商標、著作権などの「知的財産」を巡るトラブルを未然に防ぐために、活躍するプロフェッショナルが「知的財産管理技能士」です。今回はこの知的財産管理技能士とはどんな国家資格か、具体的な役割や取得によるメリットなどを紹介していきます。
知的財産管理技能士とは、どんな資格?
知的財産管理技能士とは、主に企業内で知的財産の管理・活用を適切に行う専門家です。
知的財産とはいわゆる無形財産で、「特許権」「実用新案権」「商標権」「著作権」といった、直接的な形はないものの価値を持っているものを指します。書籍やゲーム・音楽・画像などの著作物、ブランドの名称・ロゴなどの商標、建築物や車のデザインの意匠・発明などです。
知的財産管理技能士は国家資格の一つで、知的財産の管理をする上で必要な知識が備わっているかをチェックする「知的財産管理技能検定」に合格した者のみが名乗ることができます。この検定は、以前は「知的財産検定」という民間検定でしたが、2008年から国家試験に移行しました。
ただ、知的財産管理技能検定は国家試験ではありますが、あくまで自身の業務知識を確認するための技能検定試験なので、合格者しかできない独占業務は特にありません。就職や転職を有利に進めるためというより、知的財産関連の仕事に既に就いている人がスキルアップのために受験する検定といえるでしょう。
学ぶ知識・技術
知的財産管理技能検定は1級〜3級の3段階に分けられ、1級は専門分野によって「特許専門業務」「コンテンツ専門業務」「ブランド専門業務」の3つの分野に区分されています。それぞれで問われる知識は下記の通りです。
1級知的財産管理技能検定(特許専門業務)
- 学科試験(マークシート方式)
-
- リスクマネジメント
- 契約
- エンフォースメント
- 資金調達
- 価値評価
- 関係法規
- 特許専門業務(特許戦略/法務/情報・調査/国内権利化/外国権利化/特許関係法規)
- 実技試験(筆記試験と口頭試問)
-
- 特許戦略
- 法務
- リスクマネジメント
- 情報・調査
- 国内権利化
- 外国権利化
- 契約
- エンフォースメント
- 資金調達
- 価値評価
1級知的財産管理技能検定(コンテンツ専門業務)
- 学科試験(マークシート方式)
-
- リスクマネジメント
- 契約
- エンフォースメント
- 資金調達
- 価値評価
- 関係法規
- コンテンツ専門業務(コンテンツ開発戦略/コンテンツ創造支援/コンテンツ保護/コンテンツ関係法規)
- 実技試験(筆記試験と口頭試問)
-
- コンテンツ開発戦略
- リスクマネジメント
- コンテンツ創造支援
- コンテンツ保護
- 契約
- エンフォースメント
- 資金調達
- 価値評価
1級知的財産管理技能検定(ブランド専門業務)
- 学科試験(マークシート方式)
-
- リスクマネジメント
- 契約
- エンフォースメント
- 資金調達
- 価値評価
- 関係法規
- ブランド専門業務(ブランド戦略/情報・調査/国内権利化/外国権利化/ブランド関係法規)
- 実技試験(筆記試験と口頭試問)
-
- 特許戦略
- 法務
- リスクマネジメント
- 国内権利化
- 外国権利化
- 契約
- エンフォースメント
- 資金調達
- 価値評価
2級知的財産管理技能検定
- 学科試験(マークシート方式)
-
- 戦略
- 法務
- リスクマネジメント
- 調査
- ブランド保護
- 技術保護
- コンテンツ保護
- デザイン保護
- 契約
- エンフォースメント
- 関係法規
- 実技試験(筆記試験と口頭試問)
-
- 戦略
- 法務
- リスクマネジメント
- 調査
- ブランド保護
- 技術保護
- コンテンツ保護
- デザイン保護
- 契約
- エンフォースメント
3級知的財産管理技能検定
- 学科試験(マークシート方式)
-
- ブランド保護
- 技術保護
- コンテンツ保護
- デザイン保護
- 契約
- エンフォースメント
- 関係法規
- 実技試験(筆記試験と口頭試問)
-
- ブランド保護
- 技術保護
- コンテンツ保護
- デザイン保護
- 契約
- エンフォースメント
知的財産管理技能士で目指せる職業、就職先は?
知的財産管理技能検定に合格すると、下記のような職場での就職・転職・キャリアアップが有利になることが期待できます。
- 特許事務所
- 企業内の法務部・特許部
- コンテンツ制作事業(映画制作会社、レコード会社、出版社など)
- 弁護士・弁理士事務所
知的財産管理技能士になるとどんな悩みが解決できる?
知的財産管理技能士になると、知識や技術を活かして、以下のような悩み・問題の解決に貢献できます。
- 知的財産管理技能士が解決できること
-
- 知的財産の不正流用トラブルが防げる
- 著作権関連の書類作成業務のフォロー
- 特許出願等のサポート
知的財産管理技能士の資格を取れる人はどんな人?(取得条件・受験資格)
知的財産管理技能士の国家資格を取得するには、検定に合格する必要がありますが、検定を受験するには下記の条件を満たさなくてはなりません。
知的財産管理技能検定の受験資格
1級知的財産管理技能検定
- 学科試験(下記のいずれかに該当する者)」
-
- 知的財産に関する業務について4年以上の実務経験を有する者
- 2級技能検定の合格者で、知的財産に関する業務について1年以上の実務経験を有する者
- 大学または大学院において検定職種(1級)に関する科目について10単位以上を修得し、知的財産に関する業務について1年以上の実務経験を有する者
- 3級技能検定の合格者で、知的財産に関する業務について2年以上の実務経験を有する者
- ビジネス著作権検定上級の合格者で、知的財産に関する業務について1年以上の実務経験を有する者
- 実技試験
- 1級技能検定学科試験の合格者
2級知的財産管理技能検定
- 学科・実技試験(下記のいずれかに該当する者)」
-
- 知的財産に関する業務について2年以上の実務経験を有する者
- 3級技能検定の合格者
- 大学または大学院において検定職種(1級)に関する科目について10単位以上を修得した者
- ビジネス著作権検定上級の合格者
3級知的財産管理技能検定
- 学科・実技試験
-
- 知的財産に関する業務に従事している者、または従事しようとしている者
取得にかかる費用
知的財産管理技能検定の受験にかかる費用は、級ごとで下記のように異なります。
- 1級知的財産管理技能検定
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- 学科試験:8,900円
- 実技試験:23,000円
- 2級知的財産管理技能検定
-
- 学科・実技試験:7,500円
- 3級知的財産管理技能検定
-
- 学科・実技試験:5,500円
知的財産管理技能士はどんな人におすすめの資格?
知的財産管理技能士の資格取得がおすすめなのは、下記のような人です。
- 知的財産管理技能士の資格取得がおすすめな人
-
- 知的財産関連の就職・転職を多少でも有利に進めたい人
- 知的財産関連の職場で既に働いている人で、知識を習得・強化し、組織内でのキャリア&収入アップを目指したい人
- 弁理士試験の腕試しをしたい人
どこが管理している資格なの?(問い合わせ先・管理団体)
知的財産管理技能士の資格管理ならびに、資格検定の実施を行っているのは、「一般財団法人 知的財産教育協会」です。その年の試験日程や試験会場、受験申請に必要な手続きについては、下記の公式HPからご確認ください。
まとめ:知的財産管理技能士は、知的財産を扱う職種の人におすすめの資格!
特許事務所やコンテンツ制作企業など、知的財産を扱う仕事をしている人は、キャリア&収入アップのために知的財産管理技能検定を受けるのがおすすめです。まずは3級の取得からトライしてみてはいかがでしょうか。
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