製造業やものづくりの現場で役に立つ「生産士」という資格をご存知ですか?この記事では生産士の資格取得のために必要な受験、1級~4級の概要、「生産士通信講座」の概要などを解説します。
生産士とは、どんな資格?
生産士とは学校法人 産業能率大学 総合研究所が認定する民間資格で、生産管理技術のスペシャリストです。生産士の資格は1976年に認定制度が始まり、毎年約1,000名の生産士が誕生しています。
製造業やものづくりの工程を管理する際には、担当者、工場長、部門長などが現場を管理しています。ものづくりでは、自己管理、職場管理、製造管理、工場管理などのスキルが必要です。「生産士制度」は、1級から4級までに講座と試験がレベル分けされており、長期的な人材育成や能力開発に活用されることもあります。
- 1級
- 設計から製造までの一貫生産管理ができる(生産担当部長・工場長クラス)
- 2級
- 調達から製造までの一貫製造管理ができる(中堅管理者・管理部門担当者)
- 3級
- 製造活動を構成する作業職場の管理ができる(現場常駐のリーダー層)
- 4級
- 作業活動の管理ができる(作業従事者、新入社員、小集団活動メンバー)
なお、2020年11月の開催をもって公開型の生産士資格認定試験は終了しました。以降は企業あるいは事業所単位でのみ試験が開催されます。
学ぶ知識・技術
生産士を取得するためには、「生産士通信講座」を修了してから、生産士認定試験を受験し合格する必要があります。企業または事業者で申し込んだ受験者数に関わらず、要望に応じて企業側の指定した者に、産業能率大学 総合研究所が試験監督を委嘱します。
試験は各級4科目の筆記試験によって審査されます。試験の解答形式は、正誤選択、多岐選択、語句解答、数値解答、記述解答です。合格基準はすべての科目で60点以上の得点を得ることです。
1級:生産士1級講座
生産士1級講座の受講期間と在籍期間は、下記の通りです。
- 受講期間
- 4か月
- 在籍期間
- 8か月
カリキュラムは下記の内容で構成されます。
- 生産活動の基礎知識
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- 生産活動の概要
- 生産管理の概要
- 生産組織の基本知識
- 意思決定分析の基礎知識
- 生産活動の計画と統制
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- 生産システムの構築
- 生産要素の調達計画
- 設計活動の計画と統制
- 製造損益計画とその統制
- 生産活動の評価の進め方
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- 生産活動の評価
- 設計活動分析の基本技法
- VE技法による課題設定
- 財務会計と製造損益管理
- 生産活動の問題解決
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- 生産活動の改善の考え方
- 技術開発の進め方
- 組織の活性化
- 収益改善の進め方
- 別冊
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- 生産活動の一般常識・日英2カ国語版
2級:生産士2級講座
生産士2級講座の受講期間と在籍期間は、下記の通りです。
- 受講期間
- 4か月
- 在籍期間
- 8か月
カリキュラムは下記の内容で構成されます。
- 製造活動の基礎知識
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- 生産活動とその管理の概要
- 管理技術の概要
- 調達と製造の管理
- ネットワーク手法の基礎
- 製造活動の計画と統制
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- 調達・製造日程の計画のしくみ
- 大・中日程計画の作成
- 製造対象、製造主体の調達計画
- 調達・製造活動の統制
- 製造活動の評価の進め方
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- 調達活動の評価
- 製造活動の評価
- 調達活動の分析
- 製造活動の分析
- 製造活動の問題解決
-
- 調達・製造活動の改善
- 受注管理の進め方
- 在庫改善の技法
- 調達・製造管理システムの確立方法
- 別冊
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- 生産活動の一般常識・日英2カ国語版
- 別冊
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- リーダー・監督者のための現場の安全衛生ハンドブック
3級:生産士3級講座
生産士3級講座の受講期間と在籍期間は、下記の通りです。
- 受講期間
- 4か月
- 在籍期間
- 8か月
カリキュラムは下記の内容で構成されます。
- 職場の基礎知識
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- 生産活動とバリュー
- 管理の基本ステップ
- 意思決定のしくみ
- 職場の人間関係の基礎知識
- 職場に関する国際管理規格の基礎知識
- 作業の計画と統制
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- 作業管理の進め方
- 作業の技術的計画
- 作業の日程計画
- 作業の指示と統制
- 検査と異常処理
- 作業の評価の進め方
-
- 作業の評価
- 原価差異分析の進め方
- 製造活動の分析手法(1)
- 製造活動の分析手法(2)
- 製造活動の分析手法(3)
- 職場の問題解決の進め方
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- 課題解決の進め方
- 製造対象に関する改善
- 製造主体の動きを改善する方法
- 作業管理の改善
- 職場のチーム活動による改善の進め方
- 別冊
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- 生産活動の一般常識・日英2カ国語版
- 別冊
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- リーダー・監督者のための現場の安全衛生ハンドブック
4級:生産士基本講座
生産士基本講座の受講期間と在籍期間は、下記の通りです。
- 受講期間
- 4か月
- 在籍期間
- 8か月
カリキュラムは下記の内容で構成されます。
- 生産活動の一般常識
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- 生産活動のしくみ
- 顧客の要求と生産活動
- 製造活動のしくみ
- 製造主体の働きと製造対象の流れの計画
- 生産の形態
- 生産主体の発展の歴史
- 正しい作業の進め方
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- 正しい作業の基本条件
- 作業の労働安全衛生と環境
- 作業の分類
- 加工・検査作業の進め方
- 運搬・倉庫作業の進め方
- 異常の発見と処理・処置の方法
- 作業評価の基礎知識
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- 作業評価の概要
- 加工・検査作業の実績記録
- 運搬・倉庫作業の実績記録
- 作業コストの計算
- 統計分析の手法
- 作業の差異分析の進め方
- 作業の問題解決の進め方
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- 作業改善の進め方
- 作業目的未達成の改善
- 作業手段のムダを減らす改善
- 作業動作の改善
- 労働災害と環境影響の改善
- 作業の分析・改善技法の歴史
- 別冊
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- 製造現場のマナーと仕事の基本
生産士で目指せる職業、就職先は?
生産士を取得すると、製造業への就職・転職で自己アピールにつながるでしょう。
生産士を取得するとどんな悩みが解決できる?
生産士を取得すると、下記の悩みや課題の解決に貢献できます。
- 生産士が解決できること
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- 生産管理の適正化を進めることができる
- 原価管理や品質管理における課題抽出と改善をサポートする
- 製造の現場のチームワークを円滑にする
生産士の資格を取れる人はどんな人?(取得条件・受験資格)
生産士認定試験は、2020年11月以降から企業または事業所単位のみでの試験開催となりました。個人での受験はできません。通信研修講座の社内スクーリングが申込可能ですが、講師派遣費用は別途料金がかかります。
試験を受験するためには、受験する区分に対応する本学の「生産士」通信研修講座を修了していることが必要です。原則として、修了後3年以内に受験してください。
取得にかかる費用
生産士認定試験の受験料は、各級ともに3,300円(税込)です。各級の受講料は下記のように定められています。
- 受講料
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- 生産士1級:24,200円(税込)
- 生産士2級:22,000円(税込)
- 生産士3級:19,800円(税込)
- 生産士基本:17,600円(税込)
生産士はどんな人におすすめの資格?
生産士は、製造業で働く人のスキルアップ・キャリアアップにおすすめの資格です。最初は4級からスタートし、徐々にステップアップしていくことで、生産管理の知識を深められるでしょう。
企業や事業者にとっても、現場教育でのOJTツールとしても活用できる資格です。企業によっては資格手当の対象となっていたり、昇進・昇給の要件としても活用されています。
- 生産士の資格取得がおすすめな人
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- ものづくりの現場の適正化に関心がある人
- 企業や事業所の生産管理部門で働く人
- 製造業でキャリアアップを目指す人
どこが管理している資格なの?(問い合わせ先・管理団体)
生産士を主催・運営しているのは、学校法人 産業能率大学 総合研究所です。試験の詳細や申込については、下記URLから確認してください。
まとめ:生産士は業務の効率化などをサポートする頼れる人
生産士はものづくりの現場の課題解決を担う人材です。個人での受験はできませんが、企業や事業所単位での受験ができますので、機会があったら資格取得を目指してくださいね。
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