人が病気になると病院で検査や治療を受けるように、病気になった樹木にも治療が必要です。樹木のお医者さんを「樹木医」と呼びますが、樹木医はどのような仕事を行うのでしょう。
この記事では樹木医の資格取得までの流れ、学習内容、就職先などについて解説します。
樹木医とは、どんな資格?
樹木医とは、樹木が病気になるのを防いだり、樹木を健康的な状態で育てたりするための、樹木の保護・育成に関する知識の普及や指導を行う専門です。「樹木のお医者さん」とも呼ばれる資格で、下記の仕事を行います。
- 樹木の診断
- 樹木の病気予防
- 病気にかかった樹木の治療
- 災害による樹木の被害調査
- 樹木被害の抑制
- 後継機の保護・育成
- 植樹の設計管理・土壌の管理
- 剪定など樹木の維持管理 など
樹木医が扱うのは、山林に生えている木や里山の雑木林、公園の樹木、街路樹、神社のご神木、個人宅の樹木など幅広い樹木です。
樹木医になることを目指す「樹木医補」という資格も設置されています。
- 樹木医補とは
- 樹木学や病虫学などの基礎的な知識・技術を所定の大学などで習得した学生が対象。平成16年度以降、樹木医補資格養成機関の登録を受けた年度以降の卒業生
学ぶ知識・技術
樹木医になるためには、下記のステップが必要です。
- 公募
- 第一次審査(筆記試験・業績審査)
- 第二次審査(研修・資格検査・面接)
- 登録
1.公募
樹木医研修受講者選抜試験申込書と業務経歴証明書、その他関連書類を提出します。
2.第一次審査
樹木医になるためには樹木医研修を受講する必要があります。ただし受講できるのは、選抜試験である第一次審査を通過した合格者のみです。第一次審査では、90~100名の研修受講者が選抜されます。第一次審査では、樹木医に必要な知識及び技術が問われます。
- 択一式試験(午前90分間)
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- 樹木医が備えるべき一般教養(倫理を含む)
- 樹木医研修科目に関係する専門分野
- 高等学校の生物の知識 など
- 論述式試験(午後90分間)
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- 樹木医として総合的にバランスのとれた知識・技術・文章能力を審査(3問)
3.第二次審査
第二次審査は、研修・資格検査・面接が行われます。
- 研修科目
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- 樹木の分類 講義
- 樹木の生理 講義
- 樹木・樹林の生態 講義
- 樹木の構造と機能 講義
- 樹木保護に関する制度 講義
- 土壌の診断 講義と実習
- 病害の診断と防除 講義と実習
- 虫害の診断と防除 講義と実習
- 腐朽病害の診断と対策 講義と実習
- 大気汚染害の診断と対策 講義
- 気象害の診断と対策 講義
- 後継樹木の育成と遺伝子保存 講義
- 幹の外科技術と機器による診断 講義と実習
- 樹木の移植法 講義
- 植栽基盤の調査・判定と土壌改良 講義と実習
- 総合診断(診断に必要な知識と実践) 講義と実習
研修は、『最新・樹木医の手引き 改訂4版』を事前に学習していることを前提として講義が行われるため、事前の学習が必要です。
- 資格検査(筆記試験)
- 樹木医として求められる高度の専門的知識及び技術を習得しているか審査される
- 面接(研修最終日に実施)
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- 研修科目16科目について、筆記試験で樹木医としての適性などを判定
- 筆記試験の不合格科目数が3科目以上の場合は不合格
- 筆記試験とは別に、樹種の識別に関する適性試験を実施
樹木医で目指せる職業、就職先は?
樹木医として登録をすると、樹木医として認定されます。樹木医登録者名簿は、林野庁、国土交通省緑政部門、環境省、都道府県、政令指定都市、東京都23区(特別区)緑化担当部局(林務、公園緑地、道路緑化管理)、都道府県教育委員会、都道府県緑化センター等に送付され、仕事の依頼がされます。
就職先としては、造園会社や植栽管理会社、緑化関連会社などが多いでしょう。樹木医として、森林や街路樹、個人宅の樹木などを担当します。
樹木医になるとどんな悩みが解決できる?
樹木医になると下記の悩みや課題の解決に貢献できます。
- 樹木医が解決できること
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- 樹木が本来持っている生命力を回復させる
- 街の緑化をサポートする
樹木医の資格を取れる人はどんな人?(取得条件・受験資格)
樹木医の研修に参加するためには、下記の要件を満たす必要があります。
- 樹木の調査、計画・設計監理、維持管理作業や診断・治療など樹木の保護・育成に関する業務経験が5年以上(令和5年度より、経験年数が7年から5年に短縮)
- 樹木医研修受講者選抜試験(第一次審査)に合格している
- 業務経歴とは
- 樹木の調査・研究、診断・治療、保護・育成・管理、公園緑地の計画・設計・設計監理、緑化樹木や果樹の生産等に関する実務あるいは研究に従事した期間
- 業務経歴の例
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- 造園業、植木生産業、農業(果樹栽培等)、林業(伐木作業は除く)などの従事者
- 農林業・緑化関係(公園緑地計画・設計・設計監理含む)の公益法人、会社などの役職員
- 国、地方公共団体の農林・緑化関係職員
- 大学及び研究所の教職員、研究員及び大学院生(林学、農学、造園学、園芸学など)
- 農林高等学校・専門学校の教職員で、上記に示す業務経歴に関する科目を指導している者
過去に、上記の職種において実績のある方も対象となります。上記に当てはまらない職業の場合は基本的に応募できませんが、事業内容によっては応募可能なこともあります。
- 樹木医補の場合
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- 樹木医補の資格を有している
- 認定後の業務経歴が1年以上
- 樹木医研修受講者選抜試験(第一次審査)に合格している
樹木医の登録更新
樹木医として登録された後は、5年ごとの登録更新が義務化されています。登録更新は、樹木医の対外的な信頼性を確保し、確かな技術で社会に貢献する責務を果たすことを目的として開始されました。登録更新は、樹木医CPD100単位以上/5年の取得が要件です。
取得にかかる費用
樹木医の資格取得にかかる費用は下記のように定められています。
- 受験手数料(樹木医補の認定を受けていない場合)
- 18,000円(税込)
- 受験手数料(樹木医補の認定を受けている場合)
- 15,000円(税込)
樹木医補は受験手数料の優遇措置を受けることができますが、樹木医補認定証の写しを添付する必要があります。
書類審査を受けたが受験資格がないと判断された場合は、書類審査に係る審査料(3,000円)と返金に必要な手数料を除いた額が返金されます。
- 研修受講料
- 110,000円(税込)
研修では、上記のほか往復の交通費、宿泊費など(自己負担)がかかります。
- 研修テキスト代
- 『最新・樹木医の手引き 改訂4版』(2014年6月発行):8,500円(税抜)
樹木医の試験と研修の日程
樹木医の第一次審査は例年7月に実施されます。第一次審査の合格者は、2週間の日程で研修を受講していただきます。
原則として、1次審査合格で得た研修の受講資格を次年度に研修を持ち越すことはできません。研修は2週間にわたって行われますので、現在の仕事のスケジュールを調整する必要があるでしょう。
樹木医はどんな人におすすめの資格?
樹木医は、専門的な知識と技術によって木や林の生命や健康を守る仕事です。樹木のためになるのはもちろん、環境保護、街の景観保護、緑化のサポート、個人の大切な思い出や庭の保護など、やりがいが大きい仕事といえます。
樹木に関する仕事をしている人で、樹木の生命や健康を守る知識をより深めたい人にもおすすめの仕事です。
- 樹木医の資格取得がおすすめな人
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- 樹木や山など自然が好きな人
- 自然に囲まれて仕事をしたい人
- 自然環境を守るという責任感が強い人
- 造園業など樹木に関する仕事をしている人
どこが管理している資格なの?(問い合わせ先・管理団体)
樹木医の資格を管理しているのは、一般財団法人 日本緑化センターです。樹木医は日本緑化センターによって商標登録されています。
試験の詳細や申込については下記HPから確認してください。
まとめ:樹木医は環境保護や緑化サポートなどやりがいが大きな仕事!
樹木のお医者さんと呼ばれる樹木医は、樹木を守る仕事を通して環境保護や街の緑化などさまざまな社会貢献ができます。資格取得までには試験合格や2週間の研修参加などをクリアしなくてはいけませんので、事前の勉強ではスケジュール調整をするのが大切ですよ。
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