商品やサービスを売る仕事は、世の中に多くあります。デパートやスーパーなど小売業、製造業、卸売業では、接客や商品に関する知識が求められます。
今回は流通・小売分野で唯一の公的資格である販売士(リテールマーケティング)について、試験の出題範囲や学習方法、企業での活用例を解説していきます。
販売士(リテールマーケティング)とは、どんな資格?
販売士(リテールマーケティング、以下販売士)は流通・小売分野で唯一の公的資格であり、販売技術や接客技術、在庫管理、マーケティング、労務・経営管理など販売に関わる幅広い専門知識を有する人が取得できる資格です。
- 販売士(リテールマーケティング)のスキル
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- 接客に関する基礎知識
- 取扱商品に関する専門知識
- 売場や店舗を管理する能力
- 経済の動きを把握し、店舗経営をする能力
販売士の資格は一級から三級までに分かれており、習得する知識や能力は下記の通りです。
- 一級
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- 経営に関する極めて高度な知識を身につけている
- 商品計画からマーケティング、経営計画の立案や財務予測等の経営管理について適切な判断ができる
- マーケティングの責任者やコンサルタントとして戦略的に企業経営に関わる
- 二級
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- マーケティング、マーチャンダイジングをはじめとする流通・小売業における高度な専門知識を身につけている
- 販売促進の企画・実行をリードし、店舗・売場を包括的にマネジメントできる
- 幹部・管理職への昇進条件として販売士二級の資格を活用している企業もある
- 三級
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- マーケティングの基本的な考え方、流通・小売業で必要な基礎知識・技能を理解している
- 接客や売場づくりなど、販売担当として必要な知識・技術を身につける
- BtoCの観点から社員教育に取り入れている流通業、小売業、卸売業、製造業がある
学ぶ知識・技術
販売士検定について学習する方法としては級ごとに、ハンドブックによる独学、指定の通信教育講座の受講、講習会の受講の方法があります。学習後、試験を受験して合格した人が販売士となれます。
通信教育講座の指定教育機関は下記の2つです。
- 指定教育機関
販売士一級の学習方法
- 公式テキストのハンドブックによる独学
- 指定の通信教育講座の受講
試験問題の70%以上が、ハンドブックから出題されます。
販売士二級の学習方法
- 公式テキストのハンドブックによる独学
- 指定の通信教育講座の受講
- 講習会の受講
販売士三級の学習方法
- 公式テキストのハンドブックによる独学
- 指定の通信教育講座の受講
- 講習会の受講
試験の出題科目は、級ごとに以下のように設定されています。
販売士一級
- 試験科目
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- 小売業の類型
- マーチャンダイジング
- ストアオペレーション
- マーケティング
- 販売・経営管理
- 試験時間
- 90分
- 合格基準
- 各科目70点以上
販売士二級
- 試験科目
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- 小売業の類型
- マーチャンダイジング
- ストアオペレーション
- マーケティング
- 販売・経営管理
- 試験時間
- 70分
- 合格基準
- 各科目70点以上1科目ごとの得点が50点以上
販売士三級
- 試験時間
-
- 小売業の類型
- マーチャンダイジング
- ストアオペレーション
- マーケティング
- 販売・経営管理
- 試験時間
- 60分
- 合格基準
- 各科目70点以上1科目ごとの得点が50点以上
販売士(リテールマーケティング)で目指せる職業、就職先は?
販売士の資格を取得すると、下記の業種への就職や転職が見込めます。
- デパート、専門店、スーパーなど、大規模小売店
- 製造業
- サービス業
- 卸売業
- 流通・小売業
職種としては、下記のような職種への就職やキャリアアップが期待できます。
- 販売員
- 小売店の従業員
- 売場責任者
- 店長クラスの責任者
- 一般小売店の経営者
- コスト管理を求められる管理者
- 販売業務担当者
販売士(リテールマーケティング)になるとどんな悩みが解決できる?
販売士の資格を取得すると、下記の悩みや課題の解決に貢献できます。
- 販売士(リテールマーケティング)
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- 適切な接客で、顧客満足度を上げる
- クレームにつながる接客を防ぐ
- 市場にあった売り場づくりで販売を促進する
販売士(リテールマーケティング)の資格を取れる人はどんな人?(取得条件・受験資格)
販売士の試験を受験するに当たって、学歴、年齢、性別、国籍に制限はありません。また、どの級からでも受験できますので、二級や三級を取得していなくても一級を受験できます。
2021年度からはネット試験方式がとられるようになりました。試験会場(テストセンター)のパソコンを使用し、インターネット上で受験します。試験日は各テストセンターが決定します。
販売士(リテールマーケティング)試験の受験資格
販売士の試験では、 試験科目の一部免除が設けられています。
二級の試験科目一部免除の要件
- 「二級販売士養成講習会」の受講
- 日本商工会議所が各地の大学や専門学校等で実施する「二級販売士養成講習会」の所定時間の講習を受講し、予備試験に合格することが要件です。受講修了日(予備試験合格日)の翌年度末まで、「販売・経営管理」科目が免除されます。科目免除者の試験時間は、5科目受験者と同様に70分です。
- 「二級養成通信教育講座」の受講
- 日本商工会議所が指定した「二級養成通信教育講座」の全課程を修了し、スクーリングを受講・修了することが要件です。受講修了日の翌年度末まで、「販売・経営管理」科目が免除されます。科目免除者の試験時間は、5科目受験者と同様に70分です。
三級の試験科目一部免除の要件
- 「三級販売士養成講習会」の受講
- 日本商工会議所が、各地の大学や専門学校等で実施する「三級販売士養成講習会」の所定時間の講習を受講し、予備試験に合格することが要件です。受講修了日(予備試験合格日)の翌年度末まで、「販売・経営管理」科目が免除されます。科目免除者の試験時間は、5科目受験者と同様に60分です。
- 「養成通信教育講座」の受講
- 日本商工会議所が指定する「養成通信教育講座」の全課程を修了し、スクーリングを受講・修了することが要件です。受講修了日の翌年度末まで、「販売・経営管理」科目が免除されます。科目免除者の試験時間は、5科目受験者と同様に60分です。
- 全商協会主催による「商業経済検定試験」に合格した人
- 公益財団法人全国商業高等学校協会(全商協会)主催の「商業経済検定試験」の所定の科目において合格することが要件です。受験日の翌年度末まで、「マーケティング」科目免除者および「マーケティング」と「販売・経営管理」が免除されます。科目免除者の試験時間は、5科目受験者と同様に60分です。
取得にかかる費用
販売士の資格取得のためには試験を受験する必要があります。また、勉強法として公式テキストのハンドブック、通信講座、講習会があります。
級ごとの試験受験費用、学習にかかる費用は下記の通りです。
販売士一級
- 受験料
- 7,850円(税込)
- ハンドブック
- 8,250円(税込)
- 通信講座
- 受講料は、指定教育機関である一般社団法人 公開経営指導協会または学校法人 産業能率大学に問い合わせてください。
販売士二級
- 受験料
- 5,770円(税込)
- ハンドブック
- 6,710円(税込)
- 通信講座
- 受講料23,780円(税込)、スクーリング8,360円(税込)
- 講習会
- 受講合計時間は30時間。講習会の受講料は、各地商工会議所に問い合わせください。
販売士三級
- 受験料
- 4,200円(税込)
- ハンドブック
- 5,500円(税込)
- 通信講座
- 受講料22,000円(税込)、スクーリング6,270円(税込)
- 講習会
- 受講合計時間は25時間。受講料は各地商工会議所に問い合わせてください。
合格者には販売士認定証(カード)が郵送されます。紙の合格証書の発行はありません。
販売士(リテールマーケティング)はどんな人におすすめの資格?
販売士の資格を取得すると、流通・小売分野の基礎的な知識を習得していることの証明になります。接客や商品、売り場に関して一定の知識とスキルがあるとみなされますので、就職や転職の際の自己アピールに役立ちます。学生も受験できますので、希望する業種への就職のため早めに資格取得をしておくのもおすすめです。
また、株式会社千疋屋総本店やコカ・コーラカスタマーマーケティング株式会社は、人材育成として販売士の資格取得を促進しています。森永製菓株式会社では資格取得支援として、受講終了後に受講料の半額補助、合格時には受験料の全額補助をしています。このようにスキルアップやキャリアアップとしても、販売士の資格は活用されています。
- 販売士(リテールマーケティング)の資格取得がおすすめな人
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- 流通・小売分野などの業界への就職・転職を考えている人
- 接客など販売に携わるスキルアップを目指す人
- お客様が気持ちよく商品を購入できるようサポートしたい人
- 店舗経営などキャリアアップを目指す人
どこが管理している資格なの?(問い合わせ先・管理団体)
販売士の資格は、一般社団法人 日本販売士協会が管理しています。試験の窓口となっているのは、日本商工会議所です。試験のスケジュールや申込については下記のHPを確認してください。
まとめ:接客から店舗経営まで流通・小売業界などでの成長のためにおすすめ
販売士の資格は、流通・小売業、デパート、サービス業など商品の販売や流通に携わる人のスキルアップ・キャリアアップに役立つ資格です。販売員や従業員は三級取得から始め、責任者や経営者へとキャリアアップをする際は二級、一級の資格取得を目指すのもおすすめですよ。
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