生活を支える物の製造や整備には、有機溶剤という物質が使用されることがあります。有機溶剤は取り扱いを間違えると人体や命に関わる大きな事故を引き起こします。そのため、有機溶剤作業主任者を配置して安全を確保することが法律で定められています。
この記事では、有機溶剤作業主任者について資格取得に必要な講習や費用などを解説していきます。
有機溶剤作業主任者とは、どんな資格?
「有機溶剤作業主任者」とは、有機溶剤の安全な取り扱いに関する管理や監視を行う責任者です。有機溶剤とは、ほかの物質を溶かす性質を持つ有機化合物のことで、シンナーやガソリン、エタノールなどがあります。
有機溶剤は取扱いを間違えると、人体に大きな悪影響を及ぼします。中枢神経系に作用して意識消失を起こすことや、低濃度でも長時間ばく露することで皮膚・粘膜を刺激するなど、人体の組織や臓器に健康被害を与えるおそれがあります。
こうした危険を防ぐため、有機溶剤を取り扱っている事業所は、有機溶剤作業主任者の設置が労働安全衛生法で定められています。有機溶剤作業主任者は次のような仕事を行います。
- 作業に用いる有機溶剤による汚染や溶剤の吸入を防いだ作業方法を決定する
- 従事労働者の作業を指揮する
- 局所排気装置、プッシュプル型換気装置または全体換気装置の点検をする
- 保護具の使用状況を監視する
- タンクの内部における作業の有機溶剤中毒防止措置を確認する
学ぶ知識・技術
有機溶剤作業主任者として働くには、事業所に専任される必要があります。その上で「有機溶剤作業主任者技能講習」を受講して修了試験に合格すれば、資格を取得できます。
- 有機溶剤作業主任者技能講習の学科講習
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- 健康障害及びその予防措置に関する知識(4時間)
- 衛生保護具に関する知識(2時間)
- 作業環境の改善方法に関する知識(4時間)
- 関係法令(2時間)
- 修了試験(1時間)
講習は全13時間で2日間にわたって行われます。講習は学科講習のみで、実技講習はありません。
有機溶剤作業主任者で目指せる職業、就職先は?
有機溶剤作業主任者になると、有機溶剤を取り扱う職場や業界への就職が見込めます。
- 自動車整備士
- 塗装工
- 化学工場
- 合成樹脂の製造業
- 医薬品や香料の製造業
- 印刷工場
- クリーニング店
- 清掃業 など
有機溶剤作業主任者はダブルライセンスもおすすめ
上記の業界を目指す場合、有機溶剤作業主任者以外の関連資格も取得しておくと、就職活動や転職活動を有利に進められたり、資格手当を期待できたりします。
- 自動車整備士
- 塗装技能士
- 危険物取扱者
- 高圧ガス製造保安責任者
有機溶剤作業主任者になるとどんな悩みが解決できる?
有機溶剤作業主任者の資格を取得すると、次のような問題や悩みの解決に貢献できます。
- 有機溶剤作業主任者になると解決できること
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- 有機溶剤を取り扱う従業員の健康被害を未然に防ぐ
- 有機溶剤を取り扱う事業所の信頼を守る
有機溶剤作業主任者の資格を取れる人はどんな人?(取得条件・受験資格)
有機溶剤作業主任者の資格を取得するためには、まず事業所から専任され、講習を受講して修了試験に合格する必要があります。受講に関する年制制限はありません。満18歳以上であれば誰でも受講可能です。
取得にかかる費用
講習の受講費用は、10,000~14,000円前後です。この金額には、受講料のほかテキスト代も含まれます。ただし、受講料とテキスト代は開催地や開催団体によって異なりますので、ご自身が受講を希望する講習のHPを確認しましょう。
有機溶剤作業主任者はどんな人におすすめの資格?
有機溶剤作業主任者は、下記の人におすすめの資格です。
- 有機溶剤作業主任者の資格取得がおすすめな人
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- 有機溶剤を取り扱う業界への就職を目指す人
- 危険物を扱う現場で安全管理を徹底し、人命などを守りたい人
- 有機溶剤作業主任者のほかダブルライセンスで収入アップなどを目指す人
どこが管理している資格なの?(問い合わせ先・管理団体)
有機溶剤作業主任者の講習を実施・管理しているのは各地の公益社団法人 労働基準協会連合会と一般社団法人 労働技能講習協会です。
▼ 公益社団法人 労働基準協会連合会(※各地の団体のHPを確認してください)
まとめ:有機溶剤作業主任者はさまざまな業種で必要とされる資格
有機溶剤作業主任者は、自動車整備や化学工場、医療、印刷など幅広い業界で必要とされている国家資格です。人体に健康被害を及ぼす有機溶剤を安全に取り扱うために欠かせない人材ですので、資格を取得すると就職活動での自己PRにもつながるでしょう。関連資格とのダブルライセンスも検討してみてくださいね。
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