日本で公共サービスを提供する公務員がいるように、国際舞台にも国際公務員と呼ばれる職員がいます。
この記事では、国際公務員のひとつであるIMF(国際通貨基金)専門職員について紹介。国際貿易や為替相場などに関する業務にあたるIMF専門職員に就職するまでのステップ、必要な能力や実務経験・スキル、年収相場について解説します。
IMF(国際通貨基金)専門職員とは、どんな資格?
IMF(国際通貨基金)は国際連合の専門機関で、国際貿易の促進や為替相場の安定化を目的として設立されました。IMFは、加盟国に対して為替政策の監視(サーベイランス)や融資の実施を通じて、国際的な金融などに寄与しています。IMFの本部所在地は、アメリカ合衆国の首都ワシントンです。パリ、ジュネーブ、東京などに拠点を持ち、国連にも事務所が設置されています。
IIMFで働く専門職員は、国際公務員に分類されます。
- 国際公務員とは
- 国際公務員とは、国際機関で働く職員のことをいいます。国際機関は、「国際連合」「国連総会により設立された国連の下部機関」「専門機関」「その他の国際機関」の4種類に大きく分けられます。たとえば、UN(国連事務局)、UNICEF(国連児童基金)、WHO(世界保健機関)、OECD(経済協力開発機構)、IMFなどが国際機関に当たります。
国際公務員として働くIMFの専門職員の主な仕事は、国際的視点を持ち、経済や金融、財政の調査・分析です。国際経済に関する専門知識、職種ごとの高度な専門知識が求められます。
任務の多くはIMF加盟国への出張を伴いますので、各地の職員や関係者とのコミュニケーションのための高度な英語能力は必須です。英語以外の語学に堪能であれば、より現地の人とのコミュニケーションがスムーズになりますので歓迎されるでしょう。
学ぶ知識・技術
IMF職員の大部分を占めるのは、「エコノミスト」と呼ばれる職種です。エコノミストにはエコノミストとミッドキャリア・エコノミストがあります。
- エコノミストの条件
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- 33歳未満の者
- マクロ経済学専攻博士課程修了者または経済学関連分野の修士取得号取得者
- 専門的な議論ができ、分析レポートが書ける程度の英語堪能者
上記に加えて、マクロ経済の理論や政策、定量分析の手法、コンピュータ技能に関する深い理解、金融市場や貿易などに関する知識、国際的に活躍するためのヒューマンスキル、業務遂行能力が求められます。
- ミッドキャリア・エコノミストの条件
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- 学術研究機関、金融機関、官公庁などで、IMFで必要とされる業務に関連した実務経験を5年~15年有している者
- コンピュータ技能と定量手法に習熟している者
ミッドキャリア・エコノミストはまずは2~3年の期限付き採用となり、その後に正規職員として採用される場合もあります。
エコノミストのほか、IMF運営のために次のような専門職員も働いています。
- その他専門職
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- 会計士
- アドミニストレーター
- コンピュータ・スペシャリスト
- エディター
- ライター
- 弁護士
- 図書室司書
- 研究補佐
- 翻訳者
- 通訳者 など
いずれも専門職に関する優れた技能と知識が求められます。まずは期限付き職員として採用され、その後に正規職員として採用される場合もあります。
IMF(国際通貨基金)専門職員になるには、筆記試験や論文選考を経て、数回の面接に合格する必要があります。エコノミストになる場合は、「エコノミスト・プログラム」参加して正職員を目指す道が一般的とされています。
IMF(国際通貨基金)専門職員で目指せる職業、就職先は?
IMF(国際通貨基金)専門職員は、IMFで専門知識や経験を活かしながら、国際金融や国際貿易に携わる仕事に従事します。
国際機関である以上任務は世界中に存在していますので、出張や出向などで世界各地へ赴く可能性があります。
IMF(国際通貨基金)専門職員になるとどんな悩みが解決できる?
IMF(国際通貨基金)専門職員になると、次のような世界的な課題や悩みの解決に貢献できます。
- IMF(国際通貨基金)専門職員が解決できること
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- 国際通貨制度を安定させ、金融の混乱を未然に防ぐ
- 加盟国に対して助言を行い、経済の安定を図る
- 経済・金融危機を防ぎ、生活の向上を目指す
- 低所得国に支援を行い、貧困削減を図る
IMF(国際通貨基金)専門職員の資格を取れる人はどんな人?(取得条件・受験資格)
IMF専門職員になるには、IMFが募集する求人の人物像を満たし、専門分野の高度な専門知識あるいは実務経験を習得していること、高い語学力を有していること、国際感覚を備えていることなどが求められます。
採用プロセスでは筆記試験や論文選考、面接が実施されます。エコノミスト職については、下記のエコノミスト・プログラムへの参加を経て正職員となることが一般的です。
エコノミスト・プログラム
33歳未満の若いエコノミスト志願者は、「エコノミスト・プログラム」から仕事を始めます。このプログラムを完了した後、正規職員としての採用が検討されます。
エコノミスト・プログラムの概要は以下の通りです。
- 参加人数
- 毎年35名程度
- 平均年齢
- 29歳
- 期間とスケジュール
- 2年間。6月と10月の年2回、参加者募集を実施。
- 対象者に求められる知識や経験
- マクロ経済学に関する高等教育を受け優秀な学業成績を修めていること、定量分析の手法とコンピュータ技能に習熟している人が望ましいとされます。また、経済学博士号の保持者や同修士号を取得後に関連分野で数年の実務経験を有する人が参加することもあります。
いずれの職種においても、高い専門知識や関連分野での実務経験が求められます。難易度は高く、相応の努力と結果が求められる難関資格といえます。
そのほか、学生向けのプログラムが実施されています。
大学院生向けのIMF夏期研修プログラム
IMFでは、将来的にエコノミスト・プログラムの志願者となりうる学生を対象とした「夏期研修プログラム」を実施しています。
- 対象となる学生の条件
- 金融経済学、財政、国際貿易、金融、計量経済学などの分野を中心に、大学院で経済学に関する学業の大部分を終了していること。
- 選考について
- 学業成績のほか、関連の知識・経験などに基づいて選考
- 研修期間
- 通常5月から10月の10~13週間
- 研修の目的
- IMF加盟国の優秀な学生に興味をもってもらい、IMFの業務を肌で直接感じ取る機会の提供すること
- 研修内容
- IMFの特定の部署が関与する問題をテーマとし、研究プロジェクトを担当
- 給付金など支援
- 参加者に対して月額約3,000ドルを給付。開催地となるワシントンD.C.までの往復航空運賃と医療保険料(任意)を支給
取得にかかる費用
エコノミストなど専門職の試験は、本部があるワシントン.D.Cや東京などで行われます。開催地までの交通費や滞在費が必要となるでしょう。
IMF(国際通貨基金)専門職員はどんな人におすすめの資格?
国際公務員の年収は、一般的には基本給、地域調整給、各種手当で計算されています。職種や経験などによって金額は異なりますが、500万円~1000万円が相場とされています。
IMFは国際経済の安定や貧困軽減などの改善を目指しますが、こうした問題が発生する限りIMFは必要とされます。そのため、将来的にも重宝される人材として働くことができるでしょう。
さまざまな国や地域、文化に経済面から貢献したい人にもおすすめの職種です。英語を基本とした語学力、柔軟な国際感覚を持っている人も活躍が期待されます。
- IMF(国際通貨基金)専門職員の資格取得がおすすめな人
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- 経済学に関する高度な専門知識を有する人
- 英語での高度なコミュニケーション、論文を読み書きできる能力を持つ人
- 分析力に長け、論理的思考力が高い人
- 地球規模での経済問題や各国の貧困問題の解決に貢献したい人
- 変化の富んだ環境で、高いパフォーマンスを発揮できる人
- 向上心があり、学習意欲の高い人
どこが管理している資格なの?(問い合わせ先・管理団体)
IMF(国際通貨基金)専門職員は、国際通貨基金(IMF)が管理しています。採用に関する問い合わせ先は、国際通貨基金(IMF)アジア太平洋地域事務所(OAP)です。希望する職種の募集は、下記HPから確認してください。
まとめ:高度な専門的能力と国際感覚を活かし、経済的な貢献ができる仕事
経済の安定や貧困の改善は、国際的に見てほとんどの国が直面している問題です。国際公務員として、IMF(国際通貨基金)専門職員はそういった問題の改善を目指し、職務に当たります。国際的な仕事であるため高い語学力が求められます。高度な専門的知識や実務経験など高い能力が求められますが、その分達成感ややりがいも大きい仕事です。経済学を修了した人や経済関連で経験を積んだ人は、実力を試しつつ社会貢献することが可能でしょう。
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