土地や建物などの経済価値を鑑定する国家資格が、「不動産鑑定士」です。今回はこの不動産鑑定士とはどんな資格か、具体的な仕事内容や資格の取得方法、取得のメリットなどを紹介していきます。
不動産鑑定士とは、どんな資格?
不動産鑑定士とは、依頼人の「土地を売りたい・貸したい・贈与したい」などの要望に応じて土地・建物といった不動産を鑑定し、経済価値を判定しその結果と価額を提示する専門家です。国家資格の一つで、不動産の鑑定だけでなく、法律に関する相談への対応や、土地の有効な使い方についてのコンサルティングも行います。
不動産鑑定士の具体的な仕事内容は、以下の通りです。
- 不動産鑑定評価業務
- 登記情報や固定資産評価といった公的情報や関係法令を調査するとともに、現地調査や聞き込みなどのフィールドワークも行い、不動産情報を収集・解析します。その上で「不動産鑑定評価書」に取りまとめ、土地や建物の価値を的確に評価します。
- コンサルティング業務
- 立地や周辺環境、建物の構造、時代ごとの需要などを調査し、不動産を所有するオーナーに対し最適な利用法をアドバイスします。
学ぶ知識・技術
不動産鑑定士になるには、不動産鑑定士試験に合格した後、1〜2年の実務修習を経る必要があります。この過程で、下記の知識・技術を習得することになります。
- 短答式試験(マークシート)
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- 不動産に関する行政法規
- 不動産の鑑定評価に関する理論
- 論文式試験
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- 民法
- 経済学
- 会計学
- 不動産の鑑定評価に関する理論
- 実務修習
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- 実務に関する講義:全16科目をeラーニング形式にて受講
- 基本演習:グループ等によるゼミナール形式の講義
- 実地演習:指導鑑定士のいる鑑定業者または指定大学機関で、全13類型の鑑定評価報告書を作成
不動産鑑定士で目指せる職業、就職先は?
不動産鑑定士の主な勤務先は、「不動産系」と「金融系」またはコンサルティング会社です。
- 不動産鑑定事務所
- 国や都道府県、市町村、裁判所といった公的機関、あるいは法人企業、資産運用を検討している個人からの依頼を受け、物件調査から鑑定評価書の作成を行います。
- 不動産会社の鑑定部門
- 外部あるいは自社の物件の鑑定を行います。
- 大手金融機関の担保評価部門
- 担保物件にいくらの市場価値があり、売却した場合にいくら回収できる見込みがあるのかを評価し、貸し付ける金額の妥当性を検証します。
- 大手金融機関の信託部門
- 物件ごとに最適な運用方法を見出し、得られる利回りを最大化します。
- コンサルティング会社
- 弁護士や司法書士、税理士などと連携し、企業や不動産オーナーが保有する資産の最適な運用方法を提案します。
不動産鑑定士になるとどんな悩みが解決できる?
不動産鑑定士の知識やスキルがあると、下記のような悩み・問題を解決できます。
- 不動産鑑定士が解決できること
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- 不動産鑑定を通じて価値を保証することで、不動産のやり取り時の資金計画を立てやすくする
- 不動産の適正な価格評価を通して、一般の不動産取引や、銀行が融資を行う際の担保評価、不動産投資信託の証券価額など社会経済を安定させる
- 相続税や固定資産税の算出根拠となる「公示価格」を決定することで、相続時などのトラブルを未然に予防する
不動産鑑定士の資格を取れる人はどんな人?(取得条件・受験資格)
不動産鑑定士になるには、国家試験に合格する必要がありますが、試験は学歴や年齢を問わずどなたでも受験可能です。
試験は、短答式試験と論文式試験の2段階選抜式で行われ、短答式試験に合格した人だけが論文式試験を受験できます。 そして論文式試験に合格した後、1年あるいは2年の「実務修習」を受け、終了考査をパスすると、晴れて不動産鑑定士としての業務が可能になります。
取得にかかる費用
不動産鑑定士試験の受験、また資格登録にかかる費用は、下記の通りです。
- 受験手数料
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- 書面申請:13,000円
- 電子申請:12,800円
- 登録手数料
- 60,000円
不動産鑑定士はどんな人におすすめの資格?
不動産鑑定士は、「土地の価格を決定する」という重要な役割を担う仕事なので、下記のような人に向いている職種といえます。
- 論理的に計算ができる人
- 責任感のある人
- 鑑定評価内容をわかりやすくクライアントに説明できる人
- デスクワークだけでなく、実際に現地を訪れて不動産調査をするフィールドワークが苦ではない人
また、下記のような資格を取得している人は、不動産鑑定士のダブルライセンスによってキャリア&給与アップが見込めます。
- 不動産鑑定士の資格取得がおすすめな人
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- 公認会計士
- 宅地建物取引士
- 土地家屋調査士
- 建築士
どこが管理している資格なの?(問い合わせ先・管理団体)
不動産鑑定士の国家試験を実施し、資格を管理しているのは「国土交通省」です。短答式試験は例年5月、論文式試験は例年8月頃に実施されますが、その年の試験日程や会場、受験申請に必要な手続きなどは下記のHPからご確認ください。
まとめ:年収も社会的ニーズも高い不動産鑑定士。誰でも試験を受けられるのが魅力!
不動産鑑定士の年収は500万円台が最も多く、平均的な給与水準より高い職種といえます。短答式試験の合格率は30%前後、論文式試験は14%前後と狭き門ですが、試験は誰でも受けることができ、また高齢化社会で相続対策のニーズも今後増えることが期待できます。手に職をつけたい人は、取得に向けてぜひトライを。
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