船で運ばれた大きな荷物や重い荷物を、クレーンやデリックを使って陸へと渡す作業がありますが、この荷役作業をするのに必要なのが揚貨装置運転士の国家資格です。
揚貨装置運転士は、港湾での荷役作業で必要とされる知識やスキルを持つ存在です。この記事では、資格試験の難易度や受験費用、揚貨装置運転士資格取得者の平均年収などについて説明します。
揚貨装置運転士とは、どんな資格?
揚貨装置運転士とは、船舶に設置された制限荷重が5t以上の揚貨装置(クレーンやデリック)を運転するために必要な国家資格です。揚貨装置とは船舶に取り付けられたクレーンやデリックの設備を指し、船から陸または陸から船への荷物の積み替えをする荷役作業で使われています。港側に取り付けられた装置は揚貨装置とは呼びません。
港湾での船上作業を担うという点が特徴的であり、陸上でのクレーン等の操作よりもバランスを取ることが難しいと考えられています。そのため揚貨装置運転士は港湾での荷役作業で重宝される存在です。移動式クレーン資格やフォークリフト運転技能者に加えて、揚貨装置運転士の資格を取得していると、港湾での荷役作業で従事できる業務が広がります。
学ぶ知識・技術
揚貨装置運転士の資格は、試験に合格することで取得できます。試験には学科と実技があります。
- 学科試験
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- 揚貨装置に関する知識:10問(30点)
- 関係法令:10問(20点)
- 原動機及び電気に関する知識:10問(20点)
- 揚貨装置の運転のために必要な力学に関する知識:10問(30点)
- 実技試験
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- 揚貨装置の運転
- 揚貨装置の運転のための合図
学科試験の所要時間は2時間30分ですが、学科試験で2科目が免除される場合は1時間15分となります。また、所有する資格によっては学科試験が全て免除または実技試験が全て免除、あるいは一部免除されます。
免除要件と免除科目、免除の申請に必要な書類は下記となります。
- クレーン・デリック運転し(クレーン限定、床上運転式クレーン限定を含む)、旧クレーン(床上運転式限定を含む)、旧デリック又は移動式クレーン運転士免許を有する者
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- 学科:原動機及び電気に関する知識、力学に関する知識
- 実技:運転のための合図
- 免許証の写しを提出すること
- 揚貨装置運転実技教習を修了した者で、その修了した日から起算して1年以内のもの
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- 実技試験全部免除
- 実技試験全部免除
- 実技教習修了証の原本またはは写しを提出すること
- 揚貨装置の学科試験に合格した者で、その学科試験が行われた日から起算して1年以内のもの
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- 学科試験全部免除
- 免許試験結果通知書の原本または写しを提出すること
- 床上操作式クレーン運転技能講習を修了した者
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- 実技:運転のための合図
- 技能講習修了証の写し
- 小型移動式クレーン運転技能講習を修了した者
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- 実技:運転のための合図
- 技能講習修了証の写し
- 玉掛け技能講習を修了した者
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- 実技:運転のための合図
- 技能講習修了証の写し
学科試験の合格率は70~75%程です。実技試験の合格率は90%を超えており、比較的取得しやすい国家資格といえるでしょう。
揚貨装置運転士で目指せる職業、就職先は?
揚貨装置運転士の資格を取得すると、港湾関係の就職や転職が見込めます。移動式クレーン運転士やフォークリフト運転技能者の資格も保有している場合は、それらの資格取得者であることも自己アピールとして伝えましょう。
揚貨装置運転士になるとどんな悩みが解決できる?
揚貨装置運転士になると、船上でのクレーン等を使用した運搬作業ができるため、次のような悩み・問題の解決に貢献できるようになります。
- クレーン・デリック運転士が解決できること
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- 船上での荷役作業において、たしかな知識と技術をもって従事できる
- 船に積んだ大きくて重い荷物の運搬ができる
揚貨装置運転士の資格を取れる人はどんな人?(取得条件・受験資格)
揚貨装置運転士の国家試験受験には、学歴や経験、年齢は問われません。受験に伴い本人確認証明書の添付が必要です。
試験に合格した後に、所在地の都道府県の労働局長への申請をすると免許が交付されます。ただし免許が交付されるのは18歳以上からです。
取得にかかる費用
揚貨装置運転士の国家試験にかかる受験料は、学科試験が6,800円、実技試験が11,100円です。
揚貨装置運転士はどんな人におすすめの資格?
揚貨装置運転士は、次のような人に取得がおすすめの資格です。
- 揚貨装置運転士の資格取得がおすすめな人
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- 港湾関連業界の運送や荷役業務への就職や転職を希望する人
- 乗り物の運転が好きで、集中力や注意力がある人
- 移動式クレーン運転士やフォークリフト運転技能者の資格を持ち、スキルの幅を広げたい人
- 収入が安定した仕事に就きたい人(平均年収は男性が約510万、女性が約400万)
どこが管理している資格なの?(問い合わせ先・管理団体)
揚貨装置運転士の国家試験を実施しているのは「公益財団法人 安全衛生技術試験協会」です。その年の試験日程や会場、受験申請に必要な手続きについては、下記のHPからご確認ください。
また、試験科目の免除にもつながる各種教習・講習については「一般社団法人 港湾労働安全協会」で実施・申込受付しています。気になる方はこちらもチェックしてみてください。
まとめ:クレーン関連の資格を複数取得して仕事の幅を広げるのもおすすめ
揚貨装置運転士は、船上でのクレーン等の操作を行うことができるのが大きな魅力です。港湾での荷役作業で必要とされる資格であり、移動式クレーン等の陸上荷役作業に関する資格も取得していれば、幅広い業務に携わることができます。スキルアップを考えている人は資格取得にチャレンジしてみてくださいね。
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