近年、日本初の心理職の国家資格として「公認心理師」が誕生しました。今回は、この公認心理師とはどんな資格か、臨床心理士との仕事内容の違いや活躍する現場、取得によるメリットなどをお伝えしていきます。
公認心理師とは、どんな資格?
公認心理師とは、2017年の公認心理師法の施行に伴い、「心の問題を解決するアドバイザー」として日本初の国家資格として登場した心理職です。
似たような職種で「臨床心理士」という民間資格がありますが、心の問題に向き合うプロを必要とする社会的ニーズが近年強まったことで、「国民の心の健康の保持増進する」心理職の質を担保する目的で公認心理師が誕生しました。
公認心理師の仕事内容は、以下の通りです。
- 心理に関する支援を要する者の心理状態を観察し、その結果を分析する
- 心の問題を抱えている者に対し、心理に関する相談に応じ、助言・指導その他の援助を行う
- 心の問題を抱えている本人だけでなく、周囲の関係する人に対しても相談に乗り、助言や援助を行う
- 心の健康についての知識や情報の発信・提供を行う
臨床心理士と業務内容はほぼ同じですが、大きな違いは4つめの点です。臨床心理士は「心の問題に関する調査や研究を行う」のを仕事としていますが、公認心理師はより対外的な「教育・情報の発信」に重点を置きます。
また、もう一つの違いとして、臨床心理士は医師との「連携」で業務をする一方、公認心理師は医師の「指導」が必要になります。
学ぶ知識・技術
公認心理師になるには基本的に、大学・大学院で心理学に関する専門科目(指定されたカリキュラム)を履修し、修了する必要があります。具体的には、下記のような知識・技術を習得していきます。
- 大学で学ぶ知識・技術
-
- 公認心理師の職責
- 心理学概論
- 臨床心理学概論
- 心理学研究法
- 心理学統計法
- 心理学実験
- 知覚、認知心理学
- 学習、言語心理学
- 感情、人格心理学
- 神経、生理心理学
- 社会、集団、家族心理学
- 発達心理学
- 障害者、障害児心理学
- 心理的アセスメント
- 心理学的支援法
- 健康・医療心理学
- 福祉心理学
- 教育、学校心理学
- 司法、犯罪心理学
- 産業、組織心理学
- 人体の構造と機能及び疾病
- 精神疾患とその治療
- 関係行政論
- 心理演習
- 心理実習
- 大学院で学ぶ知識・技術
-
- 保健医療分野に関する理論と支援の展開
- 福祉分野に関する理論と支援の展開
- 教育分野に関する理論と支援の展開
- 司法、犯罪分野に関する理論と支援の展開
- 産業、労働分野に関する理論と支援の展開
- 心理的アセスメントに関する理論と実践
- 心理支援に関する理論と実践
- 家族関係、集団、地域社会における心理支援に関する理論と実践
- 心の健康教育に関する理論と実践
- 心理実践実習
公認心理師で目指せる職業、就職先は?
公認心理師の資格取得後は、下記のような現場での就職が期待できます。
- 医療・保健の現場
- 病院、保健所、精神保健福祉センターなど
- 福祉の現場
- 児童相談所、障害者支援施設、老人福祉施設など
- 教育現場
- 学校、教育委員会など
- 司法
- 裁判所、少年院、更生保護施設など
- 産業・労働の現場
- 組織内健康管理センター、地域障害者職業センターなど
2017年の公認心理師法に施行されて間もない国家資格なので、就職先の実例は今後の統計待ちです。ただ、基本的には臨床心理士と似たような就職先になることが想定され、さらに今後は国家資格という立場から公的な活躍の場も増えていくと思われます。
公認心理師になるとどんな悩みが解決できる?
公認心理師の知識やスキルによって、下記のような悩み・問題の解決が期待されます。
- 公認心理師が解決できること
公認心理師の資格を取れる人はどんな人?(取得条件・受験資格)
公認心理師の国家資格を取得するには、公認心理師試験に合格する必要がありますが、受験できるのは下記のいずれかの要件を満たした人のみです。
公認心理師の受験資格
- 4年制大学で厚生労働省指定の科目を履修し、かつ大学院で、同科目を履修した者
- 4年制大学で厚生労働省指定の科目を履修し、卒業後、特定の施設(※)で2年以上の実務経験を経た者
- 外国の大学において心理に関する科目を修め、かつ外国の大学院において心理に関する科目を修了した者
※の「特定の施設」とは、下記の5分野の現場です。
- 医療・保健の現場
- 病院、保健所、診療所、介護療養型医療施設、介護老人保健施設など
- 福祉の現場
- 障害者支援施設、児童福祉施設、認定こども園、老人福祉施設など
- 教育現場
- 学校、教育委員会など
- 司法・犯罪の現場
- 裁判所、更生施設、刑務所、少年院、保護観察所など
- 産業・労働の現場
- 広域障害者職業センター、地域障害者就業・生活支援センターなど
取得にかかる費用
公認心理師の国家試験の受験や登録などにかかる手数料は、下記の通りです。
- 受験料
- 28,700円
- 登録手数料
- 7,200円
- 登録免許税
- 15,000円
公認心理師はどんな人におすすめの資格?
公認心理師は、さまざまな心の問題を抱える依頼者に対して、心理の専門知識や技法を用いながらアプローチしていきます。中には重い悩みを抱えている依頼者もいるので、そういった人間の心理について興味・関心を持ち、思いやりを持って寄り添える人に向いている資格といえます。
ただ、重い悩みを打ち明けられたとしても、個人的な感情を相手に一方的にぶつけてしまったり、相手の抱える事情に深く介入すると、依頼者に悪影響を与える恐れがあるので、冷静さも欠かせません。そして公認心理師法では「秘密保持義務」が定められているので、秘密が守れることも絶対条件です。
なお、臨床心理士の資格取得を検討しており、さらに公認心理師のダブルライセンスを目指す方も少なくないかと思いますが、公認心理師はまだ誕生して間もない資格であり、取得のためには大学だけでなく大学院も修了する必要があります。純粋に早く心理職を目指したいという方は、まずは臨床心理士の取得からトライすることがおすすめです。
どこが管理している資格なの?(問い合わせ先・管理団体)
公認心理師の試験や国家資格を管理しているのは、「一般財団法人 日本心理研修センター」です。試験日程や受験に必要な手続き、試験会場など詳しい情報については、下記の公式HPからご確認ください。
まとめ:日本初の心理職「公認心理師」なら、病院や福祉施設だけでなく、教育現場など幅広い場でのキャリアプランが期待できる!
公認心理師は2017年に誕生したばかりの資格ですが、臨床心理士とは違い国家資格であること、また教育現場などで情報の発信をする職種であることから、幅広い現場での活躍が期待できます。資格取得のためには大学院を修了し、さらに国家試験をパスする必要がありますが、取得後は免許更新の必要がない、安定した国家資格です。心理職のプロを目指す方はぜひ!
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