鍵の付け替えや鍵の紛失時など、鍵師のお世話になったことがある人もいるかもしれません。この記事では、鍵師技能検定試験の概要や受験料、講習のカリキュラム、マスター鍵師、一級鍵師、二級鍵師の違い、就職に役立つかどうかなどについて解説します。
この記事を監修したプロ
鍵師技能検定試験とは、どんな資格?
鍵師技能検定試験とは、技術の高い錠前技術者を正式に「鍵師」として認定する民間資格です。試験では建物などのセキュリティを守ることができる、質の高い錠前技能者としてのスキルが問われます。
ビジネス教育連盟は、平成元年より鍵屋になるための教育指導を始めました。平成9年には「鍵師」ならびに「錠前師」の商標が特許庁に正式に登録され、それをきっかけとして「日本鍵師協会」が設立され、鍵師の資格制度が発足されたのが本資格の歴史です。
鍵師技能検定試験では、マスター鍵師、一級鍵師、二級鍵師の等級が設けられています。
- マスター鍵師
- 錠前の高度な全般的専門知識ならびに取り扱い技術、開錠技術等を有し、またそれらを教える技術を有し、当協会で特に優秀と認めた者。
- 一級鍵師
- 錠前の高度な専門知識ならびに一般普及錠、特殊錠等の取り付け、取り替え技術、開錠技術等を有し、かつ「一級鍵師技能検定試験」に合格し、資格申請をした者。
- 二級鍵師
- 倫理観が旺盛で、錠前の専門的基礎知識ならびに一般普及錠の取り付け、取り替え技術、一定レベル以上の開錠技術等を有し、かつ「二級鍵師技能検定試験」に合格、資格申請した者。
学ぶ知識・技術
ビジネス教育連盟が認定する鍵師になるには、鍵師養成7日間講習を受講し、試験に合格する必要があります。鍵師養成7日間講習のカリキュラムは下記のように定められています。
- 基礎
-
- 錠前・鍵の構造と技術の基本
- 錠前、鍵の構造とメカニズム
- 工具解説、開錠訓練(ロッカー錠他)
- 普及型ディスクシリンダー玄関錠の解説
- 普及型ディスクシリンダー玄関錠の開錠訓練
- 普及型ピンシリンダー玄関錠の開設と開錠訓練
- 職業倫理・業界関連法規他
- A
-
- 合鍵製作とキーマシン操作
- 一般合鍵製作(元鍵のある場合)
- ロッカー錠・金庫シリンダー錠の合鍵製作(元鍵のない場合)
- 一般玄関錠の合鍵製作(元鍵のない場合)
- B
-
- 自動車のロック機構と開錠
- 一般国産車の開錠訓練(ピッキング以外の方法)
- 一般国産車の紛失キー製作
- 補助錠の取り付け
- 玄関錠の開錠方法(ピッキング以外の方法)
- C
-
- ピンシリンダーから磁石錠までシリンダーのすべて
- 磁石錠(XEC錠)の開錠訓練
- 各種シリンダーについての解説
- シリンダー交換・脱着練習
- 難解錠玄関等の開錠と合鍵製作
- D
-
- 開錠のメカニズムとシリンダー組み替え技術
- 一般玄関錠の構造とメカニズム
- カードキー錠・指紋錠などの解説
- ディスクシリンダーの組み替え練習
- E
-
- 金庫ダイヤル錠の構造と開錠技術・防犯カメラ
- 金庫ダイヤル錠の基礎知識
- 金庫固定ダイヤル錠の開錠(破壊開錠)
- 金庫百万変換ダイヤル錠の番号変更訓練
- 防犯カメラや各種センサーなど防犯機器についての基礎知識
- F
-
- 金庫開錠、車開錠訓練と営業方法
- 金庫固定ダイヤル錠の開錠(非破壊開錠)
- 車のシリンダー開錠訓練
- 営業方法
- 二級鍵師技能検定用特別講習
鍵師技能検定試験で目指せる職業、就職先は?
鍵師技能検定試験に合格すると、鍵店への就職が見込めます。ビジネス教育連盟 日本鍵師協会では、合格者に対して大手チェーン店や鍵店との提携による就職支援をしています(就職を確約するものではありません)。
鍵師技能検定試験を取得するとどんな悩みが解決できる?
鍵師技能検定の資格を取得すると、下記の悩みや課題の解決に貢献できます。
- 鍵師技能検定試験が解決できること
-
- 自宅や勤務先などのセキュリティを向上できる
- 財産などを守ることをサポートできる
鍵師技能検定試験の資格を取れる人はどんな人?(取得条件・受験資格)
鍵師技能検定の講習の受講資格は、下記を満たす必要があります。
- 18才以上であること
- 原則的に前科が無いこと
- 日本国籍を有していること
講習の受講については、1回で資格を習得できなかった場合でも何回でも同じ講習を受けることが可能です。
取得にかかる費用
鍵師技能検定の講習の受講料は、新受講料金が138,000円(税込)です。テキスト代、協会特製ピックセット、各種練習用資材・機材料などを含んだ価格です。
講習には宿泊者補助制度が設けられています。遠隔地から講習を受講する人で、ホテルなどに宿泊した場合、一泊につき1,000円の補助金が出ます。ただし補助金は最大7泊までです。
また、2人以上同時に受講すると、2人目以降の受講料が3割引になり、2人目以降の受講料金は96,600円(税込)になります。ただし、2人目以降の受講者には宿泊補助が適用されません。
鍵師技能検定試験試験の日程
二級鍵師技能検定試験は毎年数回実施され、一級鍵師技能検定試験は3年に1回実施されます。講習のカリキュラムのうち、「A」~「E」について日程などの都合で受けられない場合、別日に実施される講習で受講可能です。同じ内容の講習が約1ヶ月ごとに実施されますので、スケジュールをしっかりと確認して予定を組み立てましょう。
鍵師技能検定試験はどんな人におすすめの資格?
鍵師は全国的に需要のある仕事であり、信頼性の高い資格保有者は重宝されるでしょう。鍵師は技術と経験があれば独立開業もできる仕事です。開業資金は比較的低コストといえます。兼業や副業として鍵師の仕事を受注するという働き方も考えられるでしょう。就職する場合は、大手チェーン店や中小規模の鍵店などへの就職・転職が見込めます。
男女比では、女性は全体の15%程度です。鍵に関する知識と技術はもちろんですが、責任感が強く、信頼される仕事ができる鍵師が求められています。
- 鍵師技能検定試験の資格取得がおすすめな人
-
- 技術を身に付けて働きたい人
- 将来的には独立開業をしたい人
- 兼業や副業でできる仕事を探している人
- 責任感が強く、誠実な人
どこが管理している資格なの?(問い合わせ先・管理団体)
鍵師技能検定試験を実施しているのは、ビジネス教育連盟 日本鍵師協会です。試験の詳細や申込については下記URLから確認してください。
まとめ:技術を習得して働きたい人は鍵師の資格取得もおすすめ
鍵師の仕事は専門的な知識と技術が必要です。依頼者の家の安全や財産を守ることにもつながりますので、責任感が強く誠実な人におすすめの仕事ですよ。
なお、錠前の修繕や交換、解錠作業を行う事業者に対する国家資格は現在ありません。
レスキュー商法と呼ばれる依頼者の緊急事態につけこんで法外な料金を請求するという手口の被害がこの業界にも発生しています。
業者選定の際に資格を所有しているかどうかも選択基準に入れることで安心できる業者に対応してもらえる可能性が上がるのではないでしょうか。
監修者プロフィール
鍵・防犯のスペシャリスト 玉置 恭一さん
プロフィールサイト:https://www.meisterstudio.jp/profiles/tamakikyoichi/
[プロフィール]
22歳から鍵職人として始動。
ジャパンロックレスキューサービス株式会社 専務取締役、株式会社ミライアン 代表取締役を経て、ジャパンベストレスキューシステム株式会社入社。
同社退社後、株式会社ミライアン再始動。 現在は凄腕鍵開け職人として、多数のテレビ番組にも出演中。
・所有資格等:総合防犯設備士
コメント