工事担任者(電気通信設備工事担任者)は、通信工事を行うために必要な国家資格です。工事担任者は、アナログ電話回線やデジタルデータ回線などに、電話機などを接続する工事の実施・監督に必要な人材となります。
この記事では工事担任者の資格の種類、資格取得のメリット工事担任者ができることなどを解説します。
工事担任者とは、どんな資格?
工事担任者とは、電気通信回線設備の末端設備や自営電気通信設備の接続工事を行ったり、これらの工事を監督したりする専門職です。電気通信事業法に基づいて設置されている国家資格で、正式名称は「電気通信設備工事担任者」といいます。
工事担任者はネットワーク関連の工事には必要不可欠な資格で、電話回線を電柱から家やオフィスに引き込む工事や、屋内でのモジュラーまでの配線工事などが行えます。資格は以下の7種類に分かれており、資格の種類によっては光ファイバーなどインターネット関連の配線や引き込み工事も執り行えます。
- AI第一種
- まずAI種とは、アナログ電話およびISDNに接続する工事のことです。AI第一種では、アナログ伝送路設備に対して端末設備や自営電気通信設備を接続する工事、総合デジタル通信用設備に対して端末設備を接続する工事を行えます。
- AI第二種
- アナログ伝送路設備に対して、収容される電気通信階数が50以下かつ内線数200以内の端末設備の設置工事、また総合デジタル通信設備に対して通信回線数64kbps換算で50以下の端末設備工事を行えます。
- AI第三種
- アナログ伝送路設備に対して、収容される電気通信回線が1のものだけの端末設備の設置、また総合デジタル通信用設備に対しては、回線数が基本インターフェースで1のものだけの工事を行えます。
- DD第一種
- DD種とは、ブロードバンドインターネットやIPネットワークなどのデジタル回線に接続する工事のことです。DD第一種では、デジタル伝送路設備に対して、総合デジタル通信用設備に端末設備を接続するケースを除いた端末設備の接続工事を行います。
- DD第二種
- デジタル伝送路設備に対して、端末設備を接続する工事を行えます(接続点におけるデジタル信号の入出力速度が100Mbps以下のものが対象)。
- DD第三種
- デジタル伝送路設備に対して、接続点におけるデジタル信号の入出力速度が1Gbps以下でインターネットに接続する回線だけを対象とした工事を行えます。
- AI・DD総合種
- アナログ伝送路設備とデジタル伝送路設備に端末設備を接続する工事を行えます。
学ぶ知識・技術
工事担任者の資格を取得するには、工事担任者試験に合格する必要があります。合格するには、
- 電気通信技術の基礎
- 端末設備の接続のための技術及び理論
- 端末設備の接続に関する法規
の3種類の知識・技術を習得しておかなければなりませんが、資格の種類によって試験内容やレベルは下記のように異なります。
AI第一種・第二種
- 電気通信技術の基礎
-
- 電気工学(電気回路、電子回路、論理回路)の基礎
- 電気通信(伝送理論、伝送技術)の基礎
- 端末設備の接続のための技術及び理論
-
- 端末設備の技術
- 総合デジタル通信の技術
- トラヒック理論
- 情報セキュリティの技術
- 接続工事の技術
- 端末設備の接続に関する法規
-
- 電気通信事業法及びこれに基づく命令
- 有線電気通信法及びこれに基づく命令
- 不正アクセス行為の禁止等に関する法律
- 電子署名及び認証業務に関する法律及びこれに基づく命令
AI第三種
- 電気通信技術の基礎
-
- 電気工学(電気回路、電子回路、論理回路)の初歩
- 電気通信(伝送理論、伝送技術)の初歩
- 端末設備の接続のための技術及び理論
-
- 端末設備の技術
- 総合デジタル通信の技術
- 情報セキュリティの技術
- 接続工事の技術
- 端末設備の接続に関する法規
-
- 電気通信事業法及びこれに基づく命令
- 有線電気通信法及びこれに基づく命令
- 不正アクセス行為の禁止等に関する法律
DD第一種・第二種
- 電気通信技術の基礎
-
- 電気工学(電気回路、電子回路、論理回路)の基礎
- 電気通信(伝送理論、伝送技術)の基礎
- 端末設備の接続のための技術及び理論
-
- 端末設備の技術
- ネットワークの技術
- 情報セキュリティの技術
- 接続工事の技術
- 端末設備の接続に関する法規
-
- 電気通信事業法及びこれに基づく命令
- 有線電気通信法及びこれに基づく命令
- 不正アクセス行為の禁止等に関する法律
- 電子署名及び認証業務に関する法律及びこれに基づく命令
DD第三種
- 電気通信技術の基礎
-
- 電気工学(電気回路、電子回路、論理回路)の初歩
- 電気通信(伝送理論、伝送技術)の初歩
- 端末設備の接続のための技術及び理論
-
- 端末設備の技術
- ネットワークの技術
- 情報セキュリティの技術
- 接続工事の技術
- 端末設備の接続に関する法規
-
- 電気通信事業法及びこれに基づく命令
- 有線電気通信法及びこれに基づく命令
- 不正アクセス行為の禁止等に関する法律の大要
AI・DD総合種
- 電気通信技術の基礎
-
- 電気工学(電気回路、電子回路、論理回路)の基礎
- 電気通信(伝送理論、伝送技術)の基礎
- 端末設備の接続のための技術及び理論
-
- 端末設備の技術
- 総合デジタル通信の技術
- トラヒック理論
- ネットワークの技術
- 情報セキュリティの技術
- 接続工事の技術
- 端末設備の接続に関する法規
-
- 電気通信事業法及びこれに基づく命令
- 有線電気通信法及びこれに基づく命令
- 不正アクセス行為の禁止等に関する法律
- 電子署名及び認証業務に関する法律及びこれに基づく命令
工事担任者で目指せる職業、就職先は?
工事担任者は配線工事やネットワーク設備の設置ができるので、通信関連の現場で活躍できる資格といえます。具体的には、下記の現場での就職が見込めるでしょう。
- 電気通信系の企業
- 通信設備工事を行う企業
- 電気設備工事を行う企業
工事担任者になるとどんな悩みが解決できる?
工事担任者になると、下記のような悩み・問題の解決に貢献できます。
- 工事担任者が解決できること
-
- 工事を通じて光ファイバーに端末を接続したり、オフィスなどでインターネットを使う際のLAN構築をしたりすることで、利用者が大容量のデータ通信を楽しめるようにする
- 接続工事を行う上で必要な、設計・施行・安全・運用・保守面の管理をする
工事担任者の資格を取れる人はどんな人?(取得条件・受験資格)
工事担任者の資格を取得するには、工事担任者試験を受験する必要がありますが、この試験は学歴・年齢・性別・職歴を問わずどなたでも受験可能です。
取得にかかる費用
工事担任者試験の受験にかかる手数料は、8,700円です(1試験種別当たり)。
工事担任者はどんな人におすすめの資格?
工事担任者は、下記のような人に取得がおすすめの資格です。
- 工事担任者の資格取得がおすすめな人
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- インターネット回線や電話回線など、ネットワーク通信関係の仕事に興味がある人
- 電気工事士の資格を取得している人(同じ電気通信関連の職種であり、できる業務の幅が広がるため)
どこが管理している資格なの?(問い合わせ先・管理団体)
工事担任者の資格を管理し、資格試験を実施しているのは、「一般財団法人 日本データ通信協会」です。試験は例年、5月中旬と11月下旬の年に2回実施されますが、その年の試験日程や試験会場、受験申請に必要な手続きについては、下記の公式HPからご確認ください。
まとめ:ネットワーク関連の業界でキャリアアップするなら、工事担任者の資格取得を!
ネットワーク関連の業界に就職したい、あるいはこの業界でキャリアアップしたい人であれば、工事担任者はおすすめの資格です。どの種類の工事担任者試験もどなたでも受けられるので、興味のある人は講座や参考書などで試験対策をして、取得に向けてチャレンジしましょう。
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