食事での健康管理意識が高まっている昨今、人気の国家資格が「管理栄養士」です。この管理栄養士とはどんな仕事をする資格か、取得に必要な知識や取得後のメリットなどを詳しくご紹介していきます。
管理栄養士とは、どんな資格?
管理栄養士とは、栄養に関する高度な指導や栄養管理を行う職種です。厚生労働省大臣が認定する国家資格でもあります。
似た国家資格に「栄養士」もありますが、栄養士は食生活のアドバイザー的役割を果たすのに対し、管理栄養士は栄養管理のプロフェッショナルの役割を担う、別の仕事です。栄養士よりも専門的かつ高度な栄養指導を行うため、保健所や一定の事業所では管理栄養士の配置が義務付けられており、栄養士よりも広い領域での活躍ができるという違いがあります。
管理栄養士の具体的な仕事内容は、以下のとおりです。
- 病気や怪我をした人に対する療養のための栄養指導
- 個人の状態に応じた健康保持・増進のための栄養指導
- 施設などで特定多数の人に対する給食管理・栄養指導
学ぶ知識・技術
管理栄養士の資格を取得するには、高校卒業後、管理栄養士養成課程もしくは栄養士養成課程のある大学、短期大学、専門学校に入学し、所定の専門課程を修得して卒業することが必要です。そして卒業後、管理栄養士国家試験に合格しなくてはなりません。
試験に合格するには、下記の知識を習得する必要があります。
- 社会・環境と健康
- 健康の概念、公衆衛生の概念、環境衛生、健康へ影響を及ぼす生活習慣、疫学の原理と方法、科学的根拠に基づく保健対策など。
- 人体の構造と機能及び疾病の成り立ち
- 生活習慣病、栄養疾患、代謝疾患、消化器疾患、感染症、免疫・アレルギー疾患、腎疾患等の概要。また、疾病の発症や進行、病態評価、治療法、人体と微生物・毒性物質との相互関係など。
- 食べ物と健康
- 食に関する基礎概念、食品に含まれる各種成分の化学構造・物性、栄養素供給源としての働きや健康効果、食事設計の基本、食品の安全性、衛生管理など。
- 基礎栄養学
- 栄養と健康および疾患との関わり、栄養と食生活の関係、栄養学の歴史的背景、栄養素の生理的作用や機能、栄養現象と遺伝素因など。
- 応用栄養学
- ライフステージに応じた栄養アセスメント、計画、実施、モニタリング、評価、運動・スポーツ時の栄養・代謝、体力への影響など。
- 栄養教育論
- 健康・栄養状態、食行動、食環境等に関する情報の収集・分析、それらの総合的な評価・判定など。
- 臨床栄養学
- 傷病者の栄養アセスメント(栄養スクリーニングを含む)、栄養ケアの計画と実施、食事療法・栄養補給方法、傷病者の栄養教育、モニタリングと再評価、薬と栄養・食物の相互作用、栄養ケアの記録など。
- 公衆栄養学
- 栄養疫学、公衆栄養マネジメントの概念と枠組み、公衆栄養プログラムの計画策定と実施、公衆栄養プログラムの評価指標など。
- 給食経営管理論
- 管理栄養士に求められる給食の経営管理(マネジメント)の基本、品質管理の基本の理解、栄養・食事管理の基本と栄養・食事計画、給食経営、事故や災害時の準備や対策など。
管理栄養士で目指せる職業、就職先は?
管理栄養士の資格を取得することで、下記のような現場での就職・転職が有利になります。
- 医療現場
- 患者の病状に合わせた食事の提供や栄養指導を通して栄養管理を行う。医療チームの一員として医師や看護師、薬剤師などの医療職種と協力し、患者の病気の治療や合併症の防止などに携わる。
- 介護施設
- 要介護者や高齢者を対象とした事業所で、飲み込みやすいよう柔らかくした食事や刻み食など、利用者の介護度に合った食事を提供する。「食べること」を楽しんでもらうためにも、栄養面だけでなく旬の食材や季節に沿った料理を提供するといった工夫も必要になる。
- 学校給食の現場
- 小中学校、特別支援学校、夜間の定時制高校などに勤務し、提供する学校給食の献立作成や成長期に必要な栄養素の計算をして、子どもたちに適切な給食を提供する。
- スポーツの現場
- トップアスリートやスポーツ団体などに、運動能力を高めるための栄養や食事に関するアドバイスをする。
- 社員・学校食堂
- 社員食堂や社員寮、大学の食堂などに勤務して、献立を作成したり、栄養についての正しい情報を提供したり、働く人や学生の毎日の健康づくりをサポートする。
- 行政機関
- 保健所・市町村保健センターで、地域における健康づくり政策の企画・立案、地域住民向けの健康づくりの講座の開催、栄養相談などを行う。
- 児童福祉施設
- 児童養護施設や保育園に勤務し、0歳から小学校入学前の子どもたちの成長に必要な調乳や離乳食、幼児食を提供する。アレルギーのある子どももいるため、保護者や保育士、医師、看護師との連携も必要。
- 研究機関
- 国や大学、企業などの研究室で食品研究を行い、健康に役立つ商品開発をする。
管理栄養士になるとどんな悩みが解決できる?
管理栄養士になると、栄養に関する知識を活かして下記のような悩みを解決できます。
- 管理栄養士が解決できること
-
- 患者一人一人の病状に合わせた献立を作成し、栄養指導をすることで、病状の回復に貢献する
- 障がいや高齢によって通常食を食べるのが困難な人に、流動食や刻み食を用意することで、食事や栄養補給をサポートする
- 栄養バランスの取れた献立を作成し、調理することで、利用者の健康状態をサポートする
- 食物アレルギーを持つ人が安心して食事を食べられるようにし、アレルギー発作を事前に防ぐ
管理栄養士の資格を取れる人はどんな人?(取得条件・受験資格)
管理栄養士の資格を取得するには国家試験に合格する必要がありますが、受験にあたって下記の条件を満たす必要があります。
管理栄養士の受験資格(下記のいずれかに該当する者)」
- 4年制の管理栄養士養成校(大学もしくは専門学校)を卒業した者
- 大学・短大・専門などの栄養士養成施設を卒業し、栄養士資格を取得後1~3年の実務経験(下記)を積んだ者
-
- 寄宿舎、学校、病院等で、特定多数人に対して継続的に食事を供給する業務
- 食品の製造、加工、調理または販売業務
- 学校、専修学校、各種学校、幼保連携型認定こども園での勤務
- 栄養に関する研究所および保健所などの行政機関
- その他、栄養に関する知識の普及・指導の業務を行う現場
なお、「大学・短大・専門などの栄養士養成施設を卒業し、栄養士資格を取得後」に管理栄養士国家試験を受験する場合、必要な実務経験年数は下記のように異なります。
- 2年制の栄養士養成施設を卒業した者:3年以上の実務
- 3年制の栄養士養成施設を卒業した者:2年以上の実務
- 4年制の栄養士養成施設を卒業した者:1年以上の実務
取得にかかる費用
管理栄養士国家試験の受験手数料は、6,800円です。
管理栄養士はどんな人におすすめの資格?
管理栄養士は、一人一人に合った献立を考え、栄養指導をする専門職なので、相手を思いやる気持ちが強い人、料理が好きな人に向いている仕事といえるでしょう。また、患者や利用者だけでなく、そのご家族や同じ職場の人と連携をとりながら業務を進めるため、コミュニケーション能力も不可欠です。
また、管理栄養士としてのスキルも必要とされる下記の現場で働く人、資格保有者にも、キャリア&給与アップの観点から資格取得がおすすめです。
- 管理栄養士の資格取得がおすすめな人
-
- 保育士
- 登録販売者
- 介護支援専門員(ケアマネージャー)
- フードコーディネーター
- 日本糖尿病療養指導士など
どこが管理している資格なの?(問い合わせ先・管理団体)
管理栄養士国家試験の実施・資格を管理しているのは、「厚生労働省」です。試験の日程や必要な受験手続き、申請機関、試験会場などについては下記のHPからご確認ください。
まとめ:管理栄養士は、医療現場、介護施設、保育施設など幅広い場で活躍できるおすすめの国家資格!
管理栄養士は、健康管理が必要な人に栄養バランスの優れた献立を考え、食事を提供する栄養管理のプロフェッショナルです。資格取得に向けての学習で、自分自身や家族の健康管理にも役立つ知識をたくさん得られる上に、活躍の場も非常に幅広いので、料理が好きな人はぜひ取得に向けてチャレンジを!
コメント