少子高齢化社会の現代日本において、社会的なニーズが高まっている国家資格が「社会福祉士」です。今回はこの社会福祉士とはどんな仕事をする人か、資格取得後のキャリアプランや取得によるメリットなどをお伝えしていきます。
社会福祉士とは、どんな資格?
社会福祉士は、日常生活を送るのが困難になった人の相談に応じ、一人ひとりの事情に合った福祉サービス・保健医療サービスの橋渡しをする福祉の専門家です。国家資格であり、「ソーシャルワーカー」「生活相談員」とも呼ばれます。
相談援助の対象者は、身体障がいのある人、生活に困窮している人、ひとり親の家庭など幅広く、様々な社会問題を抱える現代社会において、ニーズが増加している職種といえるでしょう。
社会福祉士の具体的な業務内容は、以下の通りです。
- 相談対応
- 高齢者介護、障がい者支援、生活保護、児童福祉、DV(家庭内暴力)など、福祉サービスを必要とする人からの相談に応じます。そして相談内容やニーズを正確に汲み取り、最適な公的サービス・施設をマッチングさせ、有効なアドバイスを提供します。
- 勤務先の施設での諸業務
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- 高齢者福祉施設:利用者ごとに個別の援助計画を立て、利用者の生活を観察しつつ定期的な評価を行います
- 介護施設:介護スタッフを兼任し、食事や入浴・排泄などの解除業務を行います
- 児童相談所:児童虐待・子どもの非行・不登校などに関する相談業務に加え、児童の一時保護なども行います
- 障がい者福祉関連施設:生活指導員として、障がいを抱える人の自立支援や就労支援を行います
- 社会福祉協議会:配属された地域の福祉課題を正確に把握し、関係者や関係機関と連携して課題解決に取り組みます
- 医療機関:医療ソーシャルワーカーとして、患者やその家族の悩みの相談に応じ、支援していきます
- 司法関係機関:受刑者の再犯リスクを減らすため、出所者に対して社会福祉サービスの橋渡しをします
学ぶ知識・技術
社会福祉士になるには、国家試験に合格する必要があり、その過程で下記の知識を習得することになります。
- 共通科目
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- 人体の構造と機能及び疾病
- 心理学理論と心理的支援
- 社会理論と社会システム
- 現代社会と福祉
- 地域福祉の理論と方法
- 福祉行財政と福祉計画
- 社会保障
- 障害者に対する支援と障害者自立支援制度
- 低所得者に対する支援と生活保護制度
- 保健医療サービス
- 権利擁護と成年後見制度
- 専門科目
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- 社会調査の基礎
- 相談援助の基盤と専門職
- 相談援助の理論と方法
- 福祉サービスの組織と経営
- 高齢者に対する支援と介護保険制度
- 児童や家庭に対する支援と児童・家庭福祉制度
- 就労支援サービス、更生保護制度
社会福祉士で目指せる職業、就職先は?
社会福祉士の国家資格を取得した後は、主に以下のような就職先が目指せます。
- 高齢者を対象にした施設
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- 介護老人保健施設
- 特別養護老人ホーム
- 地域包括支援センター
- ケアハウス など
- 児童を対象とした施設
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- 児童相談所
- 発達支援センター など
- 障がい者自立支援施設
- 地方自治体の福祉事務所(主に生活困窮者を対象とする)
- 社会福祉協議会
- 病院などの医療機関
- 福祉サービスを提供する民間企業
社会福祉士になるとどんな悩みが解決できる?
社会福祉士になると、下記のような悩み・社会的な問題の解決に貢献できます。
- 社会福祉士が解決できること
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- 身体的・精神的・経済的なハンディキャップのある人を支援することで、スムーズに日常生活を送れるようにする
- 本人が解決できない問題について、公的施設との橋渡しを行い、包括的に援助をする
- 虐待や生活上の理由などで保護者の養育を受けられない子ども、非行に走る子どもとその家族を保護し、適切な支援を受けられるようにする
- 地域の福祉課題を把握・解決することで、福祉サービスを増進させる
社会福祉士の資格を取れる人はどんな人?(取得条件・受験資格)
社会福祉士の資格を取るには国家試験に合格する必要がありますが、試験は誰でも受けられるわけではありません。大まかに分けて、「福祉系大学・短大で指定の科目を修了した人」「福祉系大学・短大で基礎科目を修了し、短期養成施設などで学んだ人」「一般の大学や高校を卒業した後、実務と一般養成施設で学んだ人」に受験資格が与えられます。詳しい条件は、以下で解説していきます。
社会福祉士国家試験の受験資格
- ①福祉系大学・短大で指定の科目を修了した人(下記のいずれかに該当する)
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- 福祉系の大学で指定科目を4年履修した者
- 福祉系の短大などで指定科目を3年履修し、相談援助の実務を1年以上経験した者
- 福祉系の短大などで指定科目を2年履修し、相談援助の実務を2年以上経験した者
- ②福祉系大学・短大で基礎科目を修了し、短期養成施設などで学んだ人(下記のいずれかに該当する)
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- 福祉系の大学で基礎科目を4年履修し、短期養成施設で6ヶ月学んだ者
- 福祉系の大学で基礎科目を3年履修し、相談援助の実務を1年以上経験し、短期養成施設で6ヶ月学んだ者
- 福祉系の大学で基礎科目を2年履修し、相談援助の実務を2年以上経験し、短期養成施設で6ヶ月学んだ者
- 社会福祉主事養成機関で2年以上学び、相談援助の実務を2年以上経験し、短期養成施設で6ヶ月学んだ者
- 児童福祉司など指定の実務経験が4年あり、短期養成施設で6ヶ月学んだ者
- ③一般の大学や高校を卒業した後、実務と一般養成施設で学んだ人(下記のいずれかに該当する)
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- 一般の4年制大学を卒業後、一般養成施設で1年以上学んだ者
- 一般の3年制短大を卒業後、相談援助の実務を1年以上経験し、一般養成施設で1年以上学んだ者
- 一般の2年制短大を卒業後、相談援助の実務を2年以上経験し、一般養成施設で1年以上学んだ者
- 高校卒業後、相談援助の実務を4年以上経験し、一般養成施設で1年以上学んだ者
取得にかかる費用
社会福祉士の国家試験の受験料、資格登録にかかる費用などは下記の通りです。
- 社会福祉士国家試験の受験料
- 19,370円(令和3年秋以前は15,440円)
- 社会福祉士と精神保健福祉士を同時に受験する場合
- 36,360円(内訳:社会16,840円、精神19,520円)
- 社会福祉士の共通科目免除により受験する場合
- 16,230円
- 社会福祉士の資格登録料
- 登録免許税15,000円+手数料4,050円
社会福祉士はどんな人におすすめの資格?
社会福祉士は、悩みを持つ人の話を聞く仕事であり、問題の最適解を見つけるために行政や関連する法律、地域の支援情報などを把握している必要もあります。そのことから、以下のような人に向いている職種といえるでしょう。
- 人と接することが好きで、自分の感情をコントロールできる
- 人の話にしっかり耳を傾けられる
- 行政や法律、支援サービスなどの情報収集・学習が苦ではない
また、下記のような資格を持っている人は、社会福祉士とのダブルライセンスでできる業務の幅が広がり、将来性が安定しやすくなるので、取得がおすすめです。
- 社会福祉士の資格取得がおすすめな人
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- ケアマネージャー
- 臨床心理士
- 看護師
どこが管理している資格なの?(問い合わせ先・管理団体)
社会福祉士の国家試験を実施し、資格を管理しているのは、「公益財団法人 社会福祉振興・試験センター」です。試験日程や会場、受験申請に必要な手続きなどは、下記のHPからご確認ください。
まとめ:社会福祉士は、困っている人に福祉の手を差し伸べるプロフェッショナル!
介護が必要な高齢者、支援が必要な障がい者や子ども、家庭など、あらゆる事情で困っている人を救う福祉のプロフェッショナルが「社会福祉士」です。他の人の人生をサポートする仕事であり、今後社会的な需要も高まる見込みなので、「誰かの役に立ちたい」という情熱のある方は、ぜひ取得に向けてチャレンジをしてみてはいかがでしょうか。
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