交通事故を防ぐためにさまざまな対策が取られていますが、運転手でも歩行者でも老若男女問わず、一人ひとりが交通安全の意識を持つことが大切です。この記事では交通安全を担う専門家「交通心理士」を紹介。資格取得に必要な経験や交通心理士補資格認定試験について解説します。
交通心理士とは、どんな資格?
交通心理士とは、 日本交通心理学会(JATP)が認定する資格で、交通心理学に関する理論や人々の心理を理解し、交通安全における社会的な活動・貢献を担う人材です。
「主幹総合交通心理士」「主任交通心理士」「交通心理士」「交通心理補補」の4種類に分かれています。
- 主幹総合交通心理士
- 交通心理学関係の企業・団体の経営を担うことが期待される。各種団体から資源(人員やポスト、資金)を確保できる能力を有し、交通安全教育の企画や運営、マネジメントを行える
- 主任交通心理士
- 国土交通省第二種カウンセラー業務を行える。交通心理士補および交通心理士を教育や指導できる、交通心理学の学術的な研究を独力で行える能力を有する。専門的な統計や事例の分析能力を有し、事故の原因と対策を客観的に理解し、資源(人員や資金)を考慮して、各種団体に交通安全活動を提案できる など など
- 交通心理士
- 国土交通省第一種カウンセラー業務を行える。基本的な交通心理学の理論・論拠をもとに、科学的に交通安全に関する活動ができ、特定の属性(例えば、高齢者や子ども)および特性(例えば、危険敢行傾向)を有する交通参加者の心理を理解している。交通コーチングおよび交通カウンセリングの基本的な考え方および技法を理解し、座学などにより集団の教育ができる
- 交通心理士補
- 交通心理士になるための準備ができており、一般的な交通参加者(運転者や歩行者)の心理を科学的に理解している。個人の体験談などを通して、各種の事例について地区別研究会などで発表や議論ができる など
平成24年4月からは、国土交通省「自動車運送事業者に対する安全指導業務(適性診断・運行管理者に対する講習)への民間参入促進」措置によって、交通心理士の資格が「適性診断業務の第一種カウンセラー」に追加されました。
学ぶ知識・技術
交通心理学などの研究歴がある人は、経歴に応じて「交通心理士資格認定申請書」を提出し、審査を受けます。研究歴がない場合は、交通心理士補資格認定試験を受験し、まずは交通心理士補になることを目指してください。
交通心理士補になるためには、交通心理士補資格認定試験に合格する必要があります。試験は、下記の科目から出題されるほか、論述試験(600~800字)、面接試験が行われます。なお、試験前に実施される事前講習への参加が必須です。
- 交通心理士補資格認定試験の科目
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- ドライバーの応答特性
- 交通事故の心理学的問題
- 運転適性
- 交通発達心理学
- 交通カウンセリング
- コーチング
- 交通教育心理学
- 交通リスク心理学
- 交通社会心理学
不合格科目については、最初の受験から3年以内であれば追試験が実施されます。
なお、資格は5年の有効期限があります。更新を希望する場合は、講習会の参加や交通心理士として十分な活動を行っているかどうかの査定を受けます。
交通心理士で目指せる職業、就職先は?
交通心理士を取得したことが直接的に就職・転職に役立つとは言えませんが、自動車教習所、損害保険会社、輸送業界、行政・団体職員、各種運転手の仕事に役立つでしょう。
交通心理士を取得するとどんな悩みが解決できる?
交通心理士を取得すると、下記の悩みや課題の解決に貢献できます。
- 交通心理士が解決できること
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- 交通事故の防止を推進する
- 運転手の不安に寄り添い、アドバイスする
- 交通安全における安心をサポートする
交通心理士の資格を取れる人はどんな人?(取得条件・受験資格)
交通心理士の資格を取得するには、まずは日本交通心理学会(JATP)に入会します。
主幹総合交通心理士
主幹総合交通心理士になるためには、下記の条件を満たす必要があります。
- 主幹総合交通心理士になるための条件
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- 心理学関連の博士の学位を有する者、またはそれと同等以上の学識を有する者
- 交通心理学に関する学会誌への発表が3篇以上かつ学会発表が6件以上で、いずれも筆頭発表者である者
- 10年以上の研究または実務経験を有する者
主任交通心理士
主任交通心理士になるためには、下記の条件を満たす必要があります。
- 主任交通心理士になるための条件
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- 心理学関連の修士の学位を有する者、またはそれと同等以上の学識を有する者
- 交通心理学に関する学会誌等への発表が2篇以上かつ学会発表が4件以上で、いずれも筆頭発表者である者
- 5年以上の研究または実務経験を有する者
交通心理士
交通心理士になるためには、下記の条件を満たす必要があります。
- 交通心理士になるための条件
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- 心理学関連の学士の学位を有する者、またはそれと同等以上の学識を有する者
- 交通心理学に関する学会誌等への発表が1篇以上かつ学会発表が2件以上で、いずれも筆頭発表者である者
- 3年以上の研究または実務経験を有する者
交通心理補
公認心理師、臨床心理士もしくは産業産業カウンセラーのいずれかの資格を有する者、心理学関連の学士の学位を有する者、または交通心理士補資格認定試験に合格した者であることが必要です。また、これらの資格を取得してから5年以内に交通心理士の資格を取得しないと、交通心理士補の資格は失効されます。
取得にかかる費用
主任交通心理士になるためには、下記の費用が必要です。
- 交通心理士の資格取得費用
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- 入会費用:8,000円(年会費)
- 資格認定申請書の審査料:10,000円
研究歴がない場合は、まずは試験を受験して主任交通心理士補を目指します。下記の費用が必要です。
- 交通心理士補の資格取得費用
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- 資格認定申請書の審査料:10,000円
- 事前講習会受講料:30,000 円(別途資料配布代:10,000円)
- 試験用テキスト「交通心理学入門」:3,000 円
- 試験受験料:10,000 円
- 認定料:20,000 円
- 年会費:8,000円
なお、追試験を受検する場合は試験料5,000円を支払います。交通心理士補になった後は、5年以内に学会大会での発表、参加、講習会の参加などの規定条件を満たさない場合、交通心理士補の資格は失効されます。更新する場合は、認定料として10,000円を支払います。
交通心理士試験の日程
交通心理士補の試験を受験する場合、試験は4月開催と10月開催の年二回あります。なお、事前講習会のスケジュールも確認しましょう。
交通心理士はどんな人におすすめの資格?
交通心理士は、交通安全に関する研究をしてきた人、交通に関わる心理学に詳しい人におすすめの資格です。交通事故はさまざまな原因で起こりますが、交通心理士は人的な問題やトラブルにアプローチすることができます。
交通心理士は、交通安全に関するカウンセリングやコーチングが期待されています。交通安全の防止や安全な運転・歩行の啓発を担うことができます。
今まで専門的な研究をしてこなかった人は、ファーストステップとして交通心理士補を目指しましょう。
- 交通心理士の資格取得がおすすめな人
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- 交通安全の研究をしてきた人
- 交通心理学の研究をしてきた人
- 交通安全の防止に貢献したい人
どこが管理している資格なの?(問い合わせ先・管理団体)
交通心理士を主催・運営しているのは、日本交通心理学会(JATP)です。試験の詳細や申込については、下記URLから確認してください。
まとめ:心理学の知識を活かして交通安全を推進!
交通心理士という資格を今まで知らなかった人もいるかもしれません。まずは交通心理士補の資格取得からスタートして、交通安全の実現をサポートするのもおすすめですよ。
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