病院や介護の現場などでリハビリテーションを行う専門職が「作業療法士」です。今回はこの作業療法士とはどんな仕事か、理学療法士との違いや就職先、資格取得によるメリットなどを解説していきます。
作業療法士とは、どんな資格?
作業療法士とは、障がいや怪我のある人、高齢により心身の機能が衰えた人の機能回復・維持を目的に、リハビリテーションをするエキスパートです。理学療法士と同じく国家資格ですが、理学療法士が基本的な機能を回復させるのに対し、作業療法士は「日常生活をスムーズに送るための応用力」をつけるサポートを行います。
具体的な仕事内容は、下記のとおりです。
- 基本的動作・能力の改善
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- 筋力を増強させ、日常生活に必要な運動能力を高める
- レクリエーションを行い、感情表現を豊かにする
- 応用的動作・能力の改善
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- 身辺動作・家事動作の訓練(食事やトイレ、家事など)
- 趣味動作(手芸や木工、将棋、園芸など)を通じて、豊かな生活が送れるようサポートする
- 社会的動作・能力の改善
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- 職業訓練のサポート
- 通勤時の交通機関の利用のサポート
- 福祉用具指導・住環境の整備
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- 車椅子や歩行器といった福祉用具の選び方、使い方の指導
- バリアフリーが施されていない家でのリフォームなど、環境づくりの整備
作業療法士になるには国家試験に合格する必要があり、試験では下記のような知識・技術が問われます。
学ぶ知識・技術
作業療法士国家試験は、「一般問題」と「実地問題」の2つから構成されます。
- 一般問題
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- 解剖学
- 生理学
- 運動学
- 病理学概論
- 臨床心理学
- リハビリテーション医学(リハビリテーション概論を含む)
- 臨床医学大要(人間発達学を含む)
- 作業療法
- 実地問題
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- 運動学
- 臨床心理学
- リハビリテーション医学
- 臨床医学大要(人間発達学を含む)
- 作業療法
これらの筆記試験は午前・午後に実施され、それぞれ100問ずつ出題されます(各2時間40分)。いずれも一般問題が80問・実地問題が20問です。
合格基準は年によって変動しますが、実地問題で35%、総得点で60%の得点がおおよその基準となっています。
作業療法士で目指せる職業、就職先は?
高齢化社会の日本において、作業療法士は非常に将来性のある仕事であり、「就職先が少なくて困る」ということはほぼありません。ただ、どんな患者さんの治療に携わりたいか(身体障がい者、精神障がい者、高齢者など)によって就職先はかなり異なっていきます。
- 身体障がい領域での就職先
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- 総合病院
- 大学病院
- 整形外科病院
- リハビリテーションセンター
- 保健所
- 保健センター
- 身体障がい者福祉センター
- 精神障がい領域での就職先
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- 精神科病院
- 精神保健福祉センター
- 精神障がい者支援センター
- 精神科のデイケア
- 精神障がい通所授産施設
- 老年期障がい領域での就職先
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- リハビリテーションセンター
- 療養型医療施設
- 老人保健施設
- 在宅介護支援センター
- 特別養護老人ホーム
- 老人デイサービスセンター
- 訪問看護ステーション
- 訪問リハビリテーション
- 発達障がい領域での就職先
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- 小児科の病院
- 児童福祉施設
- 養護学校
- 母子通園施設
- 特別養護老人ホーム
- 児童デイサービス
作業療法士になるとどんな悩みが解決できる?
作業療法士は、リハビリを通じて患者さんが日常生活をスムーズに送れるようにし、生きがいを作り出すサポートをする支援のスペシャリストです。作業療法士の手によって、具体的には下記のような悩みが解決できます。
- 基本的動作のリハビリテーション
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- 麻痺などで身体が動かせない人の、関節の動きや筋力を回復させる
- 応用的動作のリハビリテーション
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- 「食事をする」「顔を洗う」「料理をする」「字を書く」等の生活上必要な動作ができない人へのサポート
- 認知症患者向けのリハビリテーション
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- 脳の機能低下が下がらないよう、現状維持や進行を食い止める
- 発達障がいの子供向けのリハビリテーション
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- 物の使い方を教える、人間関係の築き方のアドバイスなど
作業療法士の資格を取れる人はどんな人?(取得条件・受験資格)
作業療法士の国家試験を受けるには、指定された学校・養成施設で作業療法関連の専門知識・技術を習得し、卒業していることが必要です。詳しい受験資格は下記のとおりです。
作業療法士の受験資格
- 学校教育法(昭和22年法律第26号)第90条第1項の規定により大学に入学することができる者(法第12条第1号の規定により文部科学大臣の指定した学校が大学である場合において、当該大学が学校教育法第90条第2項の規定により当該大学に入学させた者又は法附則第6項の規定により学校教育法第90条第1項の規定により大学に入学することができる者とみなされる者を含む。)であって、文部科学省令・厚生労働省令で定める基準に適合するものとして、文部科学大臣が指定した学校又は都道府県知事が指定した作業療法士養成施設において、3年以上作業療法士として必要な知識及び技能を修得したもの
- 外国の作業療法に関する学校若しくは養成施設を卒業し、又は外国で作業療法士の免許に相当する免許を得た者であって、厚生労働大臣が(1)に掲げる者と同等以上の知識及び技能を有すると認定したもの
- 法施行の際(昭和40年8月28日)現に文部大臣又は厚生大臣が指定した学校又は施設において、作業療法士となるのに必要な知識及び技能を修業中であって、法施行後に当該学校又は施設を卒業した者
取得にかかる費用
作業療法士国家試験の受験料は、10,100円です。
作業療法士はどんな人におすすめの資格?
作業療法士は、患者に寄り添い、心身の改善に前向きになれるようサポートする仕事です。よって、下記のような性格の人は作業療法士向きといえるでしょう。
- 他人に寄り添える人
- 患者さんは身体の問題や不自由さから、リハビリが辛く前向きになれないことも多いです。そんな弱った患者さんの気持ちに寄り添う姿勢は、作業療法士に欠かせません。
- 根気強い人
- リハビリが辛かったり、やる気になれなかったりする患者さんを大きな心で受け止め、根気強く向き合うことが大切です。
- 観察力がある
- 患者さんの体の異変や精神的な落ち込みなど、小さな変化に気づいてリハビリのプログラムを決めていくことも重要です。
- 好奇心旺盛
- 作業療法士は、日常生活の動作をリハビリに取り入れ、患者さんが楽しんでプログラムに取り組めるよう工夫することも必要です。そのため、遊び心がある人も作業療法士に向いているでしょう。
どこが管理している資格なの?(問い合わせ先・管理団体)
作業療法士国家試験の実施・管理を行っているのは「厚生労働省(地方厚生局)」です。試験は例年2月下旬に1回だけ実施されますが、その年の試験日程、受験申請期間、必要な手続きや書類などは厚生労働省のHPからご確認ください。
まとめ:「作業療法士」は社会的ニーズが高く、取得難易度も低いおすすめの国家資格!
障がいなどで心身が不自由になってしまった人が、スムーズに日常生活を送れるようサポートする「作業療法士」は、就職先が幅広く、高齢化社会の今だからこそやりがいを感じられる仕事です。例年の合格率は70%後半と、取得しやすい国家資格なのも魅力。人を喜ばせたり、支援したりするのが好きな方は、ぜひ資格取得に向けてチャレンジをしてみてはいかがでしょうか。
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