全粉乳や食肉製品、添加物などの製造・加工をする施設で必要不可欠な存在が、「食品衛生管理者」です。食品衛生管理者が必要な職場の場合、有資格者は重宝されます。この記事では、食品衛生管理者の仕事内容や講習の内容、受講資格、資格取得のメリットなどを解説します。食品衛生管理者と食品衛生責任者ができることの違いもチェックしましょう。
食品衛生管理者とは、どんな資格?
食品衛生管理者とは、食品衛生法で定められた特定の食品を製造・加工する施設において、配置が義務付けられている国家資格です。施設における製造・加工の段階で、衛生上の考慮を必要とする食品や添加物などにおいて衛生管理を行います。
営業者は食品衛生管理者を配置した際、15日以内に都道府県知事(保健所)に届け出る決まりになっています。食品衛生管理者を置かなければならないのは、次の食品・添加物の製造・加工施設です。
- 全粉乳(1,400g以下の缶に収められるもの)
- 加糖粉乳
- 調整粉乳
- 食肉製品
- 魚肉ハム
- 魚肉ソーセージ
- 放射線照射食品
- 食用油脂(脱色または脱臭の過程を経て製造されるもの)
- マーガリン
- ショートニング
- 添加物(食品衛生法第11条第1項の規定により規格が定められたもの)
なお、似た名前の資格で「食品衛生責任者」がありますが、こちらは食品を製造加工する工場ではなく、食品を扱う営業や販売、全ての食品製造に関わる業者、つまり飲食店営業や食肉販売業・魚介類販売業・乳類販売業などに必要な資格です。
飲食店や販売店、食品製造施設など、営業許可施設ごとに1名置く必要があり、施設内で食中毒や食品衛生法違反が起こらないよう衛生管理を実施するのが、食品衛生責任者の役割となります。
学ぶ知識・技術
食品衛生管理者になるには、特定の資格を保有しているか、都道府県知事の登録を受けた講習会の課程を修了することが主な条件です。講習会では、以下のような知識・技術を習得していきます。
- 一般共通科目
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- 公衆衛生概論
- 食品衛生法及び関係法令
- 食品、添加物等の基準規格
- 化学概説
- 細菌学序論
- 毒物学
- 食中毒学
- 食品学(栄養学を含む)
- 施設における衛生管理
- 乳製品関係科目
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- 細菌学実習
- 乳製品検査法
- 乳製品検査実習
- 施設見学及び臨地訓練
- 食肉製品関係科目
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- 細菌学実習
- 食肉製品検査法
- 食肉製品検査実習
- 施設見学及び臨地訓練
- 添加物関係科目
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- 分析法概論
- 添加物鑑定法
- 添加物鑑定実習
- 施設見学及び臨地訓練
食品衛生管理者で目指せる職業、就職先は?
食品衛生管理者の資格があると、就職・転職先としては下記のような企業が候補になります。
- 食品メーカー
- 食品の製造加工工場
食品衛生管理者と食品衛生責任者ができることの違い
食品衛生管理者は前述したように、食品や添加物を製造・加工する施設で、食品の衛生を管理します。指定の食品を加工・製造する場合、食品衛生管理者の設置が義務づけられています。食品衛生管理者は、食品を扱うメーカーや調理施設で加工・製造の衛生管理を監督することができます。
食品衛生責任者は公的資格です。食品を調理・製造・加工・販売する施設であれば、食品衛生責任者の設置が必要です。たとえば飲食店やスーパーなどで、食品衛生責任者を選任して配置しなければいけません。これは、「食品衛生法に定められた営業許可」を受ける施設ごとに、専任で配置することが義務付けられているためです。
食品衛生責任者は、営業者の指示に従って食品衛生上の管理運営を行います。食品衛生責任者の資格に関する詳しい情報は、こちらの記事にまとめています。
食品衛生管理者になるとどんな悩みが解決できる?
食品衛生管理者になると、下記のような悩み・問題が解決できます。
- 食品衛生管理者が解決できること
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- 乳製品や食肉製品などの食品や添加物の製造・加工施設での衛生管理を通じて、食中毒を防止する
- 食品衛生法を遵守し衛生環境を守るよう、従業員を指導する
食品衛生管理者の資格を取れる人はどんな人?(取得条件・受講資格)
食品衛生管理者の国家資格を取得するには、下記の4つのいずれかに該当する必要があります。
- 医師、歯科医師、薬剤師、獣医師の資格を有する者
- 大学において医学、歯学、薬学、獣医学、畜産学、水産学または農芸化学の課程を修めて卒業した者
- 都道府県知事の登録を受けた食品衛生管理者の養成施設において、所定の課程を修了した者
- 特定の条件を満たした上で、都道府県知事の登録を受けた講習会の課程を修了し、資格を取得しようとする製造業(食肉製品又は添加物)において衛生管理の業務に3年以上の業務経験を有する者
4つめの「食品衛生管理者登録講習会」を受講するには、次の条件を満たす必要があります。
食品衛生管理者登録講習会の受講資格
- 高等学校や中学校を卒業した者、または厚生労働省令で定めるところによりこれらの者と同等以上の学力があると認められる者
- 食肉製品または添加物の製造、加工の衛生管理の業務に2年以上従事した者
取得にかかる費用
食品衛生管理者登録講習会の受講にかかる費用は、およそ30万円です(テキスト代含)。
高額な費用に思えるかもしれませんが、一般共通科目の受講期間は5ヶ月間、関係科目の受講期間は11日間と長期間なので、相応の受講料がかかることになります。
食品衛生管理者はどんな人におすすめの資格?
食品衛生管理者は、特定の食品を製造・加工する施設で活躍する職種であり、勤務先で選任されることで初めてその職に就くことができます。その点から、下記のような人に取得がおすすめの国家資格です。
- 食品衛生管理者の資格取得がおすすめな人
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- 食品メーカーや食品加工施設でキャリアアップしたい人(会社によっては職務手当がつくこともあります)
- 医師や薬剤師など要件を満たす資格保有者
どこが管理している資格なの?(問い合わせ先・管理団体)
食品衛生管理者の資格管理や、登録講習会を開催しているのは、「公益社団法人 日本食品衛生協会」あるいは「公益社団法人 全国食肉学校」です。主な受講地は東京と大阪に限られますが、最寄りの講習会場や日程、必要な申請手続きなどについては、下記の公式HPからご確認ください。
まとめ:食品衛生管理者は、食の安全を保つために不可欠な存在!
食品衛生管理者はあまり聞き慣れない職種名かもしれませんが、特定の食品を加工・製造する際に衛生状況を維持し、食の安全を保つために欠かせない縁の下の力持ち的な存在です。食品加工メーカーなどでキャリアアップを狙う人は、ぜひ資格の取得を!
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