高齢化社会の現在、社会的ニーズが非常に高まっている職種の一つが「介護福祉士」です。今回はこの介護福祉士とはどんな資格か、執り行う仕事内容や資格の取得方法、取得によるメリットなどをお伝えしていきます。
介護福祉士とは、どんな資格?
介護福祉士とは、高齢者や身体・精神に障害のある人の身体介護と生活援助を行い、日常生活をサポートする仕事です。「社会福祉及び介護福祉士法」によって定められた国家資格でもあり、被介護者だけでなく、その家族とも接して介護についての指導・助言も行います。
介護福祉士の具体的な仕事内容は、以下の通りです。
- 身体介護
- 利用者の食事・排泄・歯磨き・衣服の着脱・入浴といった、身体の衛生管理のサポートをします。そのほかベッドから車椅子への移乗、歩行補助などを行います。
- 生活援助
- 食事(調理や配膳も含む)・洗濯・掃除、買い物などの家事全般のサポートをします。
- 相談支援
- 介護を受ける利用者だけでなく、その家族など介護者も含めて、介護に関する相談に乗り、アドバイスをします。
- 社会活動支援
- 介護を受ける利用者や家族が社会的に孤立しないよう、地域の社会活動の情報提供をしたり、利用者の生きがい作りをサポートしたりします。
学ぶ知識・技術
介護福祉士になるには、国家試験に合格する必要があります。この筆記試験では、下記の知識が問われます。
- 人間と社会
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- 人間の尊厳と自立(人間の尊厳と自立/介護における尊厳の保持・自立支援)
- 人間関係とコミュニケーション(人間関係の形成/コミュニケーションの基礎)
- 社会の理解(生活と福祉/社会保障制度/介護保険制度/障害者自立支援制度/介護実践に関連する諸制度)
- 介護
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- 介護の基本(介護福祉士を取り巻く状況/介護福祉士の役割と機能を支えるしくみ/尊厳を支える介護/自立に向けた介護/介護を必要とする人の理解/介護サービス/介護実践における連携/介護従事者の倫理/介護における安全の確保とリスクマネジメント/介護従事者の安全)
- コミュニケーション技術(介護におけるコミュニケーションの基本/介護場面における利用者・家族とのコミュニケーション/介護におけるチームのコミュニケーション)
- 生活支援技術(生活支援/自立に向けた居住環境の整備/自立に向けた身じたくの介護/自立に向けた移動の介護/自立に向けた食事の介護/自立に向けた入浴・清潔保持の介護/自立に向けた排泄の介護/自立に向けた家事の介護/自立に向けた睡眠の介護/終末期の介護)
- 介護課程(介護過程の意義/介護過程の展開/介護過程の実践的展開/介護過程とチームアプローチ)
- こころとからだのしくみ
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- 発達と老化の理解(人間の成長と発達の基礎的理解/老年期の発達と成熟/老化に伴うこころとからだの変化と日常生活/高齢者と健康)
- 認知症の理解(認知症を取り巻く状況/医学的側面から見た認知症の基礎/認知症に伴うこころとからだの変化と日常生活/連携と協働/家族への支援)
- 障害の理解(障害の基礎的理解/障害の医学的側面の基礎的知識/連携と協働/家族への支援)
- こころとからだのしくみ(こころのしくみの理解/からだのしくみの理解/身じたくに関連したこころとからだのしくみ/移動に関連したこころとからだのしくみ/食事に関連したこころとからだのしくみ/入浴、清潔保持に関連したこころとからだのしくみ/排泄に関連したこころとからだのしくみ/睡眠に関連したこころとからだのしくみ/死にゆく人のこころとからだのしくみ)
- 医療的ケア
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- 医療的ケア(医療的ケア実施の基礎/喀痰吸引/経管栄養)
- 総合問題
- 上記の4領域の知識及び技術を横断的に問う問題が、事例形式で出題される
また、一定の受験資格を満たさない者については、筆記試験に加え、実技試験も受ける必要があります。
介護福祉士で目指せる職業、就職先は?
介護福祉士はおおまかに、高齢者分野と障害者分野に分けられ、それぞれで就職先が下記のように異なります。
高齢者分野の介護福祉士として働く場合
- 居宅型サービス
- 現在の居宅に住んだまま、介護を受けられるサービスです。介護福祉士は、居宅サービスの事業所に就職し、訪問介護員(ホームヘルパー)として働くことになります。
- 施設型サービス
- 特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、介護医療院などが該当します。この施設型サービスでは、介護福祉士だけでなく、看護師や医師が常駐して利用者のリハビリや看護を行うのが一般的です。
- 地域密着型サービス
- グループホームが該当します。認知症などの介護度の重い利用者が集まる施設です。
障害者分野の介護福祉士として働く場合
身体障害者施設などの社会福祉施設で働くのが一般的です。
介護福祉士になるとどんな悩みが解決できる?
介護福祉士になると、下記のような悩み・問題点の解決に貢献できます。
- 介護福祉士が解決できること
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- 食事や排泄、入浴支援を通じて、利用者の生活の質(QOL)を向上させる
- 利用者本人や介護をする家族の悩みを聞き、適切なアドバイスをすることで、不安を軽減させる
- 医療、看護、リハビリテーション等の多くの職種との連携を通じて、利用者の心身状態に合わせた介護計画を立案し、生活の質を向上させる
- 利用者と社会の仲介役となり、社会活動への参加支援をすることで、生きる意欲を引き出す
介護福祉士の資格を取れる人はどんな人?(取得条件・受験資格)
介護福祉士の国家資格を取得するには、下記の2通りの方法があります。
- 養成施設を卒業する
- 国家試験を受験して合格する
介護福祉士の養成施設を卒業する
以下のいずれかに該当する人は、介護福祉士の資格を取得することができます。
- 2年以上の養成施設(専門学校、短期大学、大学)を卒業する
- 福祉系の大学で、指定科目を履修した者が1年間の養成施設を卒業する
- 社会福祉士養成施設等を卒業(修了)した者が1年間の養成施設を卒業する
- 保育士(保母)養成施設卒業者が1年間の養成施設を卒業する
介護福祉士国家試験の受験資格
介護福祉士の国家試験を受けるには、「3年以上の実務経験を積む」か「福祉系高校を卒業する」ことが受験資格となります。
取得にかかる費用
介護福祉士の国家試験の受験料は、18,380円です。令和3年秋以前は15,300円でしたが、受験料が変更されています。
介護福祉士はどんな人におすすめの資格?
介護福祉士は、下記のような人に取得がおすすめの国家資格です。
- 介護福祉士の資格取得がおすすめな人
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- 人と接するのが好きで、どんな人とでも笑顔で接することができるコミュニケーション能力がある人
- 利用者の悩みや問題を冷静に判断し、客観的なアドバイスができる人
- 思いやりの心がある人
- 体力に自信がある人
- 保育士の資格がある人(障害児対応の専門機関でも活躍できるようになるため)
- 理容師・美容師の資格がある人(介護現場における美容・理容のニーズが昨今高まりつつあるため)
どこが管理している資格なの?(問い合わせ先・管理団体)
介護福祉士の国家資格を管理し、国家試験を実施しているのは「公益財団法人 社会福祉振興・試験センター」です。その年の試験日程や試験会場、受験申請に必要な手続きなどについては、下記の公式HPからご確認ください。
まとめ:介護福祉士は求人数が多く、将来性も安定した国家資格
介護福祉士の仕事内容は多岐にわたるハードなものですが、社会的貢献度からやりがいを感じる場面は多く、高齢化社会の日本においては需要も安定しています。将来性を重視した国家資格を取得したい方は、ぜひチャレンジを!
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