毒物や劇物を扱う工場や事業所では、従業員や周囲の人々の健康を守らなくてはいけません。そのため、毒物と劇物の適切な取り扱いと管理ができる「毒物劇物取扱責任者」の登録が必要です。
この記事では、毒物劇物取扱責任者の試験や講習会、仕事内容、就職先の種類を解説していきます。
毒物劇物取扱責任者とは、どんな資格?
毒物劇物取扱責任者とは、毒物や劇物を取り扱う工場やお店、企業などに勤め、誤った取り扱いによって人々の健康が損なわれることがないように、毒物や劇物の管理や危害の防止を行う人のことです。
毒物や劇物を取り扱う製造所や事業所などでは、毒物劇物取扱責任者を登録することが「毒物及び劇物取締法(第七条)」によって定められています。たとえば、毒物や劇物の製造者や販売者、輸入事業者、研究機関などには必ず毒物劇物取扱責任者が登録されています。
毒物劇物取扱責任者は、次のような仕事を行います。
- 毒物や劇物を取り扱う設備が法律の基準を守っているか、点検し管理する
- 毒物や劇物のラベル表示や着色が規定通りに行われているか、点検して管理する
- 毒物や劇物の紛失などに対する防止措置をとる
- 毒物や劇物の廃棄技術が基準に適合しているか、点検して管理する
- 周辺事業所との連絡や保健所への届出を提出する など
毒物劇物取扱責任者が管理することのできる毒物劇物は、「毒物及び劇物取締法(第二条)」によって、下記のように定義されています。
- 毒物
- シアン化水素、シアン化ナトリウム、水銀、ヒ素、ニコチンなど
- 劇物
- アンモニア、塩酸、過酸化水素、クロロホルム、硝酸、硫酸、ホルムアルデヒドなど
- 特定毒物
- オクタメチルピロホスホルアミド、四アルキル鉛、モノフルオール酢酸など
具体的には、農業で扱う殺虫剤や肥料、製造工場で扱う塗料や接着剤など、幅広い分野で毒物や劇物が利用されています。毒物や劇物は取り扱いを誤ると人体などに危害を与えますが、産業・工業の発展や私たちの生活を支えるものでもあるのです。
学ぶ知識・技術
毒物劇物取扱責任者となるには、毒物と劇物に関する知識や基礎化学の習得が求められます。薬剤師または厚生労働省令で定める学校で応用化学に関する学課を修了した者は、毒物劇物取扱責任者の資格を有することができます。
また、試験に合格することで毒物劇物取扱責任者となることができます。試験は、筆記試験と実地試験が行われます。試験はいずれもマークシート形式です。
- 筆記試験
-
- 毒物及び劇物に関する法規
- 基礎化学
- 毒物及び劇物の性質及び貯蔵その他取扱方法
- 実地試験
- 毒物と劇物の識別や取扱方法
試験は「一般」「農業用品目」「特定品目」の3種類に分かれており、扱うことのできる毒物や劇物の種類や業態が異なります。
- 一般
- 毒物または劇物の全品目を扱うことができます。製造業・輸入業・販売業における毒物劇物取扱責任者になれます。
- 農業用品目
- 農業用の毒物または劇物のみを扱うことができます。輸入業・販売業における毒物劇物取扱責任者になれます。
- 特定品目
- 特定品目の毒物または劇物のみを扱うことができます。輸入業・販売業における毒物劇物取扱責任者になれます。
どの毒物または劇物を取り扱う資格を取得したいか決まっている場合は、該当する試験を受験しましょう。はっきりとは決まっていない人は、汎用性の高い一般を受験するというのもおすすめです。
毒物劇物取扱者試験の合格者には、免許(ライセンス)は交付されません。合格証書が交付され、申請の証明書類となります。
毒物劇物取扱責任者試験対策の講習会実施も
毒物劇物取扱者試験対策の講習会は、職業訓練法人 日本技能教育開発センターで講座が設けらています(有料)。東京都 TOKYOはたらくネットでは、「キャリアアップ講習」として毒物劇物取扱者受験対策が実施されます(有料)。
毒物劇物取扱責任者試験で目指せる職業、就職先は?
毒物劇物取扱責任者になると、次のような業種への就職や転職が見込めます。
- 金属を加工する工場
- 塗料や接着剤が使われる工場
- 殺虫剤など農薬を製造する工場
- 毒物や劇物の含まれた樹脂製品を製造する工場
- 製薬会社
- 毒物劇物販売業
- 毒物や劇物の輸入や輸送を行う会社
- 研究開発施設 など
毒物劇物取扱者になるとどんな悩みが解決できる?
毒物劇物取扱者になると、次のような悩みや問題の解決に貢献できます。
- 毒物劇物取扱者が解決できること
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- 毒物や劇物の誤った取り扱いを防ぐ
- 毒物や劇物による人体への健康リスクを未然に防ぐ
毒物劇物取扱責任者の資格を取れる人はどんな人?(取得条件・受験資格)
毒物劇物取扱者になるためには、以下の3つの要件のいずれかを満たす必要があります。
- 各都道府県で実施する毒物劇物取扱責任者試験に合格した人
- 毒物劇物取扱責任者試験の合格者は、行政への申請の際に毒物劇物取扱責任者試験の合格証書を提出します。
- 薬剤師
- 薬剤師の有資格者は、行政への申請の際に薬剤師免許証を提出します。
- 厚生労働省令で定める学校で応用化学に関する学課を修了した人
- 厚生労働省令で定める学校とは、大学等、高等専門学校、専門課程のある専修学校、高等学校を指します。必要な学科や単位の基準は、各学校で異なります。行政への申請の際に卒業証明書や成績証明書を提出します。
毒物劇物取扱責任者試験の受験資格
毒物劇物取扱責任者試験の受験には、学歴や経験、年齢は問われません、誰でも受験可能です。ただし次の項目に当てはまる人は、試験に合格したとしても毒物劇物取扱責任者となることができません。
- 18歳未満の者
- 心身の障害により毒物劇物取扱責任者の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの
- 麻薬、大麻、あへん又は覚醒剤の中毒者
- 毒物若しくは劇物又は薬事に関する罪を犯し、罰金以上の刑に処せられ、その執行を終り、又は執行を受けることがなくなった日から起算して3年を経過していない者
また、次の要件を満たす人は毒物劇物取扱責任者の資格を有していますので、改めて試験を受験する必要はありません。
- 薬剤師
- 工業高等学校又はこれと同等以上の学校で応用化学に関する学課を修了した者(ただし、化学に関する科目を所定の単位数以上修得している者に限る。)
取得にかかる費用
毒物劇物取扱責任者試験の受験料は、受験する自治体によって金額が異なります。東京都は12,900円(非課税)です。受験料は、受験を希望する自治体の窓口で確認してください。
また、どの自治体でで合格しても毒物劇物取扱責任者になることができます。
毒物劇物取扱責任者試験はどんな人におすすめの資格?
毒物や劇物は、農薬や塗料などさまざまな製品の製造過程で使用されています。そのため、毒物や劇物扱う会社はこれからも必要とされていきます。つまり、毒物劇物取扱責任者の需要もあるといえます。
業種によっては毒物劇物取扱責任者は必要不可欠な存在ですので、就職または転職に役立つでしょう。責任者としてキャリアアップを積めば、収入アップも見込めます。
- 毒物劇物取扱責任者の資格取得がおすすめな人
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- 毒物や劇物を責任持って取り扱うことができる人
- 毒物や劇物を扱う製造業や輸入・販売業への就職を目指す人
- 責任者としてキャリアアップや収入アップを目指す人
どこが管理している資格なの?(問い合わせ先・管理団体)
毒物劇物取扱責任者の資格試験は、東京都では健康安全部 薬務課 薬事免許担当が管理しています。他道府県の試験では、各道府県庁の薬事関係主管課が窓口となっています。
まとめ:毒物劇物取扱責任者はこれからも安定的に働きたい人におすすめ
毒物劇物取扱責任者は、毒物や劇物を扱う業種で重宝される資格です。幅広い業種で必要とされる資格ですので、どんな仕事や業種に就きたいか考えた上で受験を検討しましょう。将来的にも需要のある仕事ですので、是非チャレンジしてみてくださいね。
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