日本語を学習する外国人をサポートする仕事といえば「日本語教師」です。2024年には国家資格「「日本語教員試験」の実施が進められましたが、従来の民間資格保有者やこれから日本語教師を目指す人はどんなことを理解するとよいのでしょう。
この記事では、資格を取得して日本語教師として働きたい人に向けて、資格取得の主な方法、学習内容などを紹介します。
日本語教師とは、どんな資格?
日本語教師とは、日本語の発音や文法を外国人に教える仕事です。日本語に関する知識のほか、日本の文化やマナー、習慣などを教える役割もあります。
日本語教師の主な仕事は下記の通りです。
- 日本語の学習に関する教材作成
- テストの作成と採点
- 生徒に合ったカリキュラムを組む
- 生徒の出欠管理
- 学校の運営や行事の企画・運営
日本語教師になるには特別な資格が必須ではありません。ただし、日本国内で法務省が告示する日本語学校の教員になるためには、以下の条件のうちいずれかを満たしていることが求められます。
- 「日本語教育能力検定試験」に合格する
- 学士の学位をもち、文化庁認定の「日本語教師養成講座(420時間)」を修了する
- 大学または大学院で日本語教育に関する主専攻プログラムあるいは副専攻プログラムのいずれかを修了する
この記事では「日本語教育能力検定試験」について説明していきます。
学ぶ知識・技術
日本国内で日本語教師として働くための、主な3つの条件について解説します。
「日本語教育能力検定試験」の合格
「日本語教育能力検定試験」とは、公益財団法人 日本国際教育支援協会が実施している試験です。日本語や日本語教育に関する知識が問われます。通信講座などで対策をとることもできますが、独学で試験に合格する受験者もいます。
試験の構成は下記の通りです。
- 試験【Ⅰ】(90分/100点)
- 原則として出題範囲の区分ごとの設問により、日本語教育の実践につながる基礎的な知識を測定
- 試験【Ⅱ】(30分/40点)
- 試験Ⅰで求められる「基礎的な知識」および試験Ⅲで求められる「基礎的な問題解決能力」について、音声を媒体とした出題形式で測定
- 試験【Ⅲ】(120分/100点)
- 教員としての現場対応力(複合知識を要する問題)
原則として出題範囲の区分横断的な設問により、熟練した日本語教員の有する現場対応能力につながる基礎的な問題解決能力を測定
出題区分は下記の通りです。令和4年度から変更がされています。
- 社会・文化・地域
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- 世界と日本
- 異文化接触
- 日本語教育の歴史と現状
- 言語と社会
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- 言語と社会の関係
- 言語使用と社会
- 異文化コミュニケーションと社会
- 言語と心理
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- 言語理解の過程
- 言語習得・発達
- 異文化理解と心理
- 言語と教育
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- 言語教育法・実習
- 異文化間教育とコミュニケーション教育
- 言語教育と情報
- 言語
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- 言語の構造一般
- 日本語の構造
- 言語研究
- コミュニケーション能力
- 基礎理論の学習
- 実践演習の学習
- 検定試験合格
- 教育実習
- 日本国内の日本語学校
- 海外の日本語学校
- 地域のボランティア活動やボランティア団体
- 企業や工場で働く外国人労働者に向けた研修
- 大学や小中高等学校
- インターナショナルスクール
- 企業内外国人従業員への日本語研修研修
- 技術研修生の研修 など
- 日本語教員試験(基礎試験・応用試験)の合格
- 実践研修(教育実習)の修了
- 日本語教師が解決できること
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- 外国人の日本語習得を支援する
- 日本で暮らす外国人の日本語学習支援を通して、生活や就職をサポートする
- 外国人を雇用する日本企業の人材育成をサポートする
- 日本語教育能力検定試験
- 年齢や学歴による制限はありません
- 日本語教師養成講座
- 講座の受講資格は、各機関に確認しましょう。講座修了後、日本国内の日本語学校への就職を希望する場合は学位(大学卒)も要件となることがあります
- 大学・大学院での「日本語教育主専攻(または副専攻)」修了
- 各大学・大学院の受験に合格する必要があります
- 日本語教師能力試験受験料
- 14,500円(税込)
- 日本語教師養成講座受講料
- 45~55万前後(入学費・教材費は別)
- 大学・大学院での「日本語教育主専攻(または副専攻)」
- 各大学または大学院の受験費用や授業料、教材費
- 日本語教師の資格取得がおすすめな人
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- 人に教えることが好きな人
- 文化や国籍を問わずコミュニケーションをとれる人
- 日本や日本文化の魅力を伝えたい人
- 日本語教育を通して、外国人の暮らしや仕事をサポートしたい人
- 海外で日本語教師として働きたい人
「日本語教師養成講座」の修了
文化庁が認定する420時間の「日本語教師養成講座」を修了することによって、日本語教師に必要な知識を習得していると認められます。
講座で学ぶ範囲は、日本語教育能力検定試験と同じ5区分です。下記の流れで講座は進みます。
受講期間は教育機関によって異なりますが、半年から1年程度が目安です。通学形式のほか通信講座など、学習の方法が選べる場合もあります。
大学・大学院での「日本語教育主専攻(または副専攻)」修了
大学または大学院で「日本語教育に関する主専攻(または副専攻)プログラム」を修了すると、卒業時に日本語教師の資格を取得できます。
日本語教師で目指せる職業、就職先は?
日本語教師の資格を取得すると、下記の業種や教室への就職や転職が見込めるでしょう。日本国内で法務省が告示する日本語学校の教員になるためには、前述した3つの条件のいずれかを満たす必要があります。
2024年開始の国家資格「日本語教員試験」って?
日本語教師が民間資格であった頃は、3つの条件のいずれかを満たせば日本語教師として資格を活かすことができました。ところが2024年4月から開始された国家資格「日本語教員試験」では、留学生を受け入れる「認定日本語教育機関」で働くためには、「登録日本語教員」の資格取得が必要になりました。登録日本語教員になるには、下記の2つの条件両方を満たすことが求められます。
国家資格の「日本語教員試験」と、民間資格(この記事で紹介)の「日本語教育能力検定試験」は異なる別の資格であることを理解しておきましょう。
「認定日本語教育機関」以外でレッスンなどであれば、2024年時点では民間資格の保有者でも日本語を教えることができるのが現状です。今後の制度の変更などに注目しつつ、いつ・どの資格取得をすべきか考慮しましょう。
日本語教師の資格を取得するとどんな悩みが解決できる?
日本語教師の資格を取得すると、下記の悩みや課題の解決に貢献できます。
日本語教師の資格を取れる人はどんな人?(取得条件・受験資格)
日本語教師の資格を取得するための3つの条件について、試験受験資格や講座受講資格を紹介します。
取得にかかる費用
日本語教師の資格を取得するためにかかる費用の目安は下記の通りです。
日本語教師はどんな人におすすめの資格?
日本語教師は、日本語の習得を目指す学習者をサポートするやりがいの大きい仕事です。人に教えることが好きで、コミュニケーション能力が高い人に向いているといえるでしょう。
生徒は外国人となりますので、異文化への理解や尊重が必要です。日本の文化や常識についての解説を求められることもありますので、日本に関する理解も不可欠といえます。
大学や大学院での専攻が資格取得の方法のひとつではありますが、日本語教育能力検定試験には学歴や年齢の制限がありません。高卒の方やシニア層の方がチャレンジすることもあります。
日本語教師の年収は300~400万と高いわけではありませんが、経験を積めばフリーランスや副業として活躍することもできます。日本語以外の語学力を習得している場合、海外の日本語学校や日本語教師への就職を目指すこともできるでしょう。
どこが管理している資格なの?(問い合わせ先・管理団体)
日本語教育能力検定は、公益財団法人 日本国際教育支援協会が主催しています。試験の詳細や申込については下記HPを確認してください。
「日本語教師養成講座(420時間)」は、文化庁が認定する講座です。さまざまな団体や機関が講座を開いています。
まとめ:日本語教師は外国人の方々の日本語学習をサポートするやりがいのある仕事
日本語教師になると、外国人の日本語学習をサポートすることができます。日本で暮らす外国人や海外にいながら日本語学習に励むなど、さまざまな外国の方が日本語の学習に取り組んでいます。日本語教師の仕事を通して異文化交流をすることもでき、刺激も受けられます。興味がある人は是非検討してみてくださいね。
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