日本との関わりも深いロシアやロシア語圏は、歴史や芸術、スポーツなど魅力を多く持っていますよね。一方で、日本ではロシア語に堪能な人材は少なく、ロシア語圏と取引のある企業では、ロシア語能力の高い人材は重宝されます。
この記事では、ロシア語能力検定試験の試験概要や1級から4級までの等級、目指せる職業などを紹介します。
ロシア語能力検定試験とは、どんな資格?
ロシア語能力検定試験は、総合的なロシア語の能力を審査する試験であり、読解力はもちろん朗読問題など音の聞き取りや会話能力も重視した問題構成が特徴的です。
読み書きの問題でも、日本語からロシア語への翻訳能力を問う「和文露訳」、ロシア語から日本語への翻訳能力を問う「露文和訳」の科目があるため、理解する能力と表現する能力のどちらも兼ねそろえていなくては合格できません。
試験は1級、2級、3級、4級の4つの等級に分かれており、1級が最も難易度が高い試験です。
4級
- 習得語彙
- 約500語
- 文法
-
- 名詞、形容詞、代名詞の格変化(規則変化を中心とするが、使用頻度の高い若干の変則的な単語を含める)
- 動詞の現在、過去、未来、命令形 (規則変化を中心とするが、ходить,жить など、日常よく使われるいくつかの動詞を含む。完了体と不完了体の用法に関する問題は含まれない)
- 接続詞を使った簡単な複文
- 疑問詞を使った疑問文
- 会話力
-
- 決まった表現や文を使って挨拶や簡単な会話ができる
- ロシア語圏に旅行に行った場合、ゆっくりとしたスピードの会話であれば食事の注文や買い物、道や時間を尋ねるなど簡単なコミュニケーションができる
- 聴取力
-
- ゆっくりしたスピードであれば、簡単な文章の内容がほぼ理解できる
- 読解力
-
- 短い文章の要点を読み取ることができる
- 和文露訳
-
- 挨拶ややさしい日常的な事柄について、ロシア語で書くことができる
3級
- 習得語彙
- 約1000語
- 文法
- 4級の文法事項に加え、以下の能力を習得していること。
- 個数詞(主格)、順序数詞、比較級と最上級、移動の動詞、関係代名詞 который
- 正書法の規則に関する語形変化
- 使用頻度の高いいくつかの不規則変化動詞
- 会話力
-
- 挨拶や応対、簡単な日常会話ができる
- ロシア語圏に旅行に行った場合、現地の人と自分のことや身近なことについて話ができ、日常生活で意思の疎通ができる
- ロシア語圏に旅行に行った場合、旅行中のさまざまな場面において、簡単な表現を使って対応することができる
- 聴取力
-
- ゆっくりしたスピードなら、長めの文章の内容理解できる
- 読解力
-
- 習得語彙を主とした文章をほぼ正確に読み取ることができる
- 和文露訳
-
- 短い平易な文章(手紙、日記など)をロシア語で書くことができる
2級
- 習得語彙
- 約2000語
- 文法
- 級の文法事項に加え、下記の能力を習得していること。
- 標準的な口頭表現に用いる程度の文法事項はほぼ習得している
- 数詞(集合数詞と順序数詞を含む)の格変化、関係代名詞、関係副詞、完了体と不完了体の形の対応と使い分け(移動の動詞に接頭辞のついた一連の動詞を含む)、使用頻度の高い形動詞と副動詞
- 会話力
-
- 日常生活に必要な会話ができる(電話での短い会話、簡単な事柄の説明・通訳などができる
- ロシア語圏の旅行中にさまざまな状況で適切な対応ができ、トラブルなどに対しても随時対応ができる
- 仕事上のやり取りに関して、自分の基本的な考えや意図を伝えることができる
- 聴取力
-
- 日常生活だけでなく、社会生活に必要なロシア語や一般的な事柄について聞き取り、理解することができる
- 読解力
-
- 一般的な事柄についての新聞記事、手紙、説明書などの文章を読むことができる
- 和文露訳
-
- 常識的な事柄をロシア語で書くことができる
1級
- 習得語彙
- 約3000語
- 文法
- 2級の文法事項に加え、下記の能力を習得していること。
- 基本的には、すべてのロシア語文法事項を習得している
- 完了体と不完了体の明確な使い分け、関係代名詞の用法、形動詞と副動詞、不定代名詞・否定代名詞(副詞)、関係副詞や接続詞を用いた複文、慣用句に見られる文法事項など
- 会話力
-
- 事前の準備があれば、長文のスピーチができる
- 事前の準備があれば、さまざまなテーマで自由に会話できる
- 仕事のさまざまな場面で問題に対処することができる
- 事前の準備があれば、ネイティブスピーカーと意見の交換や討論ができる
- 聴取力
-
- ネイティブスピーカーによる一般的なテーマの話が分かり、専門的な話であっても事前の準備があれば理解できる
- 読解力
-
- 一般的な事柄についての文章を読むことができる
- 専門的な文章について、必要な内容を読み取ることができる
- 和文露訳
-
- キーポイントになる単語と表現が与えられていれば、専門分野の露訳ができる
ロシア語能力検定試験とТРКИ(テ・エル・カイ)の違い
ロシア語の能力を証明できる試験として、ロシア語能力検定試験とТРКИ(ロシア連邦教育科学省認定ロシア語検定試験)が有名です。
ТРКИはロシア連邦教育科学省が認定する試験であり、ロシア語を母国語としない世界中の学習者を対象とした問題構成となっています。
ロシアで働きたい、ロシアで学びたい人は、ТРКИの資格取得が推奨されることがあります。どちらの試験を受験すべきかは、ご自身がロシア語を学習する目的や習得したロシア語をどのように活用したいかによって異なるでしょう。
学ぶ知識・技術
ロシア語能力検定試験を取得するためには、試験に合格する必要があります。試験は筆記試験と朗読、口頭作文で構成されます。
3級と4級に関しては、聴取と口頭作文の試験はありません。
4級(250点満点)
- 文法
- 文字と発音、格変化、動詞の時制、簡単な複文など(配点100点)
- 露文和訳
- 日常的な内容の文章を日本語にする(50点)
- 和文露訳
- やさしい日常表現をロシア語にする(50点)
- 朗読
- 力点のあるロシア語の文章を会場でテープに録音(50点)
3級(300点満点)
- 文法
- 数詞(主格)、比較級・最上級、移動の動詞、関係代名詞の一部など(配点100点)
- 露文和訳
- あるテーマの平易な文章を日本語に訳す(50点)
- 和文露訳
- 日常生活で使うやや長い表現をロシア語にする(50点)
- 朗読
- 力点のないロシア語の文章を会場でテープに録音(50点)
- 聴取
- ゆっくりとしたテンポの露文の内容を理解できる(50点)
2級(300点満点)
- 文法
- 数詞の格変化、関係代名詞・副詞、体の用法など(配点100点)
- 露文和訳
- 一般向けの読み物や新聞・雑誌記事などを訳す(50点)
- 和文露訳
- さまざまな分野の事柄を平易なロシア語に訳す(50点)
- 聴取
- 日常会話レベルの話が理解できる(50点)
- 口頭作文
- 与えられた身近なテーマ(「家族」、「友人」など)で話を展開し録音する(50点)
1級(400点満点)
- 文法
- 数詞の格変化、関係代名詞・副詞、体の用法など(配点100点)
- 露文和訳
- 一般向けの読み物や新聞・雑誌記事などを訳す(50点)
- 和文露訳
- さまざまな分野の事柄を平易なロシア語に訳す(50点)
- 聴取
- 日常会話レベルの話が理解できる(50点)
- 口頭作文
- 与えられた身近なテーマ(「家族」、「友人」など)で話を展開し録音する(50点)
各科目の点がすべて6割以上に達した場合、合格となります。6割に達していない科目が一つでもあると不合格です。
合格率は各級で下記の通りです。
- 4級:70~80%
- 3級:40~50%
- 2級:25~30%
- 1級:10%前後
1級は非常に難易度が高いですが、レベルに応じて受検級を選び、レベルアップを目指すこともできます。
ロシア語能力検定試験で目指せる職業、就職先は?
ロシア語能力検定試験を取得すると、下記の職種や業界への就職に役立つでしょう。
- 貿易会社
- 商社
- 翻訳・通訳
- 観光業界
- 航空業界
ロシア語能力検定試験を取得するとどんな悩みが解決できる?
ロシア語能力検定試験を取得すると、下記の悩みや課題の解決に貢献できます。
- ロシア語能力検定試験が解決できること
-
- 単位認定の要件としている学校で、単位を取得できる
- ロシアの文化や歴史の理解をより深められる
- 日本語とロシア語を使いこなす人材となり、2つの国の橋渡しとなる
ロシア語能力検定試験の資格を取れる人はどんな人?(取得条件・受験資格)
ロシア語能力検定試験の受検資格に年齢や国籍など制限はありません。また、希望する人は併願受験が可能です。
取得にかかる費用
ロシア語能力検定試験の検定料は、等級によって下記のように定められています。
- 4級:5,000円
- 3級:6,000円
- 2級:7,000円
- 1級:7,000円
上記の検定料のほか、別途システム利用手数料(330円)の支払いが必要となります。
ロシア語能力検定試験の日程
ロシア語能力検定試験は例年、5月と10月に実施されています。5月の試験は3級と4級のみで、10月は全ての級の試験を実施されます。
ロシア語能力検定試験はどんな人におすすめの資格?
ロシア語に堪能な人材は少なく、高いロシア語能力を習得すると就職で大きな強みとなるでしょう。特にロシア語圏の国や企業とやり取りをする商社や貿易会社などへの就職を希望する場合、自己アピールにつながります。
スキルアップを積んで高いロシア語能力を習得すると、翻訳者・通訳者として活躍が期待されます。フリーランスとして独立して活動することも考えられます。
仕事のほか、ロシア語圏の文化にも魅力があります。歴史や食文化、音楽などの芸術、スポーツなどでロシア語圏に関心を持っている人は、語学力を磨くことでより深く文化を理解できるようになります。
- ロシア語能力検定試験の資格取得がおすすめな人
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- ロシア関連企業で働く人またはこれから働きたい人
- ロシア語を履修している学生
- ロシアの文化に関心を持っている人
どこが管理している資格なの?(問い合わせ先・管理団体)
ロシア語能力検定試験を実施しているのは、ロシア語能力検定試験委員会です。試験の詳細に関しては下記HPから確認してください。
まとめ:外国語の中でもロシア語習得者は貴重!特技として自己アピールにつなげよう
ロシア語の能力をスキルアップさせていくと、ロシア関連企業などへの就職で自己アピールにつながります。英語と比べるとロシア語に堪能な人は少なく、重宝される存在になれます。試験はレベルに合わせて受検級を選ぶことができますので、4級からチャレンジしていくのもおすすめですよ。
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