工業系の資格である「溶接管理技術者」は、溶接工をはじめとしてさまざまな職種の人におすすめの資格です。この記事では溶接管理技術者の1級・2級・特別級の合格率、受験資格・職務経験、溶接管理技術者の研修会・参加のメリットなどを解説します。
溶接管理技術者とは、どんな資格?
溶接管理技術者とは、溶接技術に関する技術知識と施工及び管理に関する職務能力を持った技術者を認定する民間資格です。溶接管理技術者の有資格者は、工場認定あるいは官公庁における工事発注の際の必須条件として、 認証者保有または常駐を要求されています。
溶接管理技術者は職務において、JIS Z 3410(ISO 14731)の本体4.1及び4.2、並びに附属書Bに記載された事項に基づいて、製造事業者から割り当てられた任務と責任を果たさなければならないことが定められています。つまり、溶接管理技術者は専門知識とスキルを習得した技術者として、その能力で活躍することが期待されているということです。
溶接管理技術者には1級、2級、特別級があります。
- 1級
- JIS Z 3410(ISO 14731)の本体6.1及び6.2b)に記載された技術知識を習得しているレベル。かつ溶接技術に関する特定技術知識と経験、及び施工、管理などに関する専門職務能力を保有していることが求められます。選定または限定された技術分野内の溶接製作において、割り当てられた任務及び責任について計画・実行・監督及び試験するための十分な技術知識を有します
- 2級
- JIS Z 3410(ISO 14731)の本体6.1及び6.2c)に記載された技術知識を習得しているレベル。かつ溶接技術に関する基礎技術知識と経験、及び溶接施工、管理などに関する基本職務能力を保有していることが求められます。簡単な溶接構造物に関与する限定された技術分野内の溶接製作において、割り当てられた任務及び責任について計画・実行・監督及び試験するための十分な技術知識を有します
- 特別級
- JIS Z 3410(ISO 14731)の本体6.1及び6.2a)に記載された技術知識を習得しているレベル。かつ溶接技術に関する包括的技術知識と経験、及び施工、管理などに関する統括職務能力を保有していることが求められます。製造事業者から委任された溶接製作における全ての任務及び責任について計画・実行・監督及び試験するための豊富かつ十分な技術知識を有します
学ぶ知識・技術
溶接管理技術者の資格を取得するためには、筆記試験と口述試験を受験して合格する必要があります。また、溶接管理技術者の研修会も開催されています。
1級・2級
- 筆記試験
- 溶接法、溶接機器、溶接冶金、溶接材料、溶接力学、溶接設計、溶接施工及び管理、安全衛生、試験検査
- 口述試験
特別級
- 筆記試験Ⅰ
- 1級に相当する内容
- 筆記試験Ⅱ
- 材料・溶接性、設計基礎、施⼯管理(フレーム及びベッセル部⾨)、溶接法・機器
- 口述試験
溶接管理技術者研修会(講習会)と口述試験免除
一般社団法人日本溶接協会または一般財団法人 日本溶接技術センターが開催する溶接管理技術者研修会は、溶接管理技術者に求められる知識が分かりやすく整理、解説される内容で構成されており、試験対策におすすめです。
日本溶接協会より認定された常設研修会に参加し、講習会を修了した者は口述試験が免除されます。免除期間は2年間です。研修会は前期および後期の認証評価試験に対応させるかたちで、年2回開催されます。
- 1級コースの講習会日程
- 4日間
- 1級コースの講習会受講料
- 52,800円(税込)
- 1級コースのテキスト(必携)
- 『溶接・接合技術総論』9,350円(税込)
- 2級コースの講習会日程
- 3日間
- 2級コースの講習会受講料
- 41,800円(税込)
- 2級コースのテキスト(必携)
- 『【新版改訂】溶接・接合技術入門』4,125円(税込)
テキストは事前購入の必要があります。購入に当たっては受講年度の案内を必ず確認し、版や刷の指定を間違えないように注意してください。なお、講習会は受講者が5名未満の場合は開催されないことがあります。
溶接管理技術者で目指せる職業、就職先は?
溶接管理技術者の資格を取得すると、工場や鉄工所、建設業などへの就職や転職において自己アピールにつながるでしょう。
下記の業界で働く人は、溶接管理技術者の資格取得で得た知識が仕事に役立ちます。
- 建築鉄骨
- 橋梁
- 圧力容器
- 造船
- 海洋構造物
- 重機械
- 化学プラント
- 発電設備等エネルギー施設
溶接管理技術者を取得するとどんな悩みが解決できる?
溶接管理技術者の資格を取得すると、下記の悩みや課題の解決に貢献できます。
- 溶接管理技術者が解決できること
-
- 安心・安全な溶接作業を実現する
- さまざまな産業や工業において、ものづくりの現場を支える
溶接管理技術者の資格を取れる人はどんな人?(取得条件・受験資格)
溶接管理技術者の受験資格は、1級・2級・特別級それぞれにおいて要件を満たす必要があります。受験資格は学歴に応じて必要な職務経験年数が定められています。なお、該当する職務経験を有していない場合は、筆記試験合格後5年以内に下記で定められた必要職務を満たさなくてはいけません。
- 1級
-
- 理⼯系⼤学院修了者および理⼯系⼤学卒業者:職務経験2年(1年)
- 理⼯系以外の⼤学院修了者および⼤学卒業者:職務経験4年
- 理⼯系短期⼤学および⼯業⾼等専⾨学校卒業者:職務経験4年(3年)
- 理⼯系各種専⾨学校および⼯業⾼等学校卒業者:職務経験7年
- ⼯業⾼等学校以外の⾼等学校卒業者:職務経験8年
- 2級認証者:職務経験3年
- 2級
-
- 理⼯系⼤学院修了者および理⼯系⼤学卒業者:職務経験1年
- 理⼯系以外の⼤学院修了者および⼤学卒業者:職務経験2年
- 理⼯系短期⼤学および⼯業⾼等専⾨学校卒業者:職務経験1年
- 理⼯系各種専⾨学校および⼯業⾼等学校卒業者:職務経験2年
- ⼯業⾼等学校以外の⾼等学校卒業者:職務経験4年
- 上記学歴によらない場合:7年
- 特別級
-
- 理⼯系⼤学院修了者および理⼯系⼤学卒業者:職務経験3年(1年)
- 理⼯系以外の⼤学院修了者および⼤学卒業者:職務経験6年
- 理⼯系短期⼤学および⼯業⾼等専⾨学校卒業者:職務経験6年(5年)
- 1級認証者:職務経験3年
上記の職務経験年数は最⼩限の必要年数です。( )内の数字は溶接専修とみなされる学校に適⽤されます。職務経験年数とは溶接技術に関連した職務に専従した期間とし、専従でない場合は職務の実態に応じて査定されます。なお経験年数は、学歴については修了及び卒業後、認証については認証取得後の年数と定められています。
学歴に関しては、理⼯系⼤学卒業者は⼯業⾼等専⾨学校専攻科卒業者を含みます。理⼯系各種専⾨学校卒業者は、⾼等学校卒業以上の学歴を有している場合に認められます。
取得にかかる費用
溶接管理技術者の研修会受講料と試験受験料は、下記のように定められています。
- 1級
-
- 研修会受講料:52,800円(税込)
- 評価試験受験料(Ⅱのみ):13,200円(税込)
- 口述試験:22,000円(税込)
- 2級
-
- 研修会受講料:41,800円(税込)
- 評価試験受験料(Ⅱのみ):13,200円(税込)
- 口述試験:22,000円(税込)
- 特別級
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- 研修会受講料:77,000円(税込)
- 評価試験受験料(Ⅰ・Ⅱ):26,400円(税込)
- 評価試験受験料(Ⅱのみ):13,200円(税込)
- 口述試験:22,000円(税込)
申請登録料は、級数に関わらず19,800円(税込)です。
溶接管理技術者試験の日程
溶接管理技術者試験は、前期と後期の日程で実施されます。
溶接管理技術者はどんな人におすすめの資格?
溶接管理技術者は溶接工として働いている人におすすめの資格です。試験の合格率は1級が20%~30%程度、2級は55%~65%程度です。2級から1級のレベルアップで難易度がぐんと高くなります。試験対策には自主学習のほか、研修会に参加することも検討してみましょう。
資格取得には学歴に応じた職務経験年数が必要ですので、ご自身の経験が役立ちます。溶接技術は、建築鉄骨・橋梁・圧力容器・造船・海洋構造物・重機械・化学プラント・発電設備等エネルギー施設など、さまざまな産業分野で重宝されます。
溶接工としてのスキルアップを目指す人は、溶接管理技術者の資格を取得して活躍の幅を広げましょう。
- 溶接管理技術者の資格取得がおすすめな人
-
- 理⼯系⼤学院や理⼯系⼤学・短期大学を修了した人
- ⼯業⾼等専⾨学校や工業高校を卒業した人
- 工業系の資格を取得して手に職をつけたい人
どこが管理している資格なの?(問い合わせ先・管理団体)
溶接管理技術者の資格を認定しているのは、一般社団法人 日本溶接協会です。試験の詳細や申込については、下記URLから確認してください。
まとめ:溶接管理技術者の資格でスキルアップを目指そう
溶接はさまざまな産業を支える技術です。たしかな知識とスキルを習得した溶接管理技術者は、信頼できる人材として活躍することが期待されますよ。
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