国際連合に所属し、国際公務員として働く人たちを国連職員と呼びます。国連職員は世界を舞台に紛争や貧困などの課題解決に取り組みます。
この記事では国連職員になるにはどんな方法があるか、試験の概要、応募要件などを紹介します。
国連職員とは、どんな資格?
国連職員は、国際連合に所属して国際公務員として働く人を指します。国連職員は国際的な課題の解決のための職務に従事します。
国連では、
- 貧困の撲滅
- 紛争の解決
- 教育の平等
- ジェンダーの平等
- 感染症や疾病のまん延防止
- 環境の持続可能性の確保 など
といった課題の解決のための職務にあたります。190以上の加盟国から約4万4千人の国連職員が世界各地で活動しています。国連職員は、主にフィールド・オペレーションとして現地で働くことが多いですが、地域委員会や裁判所・法廷などでも働いています。本部のあるアメリカニューヨーク州で勤務する人の割合も多いです。
国連職員は、課題解決のために調査・研究を行ったり、発展途上国への支援などを行います。調査・研究などは専門的な知識・技術を持った専門職が担当します。所属する機関の人事・財務・会計・庶務など事務系の仕事を担当するのは一般職です。
国連職員のポジションは、グレード(P1~P5、D1~D2、ASG、USG)とステップ(1~13)が決まっています。
学ぶ知識・技術
日本人が国連職員になるための方法には、主に3つの方法があります。
- 空席公告
- 国連ヤング・プロフェッショナル・プログラム(YPP)
- JPO派遣制度
空席公告
国連職員の退職、転任、転出、ポストの新設が発生し、PレベルもしくはDレベルのポストに欠員が生じた場合、国際的に公募が発表されます。公募では、ポストの職務内容と応募者の資格要件が具体的に提示されます。空席広告は、各国際機関のホームページの「Job」、「employment」、「Recruitment」、「Vacancies」、「Careers」で公開されます。
- 空席公告の流れ
-
- 求人の検索
- プロファイル(My Profile)の提出
- 採用応募文書の提出
- 応募文書の審査
- アセスメント・エクセサイズ
- コンピテンシー面接
- 採用通知
国連ヤング・プロフェッショナル・プログラム(YPP)
国連の若手職員を採用することを目的とした専門的能力開発プログラムです。YPPに参加するためには、年に一度開催される試験を受験し、書類審査、筆記試験、面接を経て、合格する必要があります。YPPには毎年5万人の応募がある人気の高いプログラムです。合格者は、ロスター(合格者名簿)に掲載されます。
合格後は、ポスト(P1またはP2)に空席が出た場合にロスター掲載者の中から選考が行われ、選考を通過するとポストに採用されます。
試験は筆記試験と口頭試問で構成されます。
1.筆記試験(4時間30分)
- 一般筆記
- 受験者の英語またはフランス語での文書作成・分析能力を問う試験。約900ワードの文章を300ワード程度に要約
- 専門筆記:(第1部選択式問題)
- 応募分野に関わる50問の選択式問題
- 専門筆記:(第2部記述式問題)
- 13問以下の記述式問題。長めの文章、演説、分析などを作成して回答
筆記試験の合格者は、口頭試問に進むことができます。
2.口頭試問
口頭試問は、能力を審査するテレビ面接方式です。専門審査員会メンバーで構成される面接パネルから試問を受け、受験者がそれに答えます。
JPO派遣制度
JPO派遣制度(ジュニア・プロフェッショナル・オフィサー派遣制度)とは、外務省が若手の日本人を各国際機関に職員として派遣する制度です。日本では1974年から実施されており、毎年外務省が派遣取り決め契約を結んでいる国際機関に派遣されます。国際機関の正規職員になるために必要な知識・経験を習得する機会を提供することを目的とした制度です。
JPO派遣制度に参加するためには、下記の審査を通過する必要があります。
- 事前登録
- 外務省による第一次審査
- 外務省による第二次審査
- 国際機関への推薦・審査
- 赴任手続き(国際機関への各種書類の提出、健康診断、赴任前研修など)
派遣された人は、派遣終了後も派遣先や他の国際機関での採用を目指すことが一般的です。派遣勤務中は、日本政府が原則2年間の派遣にかかる経費を負担します。
ただし、派遣終了後に国際機関の正規職員の採用が保証されているわけではありません。派遣期間終了後に正規職員となるためには、空席公告で発表された空席のポストに応募し、採用される必要があります。
国連職員で目指せる職業、就職先は?
国連職員として採用された場合、下記の専門機関や関連機関への就職が見込めます。
- 国連グローバル事務局
- 世界銀行
- 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)
- 教育科学文化機関(UNESCO)
- 世界保健機関(WHO)
- 世界貿易機関(WTO)
- 国際連合児童基金(UNICEF)
- 国際労働機関(ILO)
- 国連ボランティア連絡事務所(UNV)
- 国連環境計画(UNEP)
- 国連貿易開発会議(UNCTAD)
- 内部監査部(OIOS)
国連職員になるとどんな悩みが解決できる?
国連職員になると、下記の悩みや課題の解決に貢献できます。
- 国連職員が解決できること
-
- 紛争国や発展途上国が抱える問題の解決に取り組む
- 貧困や不平等といった国際的課題に関して調査・研究を進める
- 国同士の協力をサポートする
国連職員の資格を取れる人はどんな人?(取得条件・受験資格)
空席公告、YPP、JPO派遣制度に応募・参加するためには、それぞれの要件を満たす必要があります。
空席公告
公開された公募ポストでは求められる専門性や勤務経験が明記されます。採用要件を満たすことができる公募ポストに応募し、審査を受けます。
ただし、国連職員になるために、下記の要件を満たすことが求められる場合が多いです。
- 学位
- 応募するポストと関連する分野での修士号以上の学位があること
- 専門性
- 応募するポストと関連する分野での勤務経験があること
- 語学力
- 英語もしくはフランス語で職務遂行が可能であること
YPP
YPPに参加するためには、下記の要件を満たす必要があります。
- 参加国の国籍を有していること
- 応募対象の試験分野で、少なくとも学士号に相当する大学の学位を取得していること
- 試験年度において32歳以下であること
- 英語またはフランス語に堪能であること
- 参加国とは
- YPPは毎年、国連職員がいないか、相対的に少ない国々に対して参加が招請されます。応募希望者の国籍国がリストに掲載されていない場合、応募資格はありません。複数の国籍を有している場合、いずれか1つの国籍でしか応募できません
YPPの参加に実務経験は必要ありません。ただし、同一の国から40人を超える応募者が同一分野に応募した場合、該当する実務経験が追加的審査基準のひとつとして考慮されます。
JPO派遣制度
JPO派遣制度に参加するには、下記の要件を満たす必要があります。
- 年齢制限
- (1)該当する年の2 月 1 日現在、35 歳以下であること
- 学歴・職務経験
- (2)以下の両方を満たすこと。
- ア.外務省が派遣取決めを交わしている国際機関の業務に関連する分野において修士号を取得したか、または修士号を 2022 年 7 月末までに取得見込みであるこ
と - イ.外務省が派遣取決めを交わしている国際機関の業務に関連する分野において2022年7月末までに2年以上の職務経験を有すること(アルバイト、インターン等は職歴とみなさない)。
- ア.外務省が派遣取決めを交わしている国際機関の業務に関連する分野において修士号を取得したか、または修士号を 2022 年 7 月末までに取得見込みであるこ
- 語学力
- (3)英語で職務遂行が可能であること
- 将来のキャリアプラン
- (4)将来にわたり国際機関で働く意思を有すること
- 国籍
- (5)日本国籍を有すること(※) 外国の国籍も有する状態にある
取得にかかる費用
空席公募は募集がかけられたポストへの応募となりますので、受験費用は設けられていません。試験に関する旅費交通費などは自分で負担します。
YPPとJPO派遣制度も試験に受験費用はかかりませんが、受験のための交通費や旅費は自己負担です。
国連職員はどんな人におすすめの資格?
国連職員は国際的な視野を持ち、世界中のさまざまな国や地域に関わる課題解決への貢献を目指す人におすすめの資格です。
ただし国連職員になるには、語学力や学位のほか、専門知識や国連の職務に活用できる実務経験が求められることがあります。
常にポストの募集があるとは限らず、ポストがあっても世界中から応募する人材がいますので、難易度の高い職種です。その分、専門知識や経験を活かすことが求められ、国際平和や安定に貢献しているやりがいを感じられるでしょう。
国連職員の年収は、比較的高収入といえます。ポジションごとにグレード(P1~P5,D1~D2,ASG,USG)とステップ(I~XIII)が決まっています。グレードとステップの組み合わせにより基本給が決定されます。
P1クラスが430万~、ミドルレベルになると700~1,000万、シニアレベルになると1200万以上が相場です。ただし赴任地やポジション、支給される手当によって年収は異なります。
- 国連職員の資格取得がおすすめな人
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- 世界を舞台に働きたい人
- 国際的な平和や安定に貢献したい人
- 語学力や専門知識を国際的に活かしていきたい人
どこが管理している資格なの?(問い合わせ先・管理団体)
国連職員の募集や採用に関する情報は、国際連合広報センターまたは日本の外務省 国際機関人事センターのHPで詳細を確認できます。
まとめ:国際的な課題解決のために、知識や能力を発揮することができる
国連職員になると、紛争や貧困、経済的不安定といった国際的な課題の解決に向けて仕事に従事します。語学力や専門知識を有し、試験合格やプログラム参加を経て就くことのできる仕事ですので、長期的なキャリアプランを立ててチャレンジするのがおすすめです。
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