 | 平成3年度以前の厚生大臣認定廃棄物処理施設技術管理者講習の修了者 |
受講要件の補足ですが、短期大学卒業者として、水産大学校、防衛大学校、航空大学校、海上保安大学校、気象大学校、海技大学校、農業大学校、職業能力開発総合大学校、商船高等学校を卒業した人を含みます。各種専門学校、専修学校は、高等学校・高等専門学校に該当しません。高等学校卒業者として、大学入学資格検定試験に合格した人を含みます。
取得にかかる費用
受講料は、「基礎・管理課程講習」「管理課程講習」でそれぞれ異なります。さらに、「基礎・管理課程講習」 は受講コースによって受講料が変わります。
試験が不合格となった場合でも、以下の条件を満たす場合は再試験を受けることができます。
廃棄物処理施設技術管理者はどんな人におすすめの資格?
廃棄物処理施設技術管理者の資格を取得するためには、学歴は基本的には問われません。高卒でこの仕事に就いている人は、廃棄物処理施設技術管理者全体の約6割を占めています。大学や大学院に進み化学系の課程を修了した人であれば、その知識を活かすことができるでしょう。
また、廃棄物処理に関連する施設で働く場合、「廃棄物処理施設技術管理者」「特別管理産業廃棄物管理責任者」、「環境計量士」(日本環境測定分析協会)、「公害防止管理者」などの環境測定や公害防止の資格を取得している人は少なくありません。
給与は平均660万円で、平均年齢は46歳です。全国各地で必要とされている職業であり、専門知識や技術が求められるため、安定した仕事といえます。
どこが管理している資格なの?(問い合わせ先・管理団体)
廃棄物処理施設技術管理者の資格や講習を管理・実施しているのは、一般財団法人 日本環境衛生センターです。講習のスケジュールや開催場所、申込については下記HPから確認しましょう。
講習についての問い合わせは、講習開催地によって東日本支局と西日本支局で管理が異なります。
まとめ:廃棄物処理施設技術管理者は人と環境に貢献できる仕事
廃棄物処理施設技術管理者の仕事は、廃棄物を適切に処理するための指示や監督、立案など幅広い専門知識を必要とします。廃棄物に関する規則や法律は改正されるため、資格取得後も勉強が求められます。その分、人や環境を守るやりがいがあり、全国的にニーズの高い仕事といえます。責任をもって管理者としてキャリアアップを目指す人は資格取得を検討してみてくださいね。
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