空の上を飛んでいるヘリコプターや小型の飛行機などが日々安全に運行しているのは、「航空運航整備士」という整備技師のおかげです。今回はこの航空運航整備士とはどんな資格か、具体的な業務内容や取得後のメリットなどをお伝えしていきます。
航空運航整備士とは、どんな資格?
航空運航整備士とは、フライト前の駐機場などで航空機の軽微な整備を行う専門職です。国土交通省管轄の、航空従事者国家資格でもあります。
似た国家資格に「航空整備士」がありますが、航空整備士は航空機の整備業務全般を行えるのに対し、航空運航整備士は整備業務を行える範囲が限られているのが違いです。具体的には、管轄の航空機の運航に関わる保守点検や、軽微な修理を含む整備を担当します。
航空運航整備士の資格は「一等」「二等」に分けられ、それぞれで扱える航空機が下記のように異なります。
- 一等航空運航整備士
- 国内航空会社の大型飛行機や回転翼航空機を整備できる(重量制限なし)
- 二等航空運航整備士
- 滑空機、5.7t以下の飛行機、3.18t以下の回転翼航空機のみ整備できる
学ぶ知識・技術
航空運航整備士になるには、国家試験に合格する必要があります。なお、一等航空運航整備士は「飛行機」「回転翼航空機」、二等航空運航整備士は「飛行機」「回転翼航空機」「滑空機」の資格に細かく分けられ、試験科目もそれぞれ下記のように異なります。
一等航空運航整備士(飛行機)
- 学科試験(四肢・五肢択一式)
-
- 航空法規(20問/40分)
- 機体(25問/1時間)
- タービン発動機(20問/50分)
- 実地試験
-
- 整備基本技術・検査技術・整備知見
- 日常点検作業
一等航空運航整備士(回転翼航空機)
- 学科試験(四肢・五肢択一式)
-
- 航空法規(20問/40分)
- 機体(25問/1時間)
- タービン発動機(20問/50分)
- 実地試験
-
- 整備基本技術・検査技術・整備知見
- 日常点検作業
二等航空運航整備士(飛行機)
- 学科試験(四肢・五肢択一式)
-
- 航空法規(20問/40分)
- 機体(25問/1時間)
- タービン発動機(20問/50分)
- ピストン発動機(20問/50分)
- 実地試験
-
- 整備基本技術・検査技術・整備知見
- 日常点検作業
二等航空運航整備士(回転翼航空機)
- 学科試験(四肢・五肢択一式)
-
- 航空法規(20問/40分)
- タービン発動機(20問/50分)
- 実地試験
-
- 整備基本技術・検査技術・整備知見
- 日常点検作業
二等航空運航整備士(動力滑空機)
- 学科試験(四肢・五肢択一式)
-
- 航空法規(20問/40分)
- 機体(25問/1時間)
- 実地試験
-
- 整備基本技術・検査技術・整備知見
- 日常点検作業
二等航空運航整備士(上級滑空機)
- 学科試験(四肢択一式)
-
- 航空法規(20問/40分)
- 機体(25問/1時間)
- 実地試験
-
- 整備基本技術・検査技術・整備知見
- 日常点検作業
航空運航整備士で目指せる職業、就職先は?
航空運航整備士の資格取得後に目指せる主な就職・転職先は、以下の通りです。
- 大手エアライン系列の整備会社
- 官公庁や海上保安庁(自衛隊の航空整備士)
なお、二等よりも一等航空運航整備士の資格を有しているほうが、就職・転職が有利に進みやすい傾向にあります。
航空運航整備士になるとどんな悩みが解決できる?
航空運航整備士になると、下記のような悩み・問題の解決に貢献できます。
- 航空運航整備士が解決できること
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- 航空機の点検・整備を行うことで、航空事故を防ぎ、多くの乗客や操縦者の命を守る
航空運航整備士の資格を取れる人はどんな人?(取得条件・受験資格)
航空運航整備士の資格を取得するには国家試験に合格する必要がありますが、試験は下記の条件を満たす人しか受験できません。
航空運航整備士の受験資格
- 一等航空運航整備士(飛行機)
- 18歳以上であり、飛行機C類(最大離陸重量8.6t以下の飛行機)または飛行機T類(航空運送事業用の飛行機)での6ヶ月以上の経験を含む、2年以上の整備実務経験を有する者
- 一等航空運航整備士(回転翼航空機)
- 18歳以上であり、回転翼航空機TA(多発の回転翼航空機)または回転翼航空機TB(最大離陸重量9.1t以下のヘリコプター)での6ヶ月以上の経験を含む、2年以上の整備実務経験を有する者
- 二等航空運航整備士(飛行機)
- 18歳以上であり、飛行機での6ヶ月以上の経験を含む2年以上の整備実務経験を有する者
- 二等航空運航整備士(回転翼航空機)
- 18歳以上であり、回転翼航空機で6ヶ月以上の経験を含む2年以上の整備実務経験を有する者
- 二等航空運航整備士(滑空機)
- 18歳以上であり、滑空機で6ヶ月以上の経験を含む2年以上の整備実務経験を有する者
取得にかかる費用
一等・二等航空運航整備士の国家試験にかかる受験費用、ならびに登録免許税は以下の通りです。
- 一等航空運航整備士試験
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- 学科試験:5,600円
- 実地試験:37,200円
- 登録免許税:6,000円
- 二等航空運航整備士試験
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- 学科試験:5,600円
- 実地試験:34,600円
- 登録免許税:3,000円
航空運航整備士はどんな人におすすめの資格?
航空運航整備士の資格取得がおすすめなのは、下記のような人です。
- 航空運航整備士の資格取得がおすすめな人
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- 身体的にタフな人(勤務時間がシフト制+不規則であり、基本的に屋外作業のため)
- 手先が器用な人
- 責任感を持って業務に携われる人
- 上位資格である「航空整備士」を目指し、航空整備のプロとしてキャリアを重ねたい人
どこが管理している資格なの?(問い合わせ先・管理団体)
航空運航整備士の資格を管理し、国家試験を実施しているのは「国土交通省 航空局安全部 運航安全課技能審査係」です。試験の実施期間や会場、受験申請に必要な手続きなどは、下記のHPからご確認の上、国土交通省にお問い合わせください。
まとめ:航空機整備のプロフェッショナルを目指す人は、まず航空運航整備士の資格にトライを
ヘリコプターや飛行機などの航空機の整備に携わりたい人に、まず第一歩としておすすめしたいのが航空運航整備士の資格です。業務経験を積めば、上位資格の航空整備士にキャリアアップしやすくなり、年収がグッとUPすることも見込めます。
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