海運業界で働く人や船舶を所有している人にとって、欠かせない役割を果たすのが「海事代理士」です。今回はこの海事代理士とはどんな国家資格か、具体的な仕事内容や取得に必要な知識、取得によるメリットなどを紹介していきます。
海事代理士とは、どんな資格?
海事代理士とは、船舶や船員、海技免状など海事関連の申請の手続きを代行する専門家です。海事代理士法により規定された国家資格で、「海の法律家」と呼ばれています。
船舶は、家や土地のような財産と同様に、造船したら所有者・使用者を明らかにするために「登記」をしなければなりません。また、航行のために船舶の「登録」もする必要があります。そのため、海運業者や造船業者・船主などから依頼を受け、海事代理士は以下のような業務を執り行います。
- 船舶の登記・登録・検査申請に関する書類の作成
- 上記の書類作成後の申請手続き
- 小型船舶操縦免許証の更新手続きのサポート
学ぶ知識・技術
海事代理士になるには、海事代理士試験に合格する必要があります。試験では、下記のような知識が問われます。
筆記試験
- 一般法律常識(概括的問題)
-
- 憲法
- 民法
- 商法(第3編「海商」のみ対象)
- 海事法令(専門的問題)
-
- 国土交通省設置法
- 船舶法
- 船舶安全法
- 船舶のトン数の測度に関する法律
- 船員法
- 船員職業安定法
- 船舶職員及び小型船舶操縦者法
- 海上運送法
- 港湾運送事業法
- 内航海運業法
- 港則法
- 海上交通安全法
- 造船法
- 海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律
- 国際航海船舶及び国際港湾施設の保安の確保等に関する法律、及びこれらの法律に基づく命令
口述試験
- 海事法令(船舶法/船舶安全法/船員法/船舶職員及び小型船舶操縦者法)
海事代理士で目指せる職業、就職先は?
海事代理士の資格を取得すると、主に以下のような業種での就職・転職が有利になることが期待できます。
- 海事代理士事務所
- 行政書士事務所など
海事代理士になるとどんな悩みが解決できる?
海事代理士になると、下記のような悩み・問題の解決に貢献できます。
- 海事代理士が解決できること
-
- 船の登録・申請・免許更新に必要な書類を適正かつ迅速に作成する
- 船の登録や安全性検査申請・免許証の更新手続の代行を通して、海上の安全を守る(誰が、どこで、どのような船を所有しているかを役所に把握させることで、安全性を担保する)
海事代理士の資格を取れる人はどんな人?(取得条件・受験資格)
海事代理士試験は、性別、学歴、職歴を問わずどなたでも受験可能です(未成年者や禁錮以上の刑に処せられた者など、海事代理士法第3条の欠格事由に該当する人は受験できません)。
取得にかかる費用
海事代理士試験の受験や登録にかかる費用は、それぞれ下記の通りです。
- 海事代理士試験の受験手数料
- 6,800円
- 海事代理士試験の登録免許税
- 30,000円
海事代理士はどんな人におすすめの資格?
海事代理士の国家資格は、下記のような人に取得がおすすめです。
- 海事代理士の資格取得がおすすめな人
-
- 行政書士や司法書士として働いている人(海事代理士の資格を持つことで、業務の幅を広げられる
- 海や船が好きな人(職務上、全国の港を訪れたり、船舶試運転の立ち合いをしたりすることが多いため)
- 港湾関連の企業や、法律を扱う事務所で働きたい人
どこが管理している資格なの?(問い合わせ先・管理団体)
海事代理士の国家資格を管理し、試験を実施しているのは「国土交通省」です。試験会場は日本全国の運輸局に設置されており、筆記試験は例年9月、口述試験は例年12月に実施されます。
海事代理士試験についての詳しい情報は、国土交通省のHPからご確認ください。
まとめ:海事代理士は、行政書士や司法書士の人におすすめの資格!
海事代理士の資格は、単独では生計を立てることは難しいものの、行政書士や司法書士として既に働いている人は、資格取得によってできる業務の幅を広げることができます。合格率も約50%とそこまで難しい資格ではないので、ぜひ取得のチャレンジを!
コメント